ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2003年10月16日
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 資格や職業についての情報を雑誌や単行本に書く仕事は、もう何百回と手がけてきましたが、字数の制限を気にせず自由に書けるのは実に楽しいですね。読むほうは大変でしょうが(ゴメンなさいね)。

 ライター、ジャーナリスト、カウンセラーという微妙に異なる3つの視点から眺めてみますと、それぞれの職業の社会的、心理的、倫理的、歴史的、経済的、政治的な意義や背景がさまざまに見えてきます。このマルチな感覚を文章の中に盛り込めたら、従来からある職種ガイドとは全く違ったものが出来上がるのではないかと思い、ワクワクする気持ちです。

 これからその職業に就きたいと考えている人にとってはある意味で「夢を壊す」ような話も入ってきてしまいますが、どうぞご勘弁を。いずれ現実の厳しさを知ることになるでしょうから、「こんなはずじゃなかった!」と後で後悔するよりも、リアリティ・ショックは早めに経験しておいたほうが傷が浅くて済むという「親心」からのメッセージであるとご理解ください。

 さて、第3回目は、私自身が資格を持っている産業カウンセラーについて書きましょう。私は以前、社団法人日本産業カウンセラー協会の会報の編集などの広報ウーマンの仕事を請け負っていました。いい思い出よりは悪い思い出のほうが多く、恨み骨髄に達している部分もあります。カンセラー同士が集まると、いい意味でも悪い意味でも「人間的」な生臭い面が共振・強化されてしまうようで……。なるべく私怨を出さないように、ニュートラルな立場で書くように気をつけます。

★どんな仕事?★

①仕事の範囲・特長

 産業カウンセラーとは、産業の領域を守備範囲とするカウンセラーという意味です。つまり、主な対象は企業などの産業の現場で働く本人および家族です。最もオーソドックスな産業カウンセラーの仕事のイメージとしては、企業の社員相談室に待機し、相談者がやって来れば面接を行い、電話相談の希望があればそれに応じるといったもの。最近では、メールによるカウンセリングを行う産業カウンセラーもいます。

 しかし、このような「待ちの姿勢」では、会社内にせっかくカウンセリングルームを設けても、いつも開店休業状態でしょう。そんなことでは、産業カウンセラーの存在価値がないではないかということで、「行動するカウンセラー」を目指そうという声が上がってきたのが10年ほど前のことです(私もその旗振り役の1人として活動しました)。

 産業カウンセラーの資格の創始者であり、現在も資格試験の実施および認定を行っている社団法人日本産業カウンセラーのホームページを見ると、産業カウンセラーの仕事の領域として次の3つが挙げられています。

1)メンタルヘルス対策への援助
2)キャリア開発への援助
3)職場における人間関係開発への援助

 1)については、うつ病や自殺者が急増する中、その予防策としてメンタルヘルス対策が急務となっています。ストレスとの上手な付き合い方に関してレクチャーを行う、ストレスチェックなどのツールを使って問題を抱える人の早期発見・早期治療を促すなどの活動が考えられます。

 2)については、終身雇用、年功序列賃金、企業別組合という「日本的経営の三種の神器」の機能が停止する中で、リストラや意に副わない配置転換などにより仕事のやりがい、生きがいや今後の進路を見失ってしまった人のための支援や、このような三種の神器に代わるものとして職場に入り込んできた成果主義(能力主義)、個人主導型能力開発、「自立と自己責任」の思想といった新しい制度や考え方に個人が適応できるようにするための支援などが含まれます。

 具体的には主に早期退職制度の対象となる中高年向けの再就職支援のカウンセリングや、30歳、40歳、50歳などといった節目年齢に行われるキャリア・ライフプラン研修の講師役、成果主義などを柱とする新人事制度構築の際のオブザーバー、新人事制度を定着させるためのオリエンテーションや研修の講師役といった役割が考えられます。

 3)は個々人ではなく、職場全体をターゲットにして、よりよい人間関係を開発するための活動です。たとえば、上司と部下の関係を改善するには、上司に働きかけることが先決です。部下の言い分を認めない専制君主的な上司では、部下が付いて来ないでしょう。そこで、「リスナー研修」などと言って、上司を「聞き上手」に変えていく研修が盛んに行われています。その講師役を産業カウンセラーが務めるのです。

 また、「アサーショントレーニング」といって、相手によく伝わるように自己主張するためのトレーニングも、職場の人間関係をよりよく改善する手法としてよく行われます。

 いずれにせよ、何か問題が起こる前に、あるいはこじれる前に、予防的な見地から職場の人間関係を開発すべく、さまざまな研修手法やサイコエデュケーション(心理学的な教育)を的確に選び、実際の研修として運営し、アンケート調査などによる事後の効果測定を行い、今後につなげるところまでを産業カウンセラーが担当します。

②ミッション(仕事の使命)

 産業カウンセラーの使命はかつて「職場不適応を起こしている人が適応できるように支援する」ということであると言われてきました。不適応とは無断欠勤、長期休職、遅刻、出社拒否症、ストレス性の疾病、人間関係のトラブル等々といったかたちをとって現れてきます。しかし、昨今のように働く人をめぐる環境の変化のスピードが速いと、特別な人ばかりでなく大勢の人が不適応を起こす可能性があります。

 また、適応といっても職場環境自体に問題がある場合、適応というゴールを目指すのは本人にとっても周囲の人々にとっても、必ずしも幸福な結果をもたらしません。

 アメリカではカウンセラーのことを「チェンジ・エイジェント」と呼ぶとキャリアカウンセリングの第一人者である渡辺三枝子さんが紹介しています(『会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング』金井壽宏編著、日本経済新聞社より)。

 少し引用してみましょう。

「米国では、カウンセラーのことを“チェンジ・エイジェント(change agent)”つまり変革の代理人とも呼ぶ。“変革を作り出す人”という意味で、現状維持は好きではないのである。多くの個人の福祉を害することが分かっていても、大きな力にはかなわないということで、組織に起因する問題は、それが社会問題になるまでは、見過ごされてしまいがちな状態にガマンがならない。

 カウンセラーは、個人個人では対処も改善もできないような組織内の問題を見つけることに努力し、気付いたなら組織に働きかけて、そういう状態を改善すべく、変化を起こさせる行動がとれる専門家であることが求められている。

 (中略)カウンセラーに期待される変化の代理人としての機能は、個人のためだけではなく、組織のためにもなる変化を起こすことである」(前掲書80ページ)

 私としては「チェンジ・エイジェント」の訳語を「変革の代理人」というちょっと腰の引けた言葉よりも、「変革の請負人」としたほうがいいのではないかと考えています。

 カウンセラーはいままでコンサルタント、キャリアコーチ、サイコセラピスト(臨床心理士)、果ては占い師(フォーチュン・カウンセラーと言うそうな)とまで混同されてきましたが、これらの職種との根源的な違いは、まさにこの「チェインジ・エイジェント」としての機能であると言えると思います。

 もちろん、組織に働きかける前に個人に働きかけ、その人の行動の変容を支援することによって問題が解決される場合も多々ありますが、カウンセラーの活動が個人への働きかけに終始してしまうと、極言すれば「全ては個人の気持ちの持ちようなのだ」という心理還元主義に陥る危険性があります。

 組織変革はもちろん、社会変革もカウンセラーの仕事のターゲットであるのです。

★なるには情報★

①必要な資格

 社団法人日本産業カウンセラー協会の認定する産業カウンセラーの資格は初級、中級、上級の3段階に分かれています。ここでは初級の取得方法についてガイドしましょう。

 年1回行われる初級試験の受験資格は次のとおりです。この4つのうちのどれかひとつを満たしていれば受験できます。

1) 大学において心理学又は心理学隣接諸科学を専攻し学士の学位を有する者
2) 旧大学令による大学において、心理学又は心理学隣接諸科学を専攻し学士の学位を有する者
3) カウンセリング業務又は人事労務管理に従事した期間が通算4年以上である者
4) 成年に達した者で、協会が自ら若しくは他に委託して行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座又は試験委員会がこれと同等以上の水準にあるものとして認定した類似の講座を修了した者

 受験者の多くは4)のコースをたどり、協会が行う養成講座を修了して受験します。前回(2002年実施)の初級試験の結果は次のとおりです。

学科試験 受験者数3,372人、合格者数2,552人、合格率75.5%
実技試験 受験者数3,281人、合格者数2,879人、合格率87.7%

 初級資格は、「産業カウンセラーとして必要な基礎的学識、技能及び一般的な素養」(協会試験規程より)をもつレベルであり、プロのカウンセラーとして通用するには、ワンランク上の中級資格が必要とされます。中級試験を受験するには、初級取得後に協会が行う「向上訓練」を受講し、さらに初級合格後3年以上が経過していること(その間に実務経験を積みなさいということですね)が条件になります。

②適性

「チェンジ・エイジェント」ですから、自らを変革することを恐れず、つねに自己研鑽に励める人がふさわしいでしょう。

 幅広い人生経験が生きる仕事ですから、50代を過ぎて花開くと言っても過言ではないかもしれません。実際、その年代の人がメインで活躍しています。しかし、「老害」に対する批判があることも付け加えておきましょう。

 とくにキャリア開発支援のジャンルにおいては、大手企業の人事部を定年退職した人が活躍していますが、このような経歴をもつ人は、ともすると自分の過去の経験に囚われ、成果主義(能力主義)や「自立と自己責任」の思想に自ら適応できていないケースもあり、そうなると「チェンジ・エイジェント」としての適格性が疑われます。

 たとえば、フリーターの就業支援の場面において、「いいトシしていつまでフラフラしているんだ」、「男たるもの家族を養えるようにならなければイカン!」、「私たちの時代には……したものだ」といった古めかしい根性主義だけで対応したのでは、うまくいかないことは歴然としていますね。

③勉強法・資格取得費用など

 初級産業カウンセラー試験志願者を対象とする養成講座は、協会の各支部(全国34カ所)で行われています。全160時間(約7時間)で、おもに土曜または日曜に開催されています。受講費用は全国一律18万円で、雇用保険の教育訓練給付金の支給対象講座となっています。

 学習内容は次のとおりです。

●理論
Ⅰ産業カウンセリング概論
Ⅱカウンセリングの原理および技法
Ⅲパーソナリティ理論
Ⅳ職場メンタルヘルス
Ⅴ事例検討
●カウンセリング演習(実技)
●在宅研修(作文・小論文・対話分析)

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最終更新日  2003年10月17日 16時03分15秒


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