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2003年07月25日
自殺者をこれ以上増やさないために
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>全体の約60%が50代以上の中高年。「経済・生活問題」による自殺は7940人と1978年に統計をとり始めて以降最多で、リストラや借金など景気低迷による影響を浮き彫りにした。
>自殺者総数は1999年の3万3048人が最も多く、その後減り続けていたが再び増加に転じた。
>まとめによると、自殺者は男性が前年比4・2%増の2万3080人で、女性は1・9%増の9063人。
>年齢別の最多は60代以上の1万1119人で全体の34・6%を占めた。次いで50代の8462人、40代の4813人の順。20代以下は前年より減った。
>原因・動機別では最多の「健康問題」が1万4815人で、前年より316人減少。「経済・生活問題」は7940人で、前年より1095人も増えた。
これだけ読むと、中高年の自殺者が増えていて、しかも「経済・生活問題」を理由に死を選ぶ人が増えているのだなと思われるだろう。若い人の自殺の問題は、この報道からは見えてこない。そこで、もうひとつのデータをご紹介したい。厚生労働省による平成14年度の人口動態調査である。この中に日本人の死亡原因を年齢別(5歳刻み)、男女別に示したデータがある↓
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai02/toukei6.html
男女の合計では、20歳から39歳までの層で、死亡原因の第1位が自殺である。ちなみに40歳から49歳では2位、50歳から54歳では3位、55歳から64歳では4位、それ以上の年齢では5位よりも下になって、順位表から消える。
高齢者(60歳~89歳)の死亡原因は、いずれも1位悪性新生物(がん)、2位心疾患、3位脳血管疾患となっている。
自殺する高齢者の数が増えているが、高齢者は自殺で亡くなる人よりも病気で亡くなる人のほうがずっと多いのだ。一方、40歳未満の若年層では、病気によって亡くなる人がそれほど多くはないので、自殺者の多さが目立つ。死の痛ましさ、命の重さに年齢や性別、個人の差はないとはいえ、若い人の自殺のほうが私には一層、痛ましく感じられる。
性別でみると、男性では25歳から44歳までの層で自殺が死亡原因の1位、女性では20歳から29歳までの層で1位となっている。
ううむ。若い人の自殺は、高齢者の自殺とはまた違った意味や重さがあると思う。いや、もっと突き詰めて考えれば、個人個人それぞれに軽々には批判できない、死を選ぶ重い理由や意味があるのだろう。
いや、待て。必ずしも「重い」とは言えないだろう。私たちはどうも死を美化する傾向があるが、自殺には「伝染病」的な側面があることが心理学や医学の専門家の間ではよく知られている。
自殺は、うつるのである。感染するのだ。
自殺者の大半がうつ病であることを考慮すれば、うつ病がうつると言ってもいいのかもしれない。
古くはタレントの岡田有希子、あるいはXJAPANのhideの後追い自殺をするファンが続出したものだった。最近では、ネット自殺の連鎖が未だに後を絶たない。
自殺は伝染病だから、ドシロウトのマスコミが扱えるようなものではなく、下手に扱えば感染を広げるばかりだと指摘する学者も多い。
「事実報道」や「市民の知る権利」をタテにして反論する人もいるが、自殺の感染経路は情報である。報道する側の意図に反し、彼らは結果として感染を加速させることになっている。
報道サラリーマンな皆さんは、単にいままでの前例に従って自殺者について報道しているに過ぎないと私は思う。自殺を報道することの意味なんてまるで考えず、思考停止しているだろう、アンタら。
個人で看板背負って書いている私には、とてもそんな恐ろしいことはできない。
アメリカでは、疾病管理予防センターによって自殺伝染防止のための報道ガイドラインが設けられているという。つまり感染防止のための報道規制が行われているわけだ。
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/541001-6.html
私たち現代人は、マスコミやインターネットを通じて、何でも知りたがる。人よりも先に、人よりも有利になる情報を入手するために。
だが、報じる側は、報じるべきことをつねに正しく報じているとは限らないのだ。
何でも報じればいいというものではない。
人間には、語りえないものがある。語りえないものについては、沈黙しなければならない(と言ったのは、ヴィトゲンシュタインだっけ?)。
私が小学校の高学年のころだっただろうか、情報の扱い方に関する教育が始まった。そのような「情報教育」は、受け手としてのハウツウに終わっていないだろうか。
情報の意味、倫理性についての教育が決定的に欠けていると思う。
多くの人は受け手としての立場に依存してしまっている。送られてくる情報を疑ったり、検証するための訓練がなされていない。
一方、送り手のほうは、正確な事実を客観的に伝えることの訓練をつんでいるとはいえ、伝えることの倫理性についてはあまり深く考えていないんじゃないだろうか。どうだろう。
※補足として
自殺に関する「報道規制」という言葉を使った私の意図は、「自殺について報道すべきではない」という意味ではなく、自殺の感染性について無知な記者が軽々に扱うべきではなく、配慮が必要だということを言いたいのだ。専門家のコメントを紹介するといった程度では足りず、専門家の監修を受けてそのように明記するなどの方法が考えられる。
厚生労働省の自殺防止対策有識者懇談会による報告書「自殺予防に向けての提言」(平成14年12月発表)の中にも、自殺の感染性とメディアの影響力について述べ、報道の仕方に配慮を求める一文が出てくる。
>一人の自殺の結果、それに影響を受けた複数の者の自殺が誘発される場合(群発自殺)があり、これは、報道の仕方によっては、さらに拡大する可能性がある。過去にも、有名人の自殺の方法や場所、後追い自殺の発生等が、詳細かつセンセーショナルに報道され、その後、自殺が急増した例が複数報告されている。特に、児童・思春期の自殺については、こうしたリスクが高いとの指摘があり、関係者には留意していただきたい。
>一方、メディアは、国民に対して大きな影響力をもつため、適切な報道によって、自殺予防に大きな力を発揮できると考えられる。自殺のサインへの気づき方、その際の対応の仕方、相談機関等自殺予防のために有用な情報を報道するよう、自殺予防を考慮した自殺報道のあり方に留意していただきたい。
http://www.jil.go.jp/kisya/syaengo/20021218_01_sye/20021218_01_sye_2_4.html#5
ちなみに「群発自殺」とは、メディアによく登場する精神科医・高橋祥友氏がわが国に紹介した概念で、次のような意味で使われている。
>自殺が単独で生じるばかりでなく、時に複数の人々による自殺が起きることがあり、この現象は群発自殺(clustered suicide)と呼ばれている。群発自殺には、連鎖自殺(狭義の群発自殺)、集団自殺、自殺名所での自殺等が含まれるが、これらが複雑に組み合わさって生じる場合もある。
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最終更新日 2003年07月25日 11時15分14秒
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