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2002年09月14日
ダッハウと南京
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さんきゅー!でも、食べ物以外は「説教くさい」かぁ。ごめんよぉ。高みに立った言い方はしていないつもりだけれども、イマイチ、書き方のセンスが悪いのかなあ。気をつけよう。
この三連休は、このページに来て下さる人も少ないだろうから、ちょっと説教モード入るかも。ユルサレテ(って古い言い方だなあ。あと2日でふたりとも四十ン歳だね。日英でハッピー・バースデーを合唱しよう♪)。
さて、ドイツ旅行から帰って来た年上の友人から昨日聞いた話。感想を聞くと、「とてもよかったわ。教会も、お城もステキだったけれども、ほんとうに感動したのはね……」
ダッハウだそうだ。ミュンヘンから電車で30分、そこからバスで10分ぐらいで行ける。ユダヤ人強制収容所の遺構である。まず目についた有刺鉄線の生々しさにギョっとしたそうだ。建物の多くは破壊されて土台しか残っていないが、当時のままに復元したものもある。
カイコ棚のような狭いベッド、衝立がなく便器が並んだだけのトイレ、独房。ガス室や死体の焼却炉はそのまま残してある。資料館にはお仕着せの制服などの数多くの遺品や写真が展示されていた。
「小学校の歴史の授業で、ここへ来ることが義務付けられているらしいの。ミュンヘンで知り合ったドイツ人は皆、ここへ来たことがあると言っていたし、私が行った日にも大勢の子どもたちが見学に来ていたわ。中には感極まって泣き出す女の子もいた」
いいことですね。戦争について学校できちんと教えるのは。日本でも最近、修学旅行でヒロシマへ行くところが増えているみたいですね……と言ったら、
「でも、ヒロシマとダッハウでは、意味が違うでしょう。加害者としての歴史をきちんと教えることが大切だと思うわ」
そのとおり。なんとトンチンカンなことを言ってしまったかと反省した。戦争加害者としての歴史は、残念ながら日本ではきちんと教えられていない。数年前の教科書問題が思い起こされる。従軍慰安婦についての記述を載せるのは怪しからんというヒステリックな批判が出た。「自虐史観」なる造語も生まれた。南京大虐殺については、「無かった」ことにしたい人が大勢いる。
私の場合、日本の歴史で大切なことは、すべて高校を卒業してから大学の授業や、自分で読んだ本を通じて学んだように思う。従軍慰安婦については千田夏光さんの著書で、また、南京大虐殺については本多勝一さんのルポルタージュで読んで知った。私が中学・高校で学んだ教科書には、従軍慰安婦についての記述は一行たりともなかった。高校までの歴史の授業では、何ひとつ大切なことを教えてくれなかったと思った。
「ウソばっかり教えやがって!」と、腹が立った。教科書の歴史は「史実」かもしれないが、人間性の「真実」に直面していなかった。真実を問おうとする姿勢がなかった。だからウソだと思った。欺瞞だと思った。
年号や出来事を丸暗記しても、ただ、忘れるだけのこと。「イイクニツクロウカマクラバクフ」って覚えることに何の意味があるのだろうか。くだらない。貴重な人生の時間の無駄遣いだ。
歴史を学ぶ意味のひとつは、私がなぜ私なのか、私の中の社会的・民族的側面の起源を知り、その結果として私をよりよく知り得て、私が私であるという信念をより確かなものとし、自分らしく生きていけるということだと思う。
「なぜそうなったか」の視点なしに、歴史は成立し得ない。「なぜ」の答えは、百人いれば百人異なるだろう。全部が正解で、全部が不正解かもしれない。同時代の「証人」が残した資料でさえ、さまざまな思惑や「ためにする考え」が混ざっているので、額面どおり受け取るのは危険だ。それなのに、歴史教育においてたったひとつの解釈や答えを押し付けるのはおかしい。
逆説的に考えれば、たったひとつのモノサシで語られる教科書の中の歴史は反面教師であり、後で解体され再構成されることを前提とした模範的不正解であったと思う。私はどうにか解体工事を終え、再構築をしなければならない年齢になった。
『南京戦 閉ざされた記憶を尋ねて 元兵士102人の証言』(松岡環編著 社会評論社 4200円+税)という本が刊行された。大阪府の小学校教員らが元日本軍兵士からの聞き書きをまとめたものだそうだ。
いま店頭に並んでいる「週刊文春」にロシア語通訳の米原万里さんによる書評が載っている。題して「“自動忘却装置”考」。タイトルから想像がつくとおり、南京大虐殺は無かったと主張する人たちへの痛烈な批判になっている。
書評に引用された本文からの孫引きを少々。【ご注意!】ここから先はショッキングな内容なので、なるべく精神状態が平らかなときに読んでください。
「兵隊が中国兵をいっぱい連れてきてね、倉庫に詰め込んでいるんです。中国人を殺すのに『もう弾が足りない』言うてね、ぐるりに燃える物持ってきて積み上げて火をつけたんです」
「南京の手前で、母親が逃げるのにじゃまになったんか、親がどっかへ連れて行かれたんか、捨て子の赤ちゃんが田んぼの中でおぎゃーおぎゃーと泣いていました。日本兵が赤ちゃんの口の中へ小便をかけてね」
「山のように積まれた遺体がありました。その人々は中国兵かあるいは市民かさっぱりわかりませんが、裸で殺されている人、あるいは数珠つなぎの人、縄で数人ずつつなぎ合わせたものを射殺、あるいは銃剣で刺した痕が、物々しく残っておったりしました」
「強姦はし放題、分隊でクーニャンを飼ったな」
「淋病や梅毒になったら軍医さんからしかられるんや、病院に入れられてかなんから、自分で治すのには、人間の脳みそがいいんや……淋病言うたら小便したらじっとしてられへんぐらい痛いんや。それで、どこかでニイコの子ども殺すんや。支那人の頭をごんぼ剣でこじ開けて飯盒で脳みそを炊いてたのを分隊長や分隊の者は知っていたけど、知らんふりや」
「日本人の恥部をさらすな」という批判もあるが、白日の下にさらし、なぜ、そんなことが起こったのかという考察抜きには、また同じことが繰り返されるに違いない。また、日本人としての誇りを取り戻すためにも必要な作業である。無知と無恥、自己欺瞞や思考停止から誇りは生まれない。憎しみと狂気の連鎖を、私たちの時代で断ち切りたい。
もう1冊、精神科医の野田正彰先生の『戦争と罪責』(岩波書店、1998年)をおススメしたい。私がいままで読んだ本の中で、ベスト・ワンだと思った。こういう先生と同じ時代に生きられてうれしい。誇りに思う。忌まわしい加害者としての日本人の歴史を知ってショックを受け、うつろにさまよっていた私の魂が、この本のおかげで落ち着く場所を得た。
ダッハウ強制収容所の写真と紀行文が読める個人HP
http://isar-athen.de/sanpo33.html
http://www13.big.or.jp/~ikehara/Area1/Dachau.html
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最終更新日 2002年09月14日 11時10分09秒
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