◆EREBOS◆

PR

Calendar

Comments

luciferxxx666 @ Re:意外とね(03/06) *たまき*さん あははー、今ドールと同…
*たまき* @ 意外とね HP運営って、初めは大変だけど、テンプ…
luciferxxx666 @ Re:えるちもそうかも。(11/25) エルチ555さん だねー。期待はずれじゃ申…
エルチ555 @ えるちもそうかも。 なんか、それ、わかるよ。 (誰も見てない…
luciferxxx666 @ Re:えっ★☆(11/23) エルチ555さん にし☆これは番外なので主…

Archives

2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2005/11/23
XML
カテゴリ: オリジナル小説
 全体的に黒を基調にした神殿。

 ここを訪れて畏怖や畏敬を感じる者もいれば、安らぎを感じる者もいる。
 元々訪れる者は数少ないのだが、一度来て安らぎを感じた者は頻繁に訪れたがる。
 この神殿の主、エウリアにしてみたら迷惑な話なのだが。
 今もたいして親しくない客人が来て静寂に包まれているはずの空間に鮮やかな景色を提供している。
「・・・へぇ、中々面白いよね。シヴァの好み?でもこんな陰気なとこ住んでたら気がめいりそう~。」
「でしたら来られなければ良いでしょう・・・。」
 明るい金の髪をした少年期を抜けたばかりのヴィシュヌは初めて訪れた<闇の神殿>内をくまなく探検してから能天気に感想を漏らした。

 思い切り嫌味を発したつもりのヴィシュヌは少し肩透かしな気持ちで主を見つめる。昔からまったく嫌味の通じない相手だ。
「なんで引っ越したの?今までどおりルドラ様の居城にいればよかったんじゃない?」
 嫌味や嫌がらせはまったく相手にしてくれないが質問や普通の会話にはしっかり答えてくれる。ヴィシュヌは気になっていることを聞かずにいられない性質なのではっきり聞く事にしてみる。
「・・・私は神女ですから、神殿にいるほうが普通なんです。ルドラ様の所には長くいる予定ではなかったですし。まぁ、何の役職にも就いてない私が突然この神殿を任されたのには驚きましたが・・・。」
「え、神殿?ここってシヴァに与えられた家なんじゃないの?」
「・・・・・・。」
 エウリアはあまりな発言に眉をしかめる。
 ヴィシュヌが突っかかってくる大まかな原因は知っているがまさかここまで激しい勘違いをされているとは思っていなかった。
「・・・いくらなんでも大抵の人はここまで広い建物を愛人に与えるとは思えませんが?まして、私は愛人でも恋人でもありませんから頂く理由もありません・・・。」
 いつまでも勘違いされても困るのではっきり言っては見たがおそらく無駄だろう。エウリアの気持ちは確かにシヴァに向かっているのだから。
 数年前、ルドラ神の居城で初めて出会ったときからいつも敵愾心を隠さずに接してくる相手にどう取り繕っても本心は隠しきれない。

「大神殿?」
「会議・・・またおさぼりになったのですね。」
 神々の中で幾度と話し合いがもたれていると聞く。そしてその中にはヴィシュヌやシヴァなど若い神々もいるはずだ。
 いつも自由奔放に行動するヴィシュヌは自分の興味でないことにはまったく気を留めない。
 仕方のない方、とエウリアは自分の机から一枚の書を取る。

 説明する気はなさそうなので受け取った書を胸元に入れる。
「・・・ヴィシュヌ様、私・・・大神殿に新しい神官達が揃ったら、一位神官殿と結婚することになっています。」 
「は?」
 ヴィシュヌはエウリアの口から出た言葉に目を大きく見開く。
 エウリアはいつもの冷静なままの表情で感情を読み取らせない。
「だって、神官は独身・・・?」
「もちろん名前だけの夫婦ですわ。」
「・・・シヴァがよく許したな・・・。」
 思いもよらないことに激しく動揺しているヴィシュヌの様子にエウリアはふわりと笑う。
「・・・私は名目上はヤマさまの子であなた方と肩をならべることが出来ていますが・・・所詮養い子、同格ではありません。最初から貴方が気にする相手ではなかったのですわ。」
「・・・身分など・・・。」
 ヴィシュヌは眉間に盛大な皺を寄せている。真っ直ぐな彼には身分だとかそんなものは意味は無い。激しい怒りの感情を隠すこともしない。
「シヴァはお前を愛しているはずだ・・・!!」
 認めたくはないだろうに口に出す。
「いいえ・・・、そういった感情ではないのです・・・。」
 穏かな声にわれに返り見上げるとエウリアは紫紺の瞳に深い悲しみを湛えているように見えた。
「・・・それに、私自身も誰も愛せないのです。」
「っなんだよ!!それ!!?お前たちに何かあったんだろ!?」 
 感情の起伏をださないその声にますます苛立ちを募らせる。
「んなはすせないだろ!!お前たちの間に確かに感情はあった!!」
「・・・ヴィシュヌ様・・・感情や気持ち、心の中にはいろいろな種類があるんです。」
 ますますわからないことを言われている気がして頭にエウリアの声が響いてこなくなった。
「・・・愛のない・・・しかも形だけの結婚ってなんなんだ。お前、どこまで俺を馬鹿にするっっ!?」
 ヴィシュヌは怒って飛び出していく。
 残されたエウリアはその背中を見送りながら想った。
「真っ直ぐなだけでは生きていけない・・・。でもうらやましい。」
 自嘲気味に呟くとそこはいつもの静寂な空間に戻っていた。

 神殿を飛び出し、改めてその建物を見上げる。
 たしかに住居とは見えない。だが大神殿だとかそんな大掛かりな話はまったく聞いていなかった。自分の知らない所で何かが動き始めているのかもしれない。しばらくは会議にでようと決めた。
 出会ったときから、気になった。
いつもシヴァの傍で穏かにいた少女。
 シヴァの父ルドラ神が友人であるヤマ神から預かっているんだと美しい銀の髪を持つ少女を自慢げに紹介してきたシヴァ。
 まだ数年前なのに穏かで優しい時間だったと思い出す。
 憎らしいと思うが決して嫌いじゃないライバルだと思っていた相手があっさりと戦線離脱したことに悔しく思う。
 そして、シヴァも想っていたはずなのにあんな意味の無い結婚を黙って許そうとしている。
 自分が知らない所で何かが変わっていく。
「・・・なんでだよ。」

 それからしばらくしてエウリアが始めて自分に笑顔を見せたということに気付いた。

 自分のいる環境がこの後激しく変化していくということヴィシュヌは今はまだ気付かずにいた。










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005/11/23 10:03:11 PM
コメント(2) | コメントを書く
[オリジナル小説] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: