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大震災後の復興作業、そして深刻な電力不足。それに伴う企業活動の鈍化は、身近にも感じるところで、色々な催し物や会議が中止になることも珍しくないのだが、そんな状況下の年度末30日、私はニューヨークへと飛び立つ。それは、傷心のままその地をあとにした1993年以来、18年ぶりのことであった。( 関連ブログへ
ニューヨークへの出張。金融でも商社でもない電気業界に身を置く私にとって、そんな日が訪れようとは、到底考えられないことであったが、数ヶ月後に東京で開催される担当するイベントの成否に直接的に影響する案件があり、出張と相成ったわけである。とは言え、周囲の自粛ムードもあり、一旦はそれを諦めていたのだが、あとに後悔することのないよう、前に進むことを決心する。それは、出発直前のわずか6日前であった。
原発事故以来、外国人の日本からの脱出や、海外からの渡航自粛、さらには海外航空会社の便数削減など、ニュースで聞かされていたことがあり、さらに国内での自粛ムードに、震災後の交通機関への影響、等々、経済活動へのインパクトも危惧されていたところ。実際に今回、海外出張してみて、そんな現実と影響を肌身に感じることとなる。
迎えた3月30日、フライトは午前11時。通常であれば、自宅からさほど遠くない駅から、成田エクスプレスで一気に空港まで行くところ、この日は朝5時半起床、そしてJRと私鉄を乗り継ぎ、地下鉄の水天宮前まで乗り入れ、東京・箱崎のシティターミナル(通称TCAT)からバスで成田空港へと向かったのである。かつては、航空会社のカウンタもあり、そこで搭乗、出国手続きも出来たTCATだが、それも無くなって以降、TCATを利用するのは初めてのことであった。
そして、いつもより時間をかけて到着した成田空港の出国カウンタだが、そこに普段見慣れた手続きを待つ長蛇の列は無く、搭乗するANAのカウンタへあっさりと入っていくと、殆ど待たされることなく搭乗手続きは終了した。本来、他にも多くのフライトがあり、混雑している筈のターミナル内は客足もまばらで、飲食店や売店エリアも混雑とは全く無縁と言ってもいいような印象だった。
そんな状況下、一体いかほどの乗客がNYに行くものだろうかと、思ったものだが、搭乗口に辿りついて、隣のシカゴ行きの乗客と合せても、随分と少ないなと驚く。そして、実際に搭乗してみて現実を見る。エコノミー、3人掛けの通路側の席の私の隣2席には乗客はなく、周囲を見回しても、連れと隣同士に座っている乗客を除くと、3人掛けあるいは、4人掛けのシートを1人で占拠する、そんな状況が広がっていたからである。
想像するに、搭乗率は30%台底々だったのではなかろうか。ある程度、少ないだろうことは予測していたのだが、まさかこれ程まで酷い状況とは思ってもいなかった。その光景は、定期航路として、とても航空会社の採算に合わず、収益への影響が甚大であろうことは、明白であり、これでは、航空会社も、また日本の経済活動も、収縮してしまう、と思ってしまった。
さらには、乗客の中にすぐに外国人を見つけられないほどで、それは多くの外国人ビジネスマンも観光客も日本を訪れていないことを裏付けていた。またクルーまでもが、国際線でありながら、全て日本人という、通常考えられない状況だったので、また驚いた。どこかの航空会社が、韓国のインチョン空港で外国人クルーを日本人クルーに交替して、日本に入るというニュースを耳にもしていたが、それと共通する状況をそこに見たわけである。
そしてそれら光景は、4月2日のNY発の帰国便でも共通で、同じようにクルーは全て日本人、そして30%台底々の搭乗率、乗客も殆ど日本人という状況だったのである。今や、自粛ムードが経済活動を停滞させるという危惧も叫ばれているが、成田-NY間の飛行機の中に見た光景は、まさにそれが早くも現実のものになっているように思えたのである。
実際、我が社においても、震災以降、海外からの顧客や仲間を迎い入れての打合せがキャンセル、延伸となり、メドも立っていないが、こんな時期こそ、自ら海外に出て行くことで、日本の元気を発信し、ビジネスの活性化を図らねばならないだろう。今回見た光景から、そんな思いを強くした次第である。
さて、NYまでの12時間強のフライトは、13時間の時差を逆戻りする。夜のタイムゾーンを飛び続けて、再び迎えた3月30日の朝、窓のカバーを上げると、飛行機はちょうどTWIN CITY(ミネソタ・ツインズの由来もそこにあるのだが)、ミネアポリスとセントポールの上空にさしかかっていた。氷結した窓の外、眼下には、3月末というのにまだ雪に覆われた世界が広がっていた。
そして、ここからNYまでのフライトは、眼下の景色の変化が旅の友となるのだが、引き続き記していくこととする。(つづく)
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