Accel

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February 19, 2013
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 ほほ・・・
 まだ・・・
 まだ、かのう・・・


 ふふ
 もうじき
 もう、じき、よ・・・

 いつになれば、みつるのかのう・・・

 ふふ・・
 もう、みえておるわ・・・


 うつわが
 みたされ

 いずれ
 ちからが・・・



 ほほほ・・・


 まちどおしい・・・

 なんと、なんと

 まちどおしいことよのう・・・





 翌朝、小さな村で、数十人の人々に、少年達が送り出された。
 その村は、どう見ても、50代以上の者しかいなかった・・・

 昨日の夜泊まった老夫婦から聞いた話だが、若い者は、ことごとく、黒い衣装を着た正体不明の者供に連れ去られてしまったのだという・・・・
 やや大目の食料を分けてもらい、若々しい少年達は、村を後にした。


 一人は、茶色の服に、茶色の瞳、茶色の髪の毛・・・・
 茶色一色といいたいところであるが、その瞳ははつらつとしており、その髪の毛は風が吹くと少し日に透けて軽く光る。
 一人は、薄い黄色の柔らかな服と、その上にこれまた薄い緑の上着を羽織った、青い瞳をしている。   

 茶色の瞳の方の少年はセルヴィシュテ。
 今歩む大陸の向こう、エルダーヤから、このメンニュールまで、なにかに押されるように旅をしていた。

 そのセルヴィシュテの右脇に並んで歩く、青い瞳の少年は、ラトセィス。
 彼らは、数ヶ月に渡り、共に二人で旅をした仲でありながら、ほんの先日、初めてお互いの身分についてと、お互いの旅の目的を、明らかにしあったばかりであった・・・


 セルヴィシュテは、南に聳えるボボドの山を、目指すこととしていた。
 村の人から、栄養価の高い食料を分けて貰っている。
 主食は、これから、樹に生える実や、動物の肉を捕っていけばいいや、と、どこまでも楽観主義のセルヴィシュテである。
 このセルヴィシュテは、この天性ともいえる、あまり物事を深く悩まない性格のおかげで、いつも明るく旅を乗り切っていた。
 一方のラトセィスは、これまで、そのセルヴィシュテの性格が疎ましかった・・・
 なににも、悩まずに、生きてこれるという・・・
 そのような、事が、ラトセィスには、とても信じられなかった。


 そう・・・
 ラトセィスの生まれたこの大陸では、かなりのものが、何かに常に脅えていた。
 服従。猜疑。衰退。悲壮・・・
 彼らは、常に、恐れ、嘆き、苛まされていたのだ。

 だから、セルヴィシュテの存在は、本当に腹だたしかったのだ。
 だが。
 ラトセィスは、ゆっくりと隣のセルヴィシュテを見つめた。


 セルヴィシュテが、ラトセィスになにかの繋がりを感じているように・・・
 ラトセィスも、茶色の髪の少年に、ある種の感情を感じるようになっていた。

 不思議な感覚だった。

 もとはと言えば、このセルヴィシュテの前では、あの魔法を使うつもりもなかったのだ!
 それなのに、使ってしまったし・・・
 うまくごまかして目的地まで案内させてやろうと思っていたのに・・・
 なのに、むしろ、自分が、セルヴィに助けられていた・・・


 「セルヴィ」
 ラトスは、ちょっと照れてそう言った。
 相方を、愛称で呼ぶのは・・・・初めてだった・・・
 のに、その相方は、あまりにラトセィスが小さく言ったからか、聞こえなかったようで、足元の石を蹴りながら、歩んでいた。

「ねえ、ボボドの山にやって来ていた神様の名前って、わかる?」
 セルヴィシュテが、にっこりと聞いてくる。
 ラトセィスは、少し山を見つめて、額に指を当てた。

「沢山の神々が集っていたというので、あまりそのお一人お一人については・・・
 それに、もはや昔の話。
 もう、その話を紡ぐものも、いないのです」
 真剣な眼差しで、言葉を続けた。


「でも、おかしいですね・・・
 私の祖父母は、山に祈祷に行っていたはず・・
 とすれば、その頃はまだ、今よりは、情勢がよかった・・・のでしょうか・・・」
「ふうん・・・」
 芸のない返事で、セルヴィシュテは答えた。

「なあ、ラトス」
 セルヴィシュテは、足元の石を蹴りながら言った。
「はい?」
 ラトセィスが、少し声高に答える。

「あの、黒い髪の女の子・・・
 あの人、神様だと、思う?」

「・・・」
 ラトセィスは・・・
 また、顎に指を当てて、目を左右に動かした。

「神様・・・」
 ラトセィスは、自身に言うように、つぶやいた。
「神・・・ですか・・・」
 ラトセィスは、再び呟く。

 そして、その瞳を・・・
 茶色の瞳の少年に、かちり、と合わせた。
「セルヴィ」

 今度は、はっきりと、そう言った。
 呼ばれたセルヴィシュテは、一瞬だけ、息を呑んだ。

「セルヴィ。
 私の契約した、ガルトニルマ。
 そのものも、神なのです。
 炎の神、ガルトニルマ・・・」

 ラトセィスは、瞳を山に向けた。


「神、とは、なにを指しますか?セルヴィ・・・。
 私も、わかりませんでした。
 ガルトニルマは、炎を掌る神。
 汚れたるもの、醜きもの、それらを浄化する神だと、思っていました」

 ラトセィスは、セルヴィシュテよりも、一歩前に出た。

「私達、人間にとっての、利益。
 それは、なんですか?セルヴィ・・・」
 ラトセィスは、ざわりとたなびく風に向かって言った。
「それは、例えば、炎であれば、我らを暖め、光を与えるもの・・・」

 セルヴィシュテは、ただ、呆然と・・・
 立ち尽くして、相方の背を見つめた。


 ラトセィスは、ゆっくり歩き始めた。
「そのように、解釈する、それが、我ら、人間の都合であって・・・
 神も、人間の都合によって、彩られているのだな、と、私は・・・・
 契約して初めて・・・わかったのです・・・」
 歩き続けるラトセィスの肩に・・・
 セルヴィシュテが、手を置いた。

「昨日も、言っただろ」
 セルヴィシュテは、きっぱりと言った。
「信じるのは、俺らなんだ」

 ラトセィスは・・・・
 立ち止まって・・・
 南の、山を、ただ、みつめた。

 その、山が、かすんで見えた・・・
 なんだか、自分の意思に反して肩が震えて・・・
 そして、鼻の奥が熱くなるのを、必死に抑えた・・・・

「そうですね」

 ラトセィスは、目じりに滲んだ涙を、拭わないように、必死になりながら、またゆっくり歩んだ。




 少年達が歩むにつれて、甘い香りが強くなり・・・
 向こうに、木々が生えているのが見えた。
「ねえ、この匂い!
 もしかして、プーフっていう樹じゃない?」
 セルヴィシュテは、少し走り出して樹の方へと行く・・・

 茶色の少年が想像したとおり、それは、果樹であった。
 果樹があるなら、集落があるはずだった。

「炎の神、かあ・・・」
 セルヴィシュテは、のろのろとこちらにやって来るラトセィスに聞こえないように、ぼそりと言った・・・

 この、大陸を、脅かすなにかの力。
 それが、ラトセィスの契約した炎の神の力なのだろうか・・・
 そして、あの、黒髪の少女は、なんだろう?
 もし、あの少女が神様だとすれば、なにの神だろう・・・

 ぼんやりと、山々をみていると、その山頂から、少し、蒸気が吹き上がっていた。
「・・・」
 その、蒸気を目で追っていく・・・・

 山の裾に・・・
 セルヴィシュテは、見つけた。

 大きな町のようだ!
 それを、ぐるりと囲む形の、壁がある!

 今まで旅をしてきて、あれほど大きな町を見かけたことはない。
 セルヴィシュテは、急に、目をハツラツとさせた!
 大きな町、ということは、沢山人がいて・・・
 そして、沢山情報が集まる!


「ラトス!
 あの街に行くぞ!」
 セルヴィシュテは、落ちていた瑞々しい果物を拾って相方に放り投げ、自分も落ちている果物を拾って口に入れた!
「セ・・・」
 ラトセィスが、口を曲げて、それを見守った!
 もはや、ラトセィスが止める暇がなかったのだ!

「・・・・」
 セルヴィシュテは、最初。
 ぽかーーんとしていたが・・・・

「・・・」
 茶色の髪の少年は、思いっきり苦虫を潰したような顔になった。

「・・・セルヴィは、本当に、子供ですねえ・・・」
 ラトセィスが、腹を抱えて笑った!

「私は、おいしい果物だとは、一言も言ってませんよ!!!」


   早く、食べられない、と、言えっ!馬鹿ラトスっ!

 セルヴィシュテは、うらめしそうに、相方をじろりと見たのだった。



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Last updated  February 19, 2013 12:52:19 PM
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月夜見猫 @ 愛するケーナさまあはあと! おはようございます☆ >いつも本当にあり…
月夜見猫 @ オスン6757さん おはようございます。 >いつもありがと…
月夜見猫 @ もぷしーさん★ おはようございます。 >今まだうろうろと…
風とケーナ @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) 月夜見猫さま、こんばんは♪ いつも本当に…
オスン6757 @ Re:「フィギアスケート選手を応援しよう!」(02/18) おはようございます。 いつもありがとう…

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