達人のひとりごと(JKLab)

達人のひとりごと(JKLab)

2012.06.23
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 回路構成について一通り説明してきたが、一つ説明し忘れたことがある。プッシュプルのバランス調整についてである。ここで言うバランス調整とは、出力管のバイアス調整のことではない。それは前に述べたように、1本1本個別に調整することができる。そうではなくて、位相反転段のバランス調整のことである。2段差動増幅を採用した本機の場合、ACバランスは特に調整の必要はないのだが、DCバランスは調整する必要がある。2段目の差動増幅段のバイアスが左右ユニットで余り大きく異なると、自動調整できなくなってしまうからだ。
 普通、差動増幅段のDCバランスは図(A)に示すようにカソードに可変抵抗を入れて調整する。しかし、この回路ではカソードに直列抵抗が入って性能が悪化してしまうし、何よりも信号が可変抵抗の接点を通ることになる。決して使いたくない回路である。そこで、考案したのが(B)の回路である。そう、信号系にはどこにも調整機構は入らない。実は図(C)に示すように、ヒーター電圧を制御することで左右ユニットの特性を合わせるのだ。これが、ヒーター制御バランス回路である。ヒーター電圧は±10%程度変化させることが可能である。この調整回路は、何しろ温度で制御するもので調整の効きがにぶいため、コーヒーでも飲みながらのんびり調整するとよい。また、全ての電圧増幅管に適用できるものでもない。ヒーターの中点が取り出されている球で、低雑音用としてカソード温度を低めに設定している球のみ、調整が可能なのだ。12AX7/12AU7/12AT7などは最もこの方式に適した球と言えるであろう。1段目のみならず、2段目の差動増幅段にも採用してみたが、なかなかスムーズに動作する。






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最終更新日  2012.06.23 21:42:42
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