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2005年05月31日
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クリスマス篇<PART2>

12月に入ってからというもの連日連夜続く盛況な客足に、普通でも2回転、週末ともなると3回転4回転はざらで、ウェイターのお仕事はそれこそ一服する暇もなく立ちっぱなしの歩きっぱなしで、何とか終電で家にたどり着いた途端にバタンキューってな感じで、バイトとは言え仕事のためだけに人生があるような毎日でした。

12月は一人千円のクリスマス・セットというのが強制的に付くので、売り上げは一気に上がります。
セットというのは1本百円くらいのシャンパン(単なるサイダー)と、紙製の仮面マスクに紙笛(駄菓子屋で売っていそうな安物)が付いてるだけなんですが、さすがキャバレーでのし上った会社ですから、使えるノウハウはしっかり踏襲するわけです。
近所の同系列のキャバレーから同じセットをぶら下げて、赤ら顔でふらふら出てくる親爺を見るたびに水商売の奥の深さにつくづく感心したものでした。
それとは逆に、文句も言えずこんなもの千円で買わされた挙句、人ごみの中で安い酒飲んで大騒ぎでもした日には、従業員に袋叩きにされて店から放り出されるという悲惨な目に遭う人々を見て、委員長は、一体この熱狂はどこから来るものなのか、はたまた、世の中の常識というのは一体何を基準にしているのか、そんな疑問を抱いたものでした。

やはり12月といえば忘年会シーズンですし、大学生あたりは早くも冬休みに入りますから、お客の多くがグループ・団体になります。
早い時間から来るお客のほとんどはダンスが目当てですから、さほど問題はないのですが、9時、10時を過ぎてやってくる客、特に団体は、ここにたどり着くまでに相当呑んでますから、既に出来上がった状態で入店してくるので些細な事でも大騒ぎになります。
委員長の体験から学んだセオリーですが、6人を超えるグループには必ず問題を起こすトラブルメーカーが紛れ込みます。5人だと多数決で必ずどちらかの意見が有効になりますので、たとえトラブルメーカーがいても小難でやり過ごせます。

更に6人以上の団体の場合、かなり高い確率で問題児・トラブルメーカーが紛れ込んできます。これはいかなる団体にも当てはまる法則とも言えるでしょう。
そしてディスコでよくあったのが、ダンスフロアで足を踏んだ、踏まないのケンカですね。
これは完璧に一定のパターンで起こります。

必ず被害者はそこの常連か、あるいは遊び慣れてる人です。
そして加害者はかなり泥酔して大だこ踊りをやらかすタコです。
すでにこのタコがダンスフロアに登場した時点で、すぐに周りの常連とか遊び人の目に留まり、暗黙のうちにフロアの悪役となります。
さて、誰が殺るか?という暗黙のコミュニケーションが行われます。
ターゲットの分析はその外見から始まります。
学生風あるいは社会人、年齢、地位、身長、体重、酔い加減等の調査が済むと、バカの代表者が名乗りを上げるようにして足を踏まれるか、タコの手に絡まれに行きます。
そこでまずガンが飛び、ちょっとした態度「やっちゃうぞテメー」といった感じで威嚇して警告を促します。
ここで仲間が気づき、タコを抑え込みにかかれば難を逃れられるか、あるいはトイレとかで「怪我しないうちに帰った方がイイぞ」とか凄まれる程度の小難で収まりますが、仲間が結構イケイケだったりとか、ヤバイと感じないノーテンキなシヤワセグループだったりした場合はいよいよ場外乱闘となります。



ダンスフロアで迷惑踊りを繰り返す加害者タコは、「インネンこかれて」チョーパンとか膝蹴りの被害者となります。
被害者だったバカの代表は、踊り場の皆さんのためと言う大義名分によって制裁を加えた時点で加害者となります。
通常は被害者タコが、鼻血ブーとかその場でうずくまることで事態は一気に収束しますが、時に外見と相反して根性のあるヤツとか、泥酔していて痛みを感じないヤツだったりした場合は、逆上して大暴れします。

更にここで被害者と加害者が再度逆転します。

加害者バカは、大声出して暴れる被害者タコを、踊り場の皆様のためにと、強い正義感から天誅を加えます。

加害者バカは手馴れたもので、「この人酔っ払ってて手がつけらんないんすよ」と見事被害者に転じます。
「なぁんだとぉー、お前が先に手ぇを出したんだろぉーう」と、ややロレツが回らない態度の被害者タコは手を振り上げて抗議抵抗、しっかりと加害者になりきってしまいます。
そんな踊り場の騒ぎに、黒服以下店員の有志が待ってましたとばかりにやってきてタコを取り押さえ、フロアから引きずり出します。
「おれぇはきゃくだぞぉー」とか更に暴れるタコは、あちこちから出てくる手や足でボコボコにされながら裏の非常口に消えていきます。

委員長たち毎日コキ使われているウェイター君たちは、ここぞとばかりストレス発散、「やめろ、やめろ」のかけ声の下、羽交い絞めにしたタコをこらしめます。
タコは思わず叫びます。
「お前らがやめろ!」

そして、委員長たちストレス一杯のウェイター君たちにとって最高のシュチュエーションは、タコ対タコ、更にタコグループ対タコグループの乱闘が何よりのお好みです。
タコは理屈が通りませんから、とにかく蹴って殴って黙らせるのが一番。
しかも双方ともボコボコにして店から追い出しても、悪いのは当事者同志、お店は迷惑していますってことで、たとえお客が怪我したところでお互いのケンカで怪我したんだから仕方ありません、といった具合にどう転んでも加害者にはなりません。

やれやれ、今日も一日お疲れさん、店の外に出た委員長の目に、ごみクズと化した千円のクリスマスセットが寒空の新宿の道端のあちらこちらに虚ろに転がっておりました。
高いお金を払って、蹴って殴られ叩き出されたお客様は、果たして神様なのでしょうか?





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最終更新日  2005年05月31日 15時51分20秒
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