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2003年08月11日
腹は貸せない
テーマ:
代理母について(4)
カテゴリ:
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以下、毎日新聞の記事より引用します。ちなみに「借り腹」とは、不妊夫婦の精子と卵子を体外受精させ、その受精卵を第三者の女性の子宮に移植すること。英語でホストマザー。不妊夫婦が夫の精子を第三者の女性に人工授精して出産してもらう「代理母」(サロゲートマザー)とは区別されます。
この記事を読むまで、私はホストマザーとサロゲートマザーの違いについて認識していなかったけれども、これは結構重要な問題ですね。さて、続きです。
>今年1月、一般の男女(20~69歳)5840人に調査票を渡し、3647人が回答した(回答率62.4%)。
>「(自分が対象者だったら)利用したい」「配偶者が賛成すれば利用する」と答えた人は計43.3%。99年に実施した同様の調査での31.2%から急増した。「配偶者が望んでも利用しない」は56.7%だった。
>一般的に認めてよいかどうかを尋ねたところ、46%が「認めてよい」と回答。「認められない」は22%、「分からない」は32%だった。「認めてよい」割合は、提供精子による人工授精(41.3%)よりも高く、第三者がかかわる生殖補助医療の六つの技術のうち最多だった。
>認めてよい理由は「病気の人でも子どもを持てる」、認められない理由は「人を生殖の手段に使う」「親子関係が不自然」「妊娠は自然であるべきだ」が多かった。
>研究班代表の山縣然太朗・山梨大医学部教授(保健学)は「他人の精子や卵子を使うことに比べ、借り腹は夫婦の遺伝子を受け継いだ子であるという点で、抵抗感が少ないのだろう。しかし妊娠・出産は命にかかわる行為であり、それを他人に代行させることの意味を、広く知ってもらう必要がある」と指摘している。
>借り腹を含む代理出産については、厚生科学審議会の部会が4月に禁止の方向を打ち出し、今後、厚労省が立法作業に入る生殖補助医療関連法でも禁止される予定だ。
さて、「借り腹」や「代理母」について、あなたは賛成でしょうか。反対でしょうか。
私は、4割もの人が容認しているという実態にまず、驚愕を覚えました。私の考えとしては、非容認です。医療技術の発達している今日では、出産に伴う危険はごくわずかとはいえ、腹を貸す女性の生命が危険にさらされることは確かですし、借り腹にせよ、代理母にせよ、女性の子宮を一種の道具とみなす思考が背景にあります。この思考を私は生理的に受け入れることが難しい。
「不妊に悩む人の切実な気持ちを思えば、借り腹、代理母止む無し」との意見もあるかもしれません。しかし、どんなに医療技術が発展しても、その技術を使って何をやってもいいということにはならないと思います。
そんなことを考えたきっかけは、土曜日に受けてきた内田樹先生の「身体論」に関する公開セミナーでした。ざくっとまとめると、このセミナーの要旨は、「現代の人たちは誰もが脳のほうがエライと考えているけれども、決してそんなことはなく、実はカラダのほうがアタマがいいのだ。少女売春をはじめ、現代の諸問題は、身体感覚が鈍くなったことによって引き起こされている」というもの。
このような身体論の文脈で考えると、借り腹や代理母という技術は、脳がカラダを道具と見なすことで成り立っているものと言えるでしょう。カラダは脳が支配する道具じゃないゾと私は思います。
身体感覚についての内田先生の話の中でとくに印象深かったのは、明石の花火大会のときに歩道橋で起きた圧死事件に関する考え方です。
大勢の人間が狭いところへ押し込められ、押すな押すなのパニック状態に陥ったらどんなことが起こるのか、命が危険にさらされるのだということを、カラダは分かるはずです。人間のカラダには、危険を察知し、瞬時に回避すべく反射的に動く能力が本来、備わっています。そうでなければ、私たちの先祖は皆、ライオンやトラといった肉食獣に食い尽くされ、生き延びることができなかったはずです。
ところが、文明が発達し、いつの間にか人間はカラダよりも脳のほうがエライと錯覚するようになり、カラダの言うことは無視して脳の命令に従うようになってしまった。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というのは単なる脳の思い込みです。多数派と行動を共にするのが最も安全で、利益を得やすいというマジョリティ戦略ね。
明石の事件では、このマジョリティ戦略に従った人々が不幸にして惨劇に見舞われてしまったのです。
カラダの発した危険信号を受け止めることができた人は、遠回りでも歩道橋を避けて通ったか、あるいは引き返したことでしょう。
遺族は管理者の責任を追及し、失われた命の補償を得ようとしているけれども、しかし、命を失った本人は取り戻すことができないのです。
死なないために、危険から回避するために、身体感覚を鍛えましょうというメッセージを、内田先生は「愛をこめて」伝えてくれました。
借り腹、代理母の話に戻ります。多くの人は、不妊に悩む親の気持ちに立ってこの問題を考えようとするけれども、私は腹を貸すほうの立場に立ちたくなる。そうすると、嫌です。わずかといえども出産には危険が伴うし、そうやって自分の命を張って育てた新しい生命を、他人に奪われるなんて、たとえお金と引き換えにしても嫌だ。カラダがそう思うに違いない。これが私の結論ですね。
もうひとこと付け加えるとしたら、自分が嫌だと思うことは、他人に強要しない。それだけ。
つづきです。
ここまで書いたあと、本日の内田先生のページはどうなっているかな?と思って覗いてみると、この公開講座の後日談が載っていました。
内田樹先生のホームページ
偶然ですが、話題がお産の話で、三砂ちづるさんという研究者の次のような言葉が紹介されていました。以下引用。
>三砂さんによると、女の人間的成長にとって出産こそは最高の機会である。(ただし自然分娩にかぎる)
自分が種の永遠のリンクの中のかけがえのない環として、無限の時間とつながっているという「絶頂体験」を経由した人間は、コミュニケーション能力や共感能力が劇的に進化するのだそうである。その結果、自然分娩経験者はその歓喜が忘れられず、繰り返し妊娠出産することを求めるようになる。
いいなあ。そんな「絶頂体験」を私も経験したい。誰か協力してくれる男性いないかな(^^;)さらに引用。
>三砂さんの提案するのは、「とりあえず産みなさい」ということである。結婚とか仕事とか年齢とか、そんなのは女性が母になる条件としてはまるで二次的なことである。
>父親は「産んだあと」で、養育能力のある適当な男をみつくろえばよろしい。仕事だってキャリアだって、出産を経験して「劇的に進化した」女性にとっては、一人であるときよりはるかに可能性が広がる。生物学的父子関係なんかどうでもいいではないか。子どもを育てるということは男女誰にとってもきわめて幸福で教育的な経験なのであるから、「親類縁者、近所となりみんなでよってたかって育てればよろしい」というたいへんにクリアカットなお立場である。
ううむ。素晴らしい。マジメに探さなくちゃ。
三砂ちづるさんについて、新聞記事を検索してみたら、この人、凄い人ですね。こんな感動的な言葉もありました。
>あるがままを受け入れ、自分が自然の一部であって、すべてがつながっていると感じるような”原身体経験“の最後の砦がお産だ。(京都新聞2001.03.05)
う、産みたい。でも、気付くのが遅すぎたか。
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最終更新日 2003年08月12日 11時14分43秒
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