愈々庵気まぐれ日記

愈々庵気まぐれ日記

2020.09.12
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もう20年以上前の夏休みことである。たまたま古本屋でハヤカワ・
ポケットミステリーの「オックスフォード運河の殺人」という本を手にした。
日本の新書版によく似たサイズ、厚めの紙表紙一枚でアメリカの
ペーパーバック本と同じ装丁で本の側面を黄色く着色した
ミステリーシリーズの一冊である。

オックスフォード運河を運行する夜行の貨客ボート上での殺人事件を
描いたコリン・デクスターの”The Wench is Dead” の翻訳本である。
原題にOxford運河の文字は無い、翻訳題を見なければ手にしなかった。
時々読み返して楽しむために保存していたがいつのまにかなくなっていた、
そこで今は文庫本として出版されているものを入手した(下左の写真)。
ストーリーはともかく私はこの本でイギリスの運河と言うものに
大いに気を奪われてしまった。
そんなことが発端でイギリスの運河に関する本を買って楽しんだりしている。




                                                   
オックスフォード運河は​ Lady Godivaの逸話 ​で有名なCoventry郊外から
Oxfordでテムズ川に繋がる約120キロの運河で、
46か所の閘門(水門)
を有し、ここを運航できるボートは長さ21.96m、幅2.13m、吃水(舟底と
水面間)1.23m、吃水線からの高さ1.83m以内に限られている。
いわゆるNarrow canalでこの細長いボートはNarrow boatと呼ばれる。


日本と違って平地の多いイングランドでは運河が網の目のように張り
巡らされているが、これらは産業革命によって大量の石炭を消費する
重工業が栄えたイギリスでは馬車輸送に代わって大量運送に適した運河が
整備された。その運河も鉄道の普及によって長い間埋もれた存在となって
いたが近年再整備されてレジャー目的で復活してきた。
大型船の通らない狭い水路は牧場の中を通り抜け、水道橋を渡り、水路トンネルをくぐり、長閑と言う字を絵にしたような光景が続くかと思えば、
船を横付けできるカフェ、コンビニエンスストア、ロッジ、土産物店など
日本の道の駅のような施設が所々にある。田園地帯、都市中心、工場地帯等
変化に富んでいる。いくら平らな土地とはいえ、丘や谷を通過しなければならず、特に水路の山登りのための閘門通過はうるーずの楽しみである。
運行ライセンスのいらないこのナローボートはオーナーボートあり、
レンタルボートあり、多くのボートは日常生活に必要な施設は
整えており、中にはボートを住処にしている人もいる。


話を元に戻そう、ナロ-ボートは初期は貨物輸送として使われていたが、
船の改良や水路の整備で横行速度が上がり
人の輸送にも 使われはじめた。
1842年の記録では一頭立てのボートで16㎞/時、22トンもの荷を運ぶ
ことが出来、旅客輸送でも乗合馬車に対抗できるようになった。
移動時間そのものはまだ馬車が早かったみたいであるが、より安く
静かな運河の旅はガタガタ揺れる馬車よりも快適で、特に夜行便の
快適さは馬車とは比べ物にならなかった。ただし小さな密室での
夜行便は特に女性客は相客に恵まれないととんでもないことになる。
また乗客だけでなく乗組員もいわくあり人物が多かったみたいで、
「オックスフォード運河の殺人」もこんな
中で起こった殺人事件である。

もう一つ物語上必要なのが運河に沿って必ず伸びている側道「曳舟道」で、
この側道は現代では絶好のハイキングコースともなっている。
エンジンが普及していない当時にあって運行は馬力で、Fly-boat,
swift-boat, gig-boatなどと呼ばれていた。貨客船にはExpress Boat
Serviceというのもあり、これは2頭立て、つまり2馬力の牽引力を
持つ快速艇と言うことになる。当然ながら馬は駅伝方式で変えて行く。


また船が橋やトンネルを超える場合、所によっては曳舟道がない場合があり、
その場合は人を増やして船べりに立ち片足で河壁を蹴って進んだそうだ。
多分それを生業にしている人達がいたのであろう。
話は飛ぶが以前私が中国の重慶から上海までの長江船下りをしたとき、
支流の神農渓というところで船乗りをした。そのとき
土地の部族が
難所を曳舟することを昔から生業としており、いまも観光船を引く
仕事をしていた。さしずめ日本で言えば大井川の水夫みたいなものである。


まだまだコロナ禍で家に閉じこもる日々、Google Earthのフライト
シミュレーションで世界各地の空からの景色を楽しもうと努力したが、
ジョイスティックを持たず、マウスだけで航空機を操縦するのは難しく
数知れぬ墜落事故起こしてしまった。そこで諦めてGoogle Map で
航空写真と時々Google Streetからの地上写真を交えて
「Oxford 運河の殺人」の物語の舞台を旅してみようと思った。
結果はどうなるか予想がつかないがこのブログで報告することにする。
















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Last updated  2020.09.12 17:17:28
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