ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2003年11月13日
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 廃業する魚屋は多い。後継者問題が理由の第一。若い人にはもはや発展性がなく、魅力の薄い仕事だからだろう。近隣に大規模店舗ができてしまい、競争に負けてしまうという時代の流れもある。

 スーパーなら品揃えが豊富、肉も野菜も日用品も一度に買い物が済む、対面販売の煩わしさがない、安売りセールなどの活気がある等々が人気の秘密だろう。

 かく言う私もデパ地下やスーパーを時々利用する。レジに並んでいるとき、さりげなく前後のカゴの中身を盗み見させていただくのも楽しみのうちだ。どうも腑に落ちないというか、これでいいのだろうかと思うことがしばしばある。年配の女性ですら、いや、年配の女性のほうにむしろ多いような気がするが、肉や野菜、魚といった素材ではなく、出来合いの惣菜や、ハム・ソーセージ、レトルト食品といった、調理の手間が全く要らないかほとんどかからない食品がカゴの大半を埋めている。

 料理マニアの私は、滅多に惣菜は買わない。出汁昆布、乾燥の豆、生湯葉、生麩、手羽先、牛テイル、豚の舌、ミミガーといった、完成品にするまで手間のかかる「スローな素材」が大好きだ。野菜なんてまさにその典型。皮むいて、モノによってはアクを抜くなどの下ごしらえをして、いろんな切り方の中から一番いいものを選んで実行し、火を通して、味加減をして……。

 家事労働の効率化が進み、女性は時間的拘束を解かれ、自由になり、社会参加が進んだと言われる。だが、「自由な時間」が増えた分だけ、本当に幸せが増えたのだろうか。

 ゆっくり時間をかけ、手間をかけ、愛情を込めて料理をつくる喜び……まあ、毎日続けばさすがにウンザリするかもしれないが、それを放棄して安易に加工食品やインスタント食品に走ることによってもたらされる弊害は大きい。

 自分で選び、自分で決定し、自分でつくり、自分で紺とロースする。このプロセスを省略することは、人生を省略し、幸福も省略することにつながるような気がしてならない。

 そんなに生き急いでどうするの?

 日本全国、住宅街の風景が変わり映えしなくなっている。どこも同じようなコンビニ、スーパーの看板が並んでいる。商品を扱っている店員は、ズブの素人だ。いつでも誰とでも交代可能な労働力。あんまり楽しそうに働いていない。

 食べ物を扱う個人商店には、緊張感とプライドと豊かな専門性があった。食中毒を起こせば廃業の危機にさらされる。多くは家族経営であるから、働くこと=生きることの切実さがにじんでいた。そして、扱う商品にかけては誰よりも詳しいというプライドがあり、上手な調理法といった付加価値情報を豊かに提供できた。

 便利な生活は、誰からも諸手を挙げて歓迎される崇高な価値のように思われてきたが、本当にそうだろうか。

 便利さの代わりに失ったものは大きかった。

 オートメーション化が極限まで進んだ結果、工場もオフィスも、多くの労働力を必要としなくなり、職を失う人が増えた。

 再就職志望の主婦は、「求人といっても、スーパーのレジ係くらいしかない」などとボヤくが、レジ係だって、POSシステムの進化によって必要最小限の人数に抑えられているのだ。つまらない単純作業に見えるかもしれないが、それは、オートメーション化によって単純作業に「進化」した姿である。

 便利さを追究した結果、誰にでもでき、すぐに交代のきく不安定な単純労働と、高度な専門性が要求される専門職、一部の選ばれたエリートにのみイスが与えられる経営職の3種類だけになってしまった。

 もちろん、起業という一番リスキーだけれども、一番自由な生き方の選択肢も残っているけれどね。

 自由というと、すぐに「自由気まま」というイメージが思い浮かぶだろうが、自由はキビシイのである。飢える自由もあれば、飽食する自由もある。思いのままに周囲の環境と自分自身をコントロールする緻密さや技術も必要なのだ。

 むしろ管理されるほうが楽チンだ。

 便利と管理は似ている。

 便利さを選ぶとき、そこには自分以外の人やモノ、情報に依存するリスクが含まれている。便利さを選ぶと、100%自分でコントロールできなくなる。

 便利さを至上の価値観とする世の中は、適応力にすぐれ、依存を依存と思わない人を多く生み出してきた。

 でも、人にはどうにも適応を拒否する生身のカラダというものがある。

 適応しようとしすぎるとストレスがたまる。ストレスがたまれば病気になる。長生きできません。幸せになれません。

 マイペースで、スローに生きていきたい。





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最終更新日  2003年11月17日 18時19分57秒


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