売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2025.07.08
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大学に入学したものの過激派学生たちがキャンパスを長期的に占拠封鎖、授業はいっさいないので大好きだった映画鑑賞に明け暮れました。学生時代最もショックを受けた映画はダルトン・トランボ監督の「ジョニーは戦場へ行った」、戦場で両腕と両脚を失った若い兵士の何とも悲しい物語でした。


​1971年「ジョニーは戦場へ行った」​

ダルトン・モランボは戦後の米国赤狩りでハリウッドから追放された脚本家、禁固刑を受けた映画関係者「ハリウッド・テン」のひとり。追放されたのでしばらく実名で脚本を書くことができず、ペンネームでいろんな映画の脚本を書いています。オードリー・ヘップバーンの「ローマの休日」、カーク・ダグラス主演「ガンヒルの決闘」、ポール・ニューマンの「栄光への脱出」なども手掛け、「黒い牡牛」では1957年度アカデミー賞原案賞に選ばれましたが授賞式には出席できませんでした。

このダルトン・モランボは世界恐慌後にアメリカ政府が指揮した「ニューディール政策」によって政府から補助をもらった脚本家のひとり。ほかにも「欲望という名の電車」「エデンの東」「波止場」などの名作を手がけたエリア・カザン監督らもニューディール政策の申し子なのです。


ニューディール政策Federal Theatre Projectイベントポスター



連邦劇場プロジェクト、連邦音楽プロジェクト、連邦アートプロジェクトなどの文化芸術振興策です。全国に劇場を建設し、音楽や映画分野の人材を育て、いろんなジャンルのアーティストを支援しました。第二次世界大戦後ハリウッドの映画やブロードウェイのミュージカル産業が繁栄した要因のひとつは、このニューディール政策で育った人材がいたからなのです。


ところが、近年の米国映画産業は金儲け主義に傾倒し過ぎたせいか20世紀後半の勢い、輝きがないように感じます。特に刺激的なオリジナル脚本は枯渇状態、結果的にかつて興行的にヒットした実績ある映画の続編や続々編ばかり、新作の多くは日本や韓国など他国で評価された映画やアニメの原作を米国バージョンに書き換え制作していると言っても過言ではありません。





​2023年「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」​

1977年「スター・ウォーズ」で一躍スターダムにのし上がったハリソン・フォードは、わが人生ベストムービー5本に入る「アメリカン・グラフィティ」出演時から大好きな男優。「インディ・ジョーンズ」シリーズは娯楽映画としてたっぷり楽しませてくれましたが、2023年「運命のダイヤル」はさすがに見てられませんでした。いくら大好きなスターでも81歳にアクション映画はちょっと無理がありましたね。



​1990年「プリティウーマン」​

もうひとり個人的には大好きな男優リチャード・ギアがジュリア・ロバーツと共演した「プリティウーマン」、どうやら35年ぶりに続編ができるらしい。第1作は当時41歳のギアが大人の金持ちビジネスマンを演じていましたが、現在75歳の彼にロマンス映画はどうなんでしょう。いかなるシナリオなのかは分かりませんが、封切りが楽しみという気分にはなれません。


​2006年「プラダを着た悪魔」​

映画コンペティションの常連メリル・ストリープが米国VOGUEアナ・ウインター編集長らしき女性を演じた「プラダを着た悪魔」も、近々約20年ぶりに続編が封切りされるそうです。ファッション業界で仕事してきた者として第1作は存分に楽しませていただきました。が、20年後の続編にはちょっと引いてしまいます。ちょうどウインター編集長の退任が発表されたばかりでニュース性はあるでしょうが、20年ぶりの続編はどうなんでしょう。

かつての日本映画低迷期、日本における邦画の興行収入は外国映画に大差をつけられていました。ところがアニメのヒット作のお陰もあって年々邦画人気が上昇、2024年には邦画興行収入は1,558億年で市場シェア約75%に対し、洋画は511億円でシェアは約25%(日本映画制作者連盟調べ)。若者の洋画離れがどんどん進み、いまでは洋画の3倍ほどの興行収入を日本映画はあげています。







私たちが内閣官房知的財産本部でソフトコンテンツビジネスをどう伸ばすか議論(のちのクールジャパン政策)していた2005年頃から、上の表のように若者の洋画離れが進みました。

日本市場で洋画と邦画の人気が逆転した背景にはもちろんアニメ人気もありますが、ハリウッドの米国映画産業界のパワー低下も大きな要因でしょう。興行的にある程度数字が読める往年のヒット作の続編制作に走り、楽をしてきたツケが回ってきたのではと思います。ニューディール政策で連邦政府が人材育成に力を入れたコンテンツビジネス、あの精神が近年のハリウッドには欠けているのでは。

映画産業においてディズニー、ユニバーサル、ワーナー・ブラザース、パラマウントなどメジャースタジオはいまも巨大コンテンツ企業に変わりありませんが、安直に続編ばかりプロデュースしているようではハリウッドに未来はないのではと思います。





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Last updated  2025.08.26 10:52:27
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