on the other side of the world
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もうやだよ。もういいよ。もう止めようよ。背筋がぎんぎんに冷たい。いや、冷たい様な、ちりちりと痛い様な、まるで脊髄がドライ・アイスになった様でいても立ってもいられない。嘘だ。なぜアタクシはこんな所でこんな事をしているのだろう。こんな馬鹿な。こんな荒唐無稽な。D君と夕食を食べたのが気が遠くなるほど昔に思える。明日、全国会議の最終日、専門を絞ってのワークショップを控えているのも遠い夢想かもしれない。ただの怪談だったら幽霊や怪奇現象はせいぜい二つか三つにしておいた方が真実味があっていいだろうに。見ると E がアタクシにしがみついたまま可哀想なほど震えている。ガチガチガチ、と歯の根が合っていないみたいだ。もう止める?と訊くのは何度目か。「続けて下さい!」と声を揃えて言う。 だって、アタクシ達は明日帰っちゃうからいいけど、あなた達は...このままこのホテルで働かなくちゃならないのに、とは言葉にならなかった。「だからこそ知りたいんです! 」とそれまで一番怯えていた E が顔を上げたのが印象的だった。薄暗闇の中、まだ先に進みたくなかった。この踊り場からあの暗い廊下へ右に進むと、あのエレベーター・ホールの暗闇に謎の気配が潜んでいる。ケリーもまた溜め息をついていた。あたしもこんなの初めてでかなりびびってるんだけど、なんでこう色々判るのか自分でも不思議なんだ、と言う。 具体的にどういう風な訳?頭に浮かぶって言ってたけどイメージが見えるとか何なの?う~ん、としばらく唸ってから、言葉が頭の中に浮かぶ、自分の感情じゃないのにそれを感じる、ずっと知っていた知識を読み取るように口にしている、とさまざまならしい。 あんたさ、まさかアタクシが今何を考えてるのか判ったりする?と冗談半分に訊いてみた。は? と「??」な表情を見せた後、 真剣に聞いとんのか、おんどりゃあああっ!?? (要約)と冗談半分に叱られた。緊張していた一同全員どっと笑い、ちょっと震えが治まった。K:じゃあ私も訊いていいですか?大声で叫ぶ女性がいてそれが三階だとか、この廊下を走る女の子は栗色の巻き毛だとか、細かい事までぴったり迷わず言い当てられてびっくりしているんですけど、他にはどうです?あの自殺の男性が何階だか判ります? へ?五階って言わなかったっけ?と即答するケリーに、アタクシ達揃って首を振る。 ぶんぶんぶんぶんぶんっ。上の はアタクシだ。一人だけそれが「ぴったり正解」だと知らなかった。げぇええ、うそ。うそ。@#$%#&。 (要約) と E が上品とは言いがたい言葉を呟いた。K:じゃあ、「比較的最近」って前おっしゃってましたけど、いつ頃だったとか、状況とか、そういのはどうですか?いつの間にかまたひそひそ声になっていた。ケリーは顔をしかめてぼそぼそしゃべりだした。よく聞き取れるように皆で二三歩近づいた。「あんまり考えたくないんだけど」「一緒に気分が滅入る様な気がして。前にも言ったけどショックで打ちのめされて、喪失感が津波みたいに、いや、瓦礫が崩れるみたいに ー 」その時だ。 「ざざざざざざざざざっっ!!!!!」耳をつんざく様な大音量で、無機質な雑音が炸裂した。固まって立っているアタクシ達の調度真ん中ほど。腰の辺り。飛び退いた。鼓動が耳の奥で響く。どっくどっくんどっくん出るなら出ろ見えないモノとの間合いはどう取るんだすると続いて 「ざざざっっっ!!! どこにいるっっ!!!!???」 へ?と思う暇もなく R が腰のトランシーバーを外して口元へ運んだ。「まだコンファレンス・レベル。すげーの。」と答えながらすまなそうに手を振る。 バ、バカヤロー...R に寄ってたかってぽかぽか殴る E も K も泣きそうな声だ。ケリーは大笑いしている。アタクシはと言うと ちびっちゃったかも知れない...- - -続くあるいは、目次
2009.07.03
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