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2005年07月02日
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1976年2月、底冷えする鎌田商店街のはずれに、本格的SOULディスコ「ブルドック」がリニューワル・オープンしました。
リニューワル・スタッフは総合企画“ひとやすみ”。
店のレイアウトは、皆がそれぞれの得意技を生かしてそれなりに仕上げました。
ジョイ吉野は電気屋あがり、DJブースのセット、スピーカーの配置、配線を一手に引き受け、何とかディスコらしい体裁を整えました。
委員長はデザイナー学院の経験を生かし、店内にSOULFULなイラストを施して雰囲気を作ります。
高橋さん、池ちゃんはテーブルのセッティングを変え、入り口からホールへの導入部を少し勿体つけるようにして、入り口から店内を見渡せないようにしました。
ワタナベ店長は調理人の経験を生かし、おつまみメニューの選定と厨房器具の整理を始めました。加えて、原価計算や売上見込み、経費の算出などを一手に引き受けてくれて、寝る間も惜しんで集中していました。
社長のマチャアキとこの話の仕掛け人Y氏は、オーナーからいくらかでも改装予算をもらえるように交渉を続けていました。

営業を引き継いだ従業員一同揃って開店、お客様のお出迎えです。

かけ声虚しく、お客はゼロ。開店休業です。
チラシでも撒いてみるか、ってことで寒空の蒲田駅前にチラシを配りに出ます。
どうもディスコって感じの乗降客じゃありませんね。
とにかく頑張ろうってことで深夜営業。
仲間内で好き勝手なレコードを持ち寄って、みんなで踊ってみたりしても虚しいだけ。
夜中になって委員長の彼女が実姉を連れてやって来ました。
よく似た大型姉妹は蒲田の町じゃちょいと目立ちましたね。
姉さんは酒飲みだったもんで、なんだかんだと明け方近くまで飲んでいってくれました。

「大丈夫なの、こんなんで」

彼女はそれなりに委員長の前途を心配してくれていました。

翌日は数人の来客がありましたが、間違って来ちゃったような女の子たちと、食事がてら飲みに来たちょっと年配のカップルでした。

1時間ほど居てくれましたが、「難しいんじゃないか」一言ポツリと言い残して帰りました。
さて、3日目は土曜日、週末ですからチョットは期待できます。
午後7時を過ぎたあたりで、若者が集い始めました。
それなりのディスコ客がぽつぽつと入り始め、ホールの半分くらいは埋まりました。
リクエストには全て応じます。



さすがに自分たちの食扶ちを稼ぐとなると、ノーガキはコイてられません。
お客に喜んでもらって、また来てもらうためなら何でもしますって、当初のコンセプトなどはどこへやら。とにかく少ない客で盛り上げようと必死です。(こんなに一生懸命DJやったの、みんな初めてじゃなかったのかな)
何とかディスコらしい(?)雰囲気で盛り上がってきたころ、フロントが騒がしくなりました。
婦人用サンダルをつっかけた青ゾリパンチ頭が数人、ワタナベ店長、フジワラさんなどを前に食ってかかっていました。

「サンダルや下駄履きはダメ。靴履いて来い」

「靴ならいいんだな」

「ああ、靴さえ履いてくれば入れてやる」

押し返したワタナベさん。

「困った奴らだなぁ、あんなのが出入りしてたら上客が来なくなっちゃうよ」

元々の経営が行き詰ったのも、こんな不良少年達の溜まり場になってしまっていたからでした。

十分もしないうちに、さっきのパンチ頭たちが戻ってきました。
チグハグな靴ですが、ちゃんと履いています。

「靴履いて来たぜ。入れてくれよ」

言葉を失うワタナベ店長。渋々ながら入店させます。
さあ、入ってしまえばこっちのもの、と言わんばかりにフロアを占領。
客席からはチャームのピーナッツやら氷を、客やDJめがけて投げつけます。

「いい加減にしろよ」
喧嘩早い池ちゃんが注意しますが、おチャラけるだけで一向に悪戯はやめません。
そうこうしている内に再びフロントが騒がしくなりました。
制服の警官の立ち入りです。
どうやらパンチ野郎たちが履いている靴は表通りでカツアゲしてきたものだったようで、被害者からの届出で交番から巡査がやって来たとのことでした。
パンチ小僧たちはお巡りさんに連れられて退場。
やれやれと思ったのもつかの間、今度は鉢巻、マスクには「ZERO」のマーク、特攻服に
身を包んだ若者たちが数十人なだれ込んできました。
さすがにこればっかりは入店お断りです。
フロントで「入れろ」「帰れ」の押し問答が続いているところへ、新たな少年やくざが乱入してきました。少年やくざ二人が、特攻服の少年たちに「今日はおとなしく帰れ」と促すと、おとなしく従って帰る少年たち。
意外な展開にしばし面食らうワタナベ店長以下スタッフ。
少年やくざの話によると、この店のオーナーから用心棒を頼まれているS会の事務所が道路を隔てた向こう側にあるので、困ったことがあったらいつでも呼んでくれとのことでした。
あ~あってなもんで、完璧にデキレースです。
こんなあんちゃん達に一体いくら払っていたのか知りませんが、これじゃ商売が長続きするわきゃありません。
まあ、何にせよ週末の売上八千円ナリがともかく入り、一同で反省会です。

「あのガキたちをどうするかだよな」

「根気よく追い出していくしかないだろうな」

「しかし、あの用心棒ってのも曲者だよな」

「あんなのにいくら払ってたんだろうね」

水商売の経験者とはいえ、何から何まで自分たちでやっていく難しさを実感した一同でありました。それでも根が道楽者ですから、また明日考えよう、ってなもんで、緊張の土曜日は終わりました。
翌日の日曜日は夕方の5時頃から不良少年らしきグループが、店の周りをウロウロしています。昨日のメンバーとはちょっと違って、もう少し年少組でした。
オープンと同時に入店してきて、数人の仲間内でどんどんリクエスト入れてきて、踊りまくりです。
へー、こんな奴らもいるんだぁ、などと呑気たれているところへ、またまた昨夜のパンチ野郎たちの登場です。今度はしっかり靴を履いてやってきました。
店内に入ると、年少組がパンチ小僧に挨拶して席を空けます。
なんのこたぁない、先発隊で来ていた中学生番長グループでした。

「よう、夕焼け番長、お前ら学校どこだ」
池ちゃんが尋ねます。

「*○!X△◇*」
カムセハムニダ、失礼致しました。

この日は特別問題も起こさず適当に遊んで帰りましたが、この街の奥行きを知った委員長、やれやれ、本格SOULディスコへの道は中々に険しいことを悟った一日でした。





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最終更新日  2005年07月02日 13時41分16秒
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