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2005年09月25日
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その大きい部屋、8チャンネルのミキサーとカセットデッキがあるマルチ録音可能なスタジオでは、胡散臭いバンドメンバーによる「新宿ディスコナイト」のパイロットバージョンが演奏されていたのでした。

ノースリーブのTシャツにジーンズ、ビーチサンダルという出で立ちのベーシスト・シゲル君。毎度お馴染み白のコットンパンツに白のカッターシャツ、だらりと垂れ下がったGIベルトに黒革靴のドラマー、腕は確か、顔は肉まん石○君。
丸型メガネにアロハシャツ、南こうせつそっくりなギタリストH君。
同じくアロハにジーンズ、ちょいと痩せ型銀縁メガネのキーボードT君。
赤のボタンダウンシャツに黒のスリムジーンズ、怪しいボーカリストアッちゃん。
黒のニットフレアーに黒のTシャツ、黒のハンチングと黒ずくめの怪しいおっさんムラちゃん。
そして、白のメッシュTシャツに白のスーツ、白のストッキングに白のエナメルシューズ、カーリーヘアにサングラス、どうみても詐欺師にしか見えない委員長。

「さあ、今日は最後の音合わせだからね、よろしく頼むよ。次はいよいよ本番だからね。そして君たちのデビューが待っているんだよ」


ハッタリもここまでくれば玄人はだし。これで本当に当たっちゃったりした日には、世の中真面目に働いている人に申し訳が立ちません。
てなことで、どうにか音もまとまり、後は本番を待つばかりということで、さすがに皆のテンションも高まってきました。
只ひとつ不安と言えば、B面の「移り変わる日々」という楽曲の余りにも簡単すぎる仕上げが、果たしてうまくいくかどうかということでした。

「今更悩んでもしょうがないけど、大丈夫かなぁ」
意外と小心者のムラちゃんですが、生まれついてのハッタリ野郎の委員長はダメで元々、やってみなきゃわからんね、という完全に世の中を舐めきった態度で挑んだのでした。
さあ、いよいよ大詰め、ホンモノのレコーディングを控えて、ムラちゃん、アッちゃん、委員長の3人は再び新大久保のアジトに集結して最終ミーティングです。
ここでまたムラちゃんから質問が飛び出しました。

「ところでさ、この頭のリフなんだけど、やっぱりコーラスがいるんじゃない?」

「良いですね、コーラス、入れましょうよ」って簡単に言うなよ、アツシ!

「俺らでやるの?」(そりゃちょっと無理なんじゃない)

「いや、コーラスはやっぱり女の方が良いと思うんだよね」



「ロニーの彼女って音大行ってたよね、確か」

「えっ、C子のこと?」(そんな唐突に言われても)

「へぇ、ロニーさん、ここの女性以外にも彼女居るんですか?」(大きなお世話だろ)

「まあ、やらせてみるのは良いけど、それでも一人しかいないじゃん」

「だからさ、学校の友達とか連れてきてもらってさ、音大ならそこそこのがいるでしょ」



ということで、またまた出たとこ勝負の話がこの土壇場に来て盛り上がってしまいました。
アッちゃんの新聞配達のお時間も近づき、お開きとなったこの最終ミーティングの後、早速委員長はムラちゃんを伴って高円寺の亀屋マンションに向かったのでした。
6畳と3畳の振り分けに4畳半のダイニング・キッチンという間取りのマンション角部屋。
3畳部屋の方をC子、6畳の方にルームメイトのK、そしてそこにはピアノが1台、ただどーんと置いてあるだけで家具など何ひとつない殺風景な部屋は女の子二人が暮らすマンションとは到底思えない佇まいでした。
そんな、いかにも道楽者の住処といった部屋で、委員長とムラちゃんはC子に道楽者ドリームをしばし語ったのでした。

「え~、私にできるかなぁ」

「大丈夫、簡単な3度のコーラスだから」とムラちゃん。

「でも、友達っていってもなぁ~。私あんまり学校の付き合い無いんだよね」

「まあ、とにかくあたってみてよ」

ということで、しっかりC子の出番が決められてしまいました。
委員長としては仕事と女は別にしたかったのですが、この際仕方ありません。
(このバンドごっこって仕事だったの?遊びだとばっかり思ってたんですけど)

まだ付き合い始めて数ヶ月のC子でしたが、彼女も言葉では謙遜こそしてはおりましたが、実際のところ、内心では何か東京で一発やってやろうなどと企む道楽者の一人でありました。とはいってもまだ上京1年目の19歳のおねーちゃんでしたから、委員長やムラちゃんのようなプロの道楽者(なんじゃそりゃ)を前にして全てが別世界のような話であったことは間違いありません。

話はちょっと飛びますが、実はこのバンドごっこが本気になり始めた頃、委員長はムラちゃんに「そろそろ身の回りを整理しといた方が良いんじゃないの」などと言われて、「うーん、そうだな、これからメージャーになれば女関係とかのスキャンダルはまずいしなぁ」などと生意気なことを考えた大馬鹿野郎でした。
早速、東中野のお風呂屋のおねーちゃんにその話をすると、声を上げて大笑いされてしまい、「整理する前に自分が整理されないように気をつけてね」などと意味の分からないことを言われてしまいました。しかも涙を浮かべながら腹を抱えて大笑いです。

「おまえ泣いてんのか?」

「ぎゃははは~!」更に大声出してバカ笑い。

ひーひー言いながら笑う風呂屋の姐御の目から大粒の涙がぼろぼろこぼれています。

そうか、やっぱりそんなこと言われるのは辛いんだろうな、などとまだまだ人間の奥行きのない委員長は独りよがりのムードを作っておりました。
(あまりの馬鹿さ加減に本気で笑われてただけなんですけど、男ってやっぱ相当なアホですよね。っておまえだけだろそんなアホは)

「あたしたちってさあ、整理するほどの関係だったの?」まだ笑ってます。

そうか、強がり言って俺の気持ちを受け止めてくれてんのか。
(本当に困った奴ですね。そろそろ気がつけよ)

「あー、可笑しい。そのムラちゃんってのも面白いけど、それを真に受ける方も受ける方で可笑しいよね」

「えっ?」(まだまだガキやのぉ)

「スキャンダルっていうのはさあ、隠し事してあることを暴露するから面白いんでしょ?」

「うん、まあそうだよな」

「ヤクザのスキャンダルなんて聞いたことある?」

「俺はヤクザじゃないぞ」

「そうじゃなくて、ばくち打ちとかヤクザが有名になったからって、その妾とか愛人とかがスキャンダルになる?」

「そりゃ、ならねーだろうなフツー。そんなのあって当たり前だからな」

「まあ、とにかく頑張ってね、私整理されてあげるから、あはは、丁度今、生理だし、あはは」

って、よく意味の分からぬまま、お風呂屋の姐御とは一応これでケジメをつけました。
今にして思えば、人生の底辺を生き抜いてきた姐御らしい哲学だったように思います。
彼女の言うとおり、委員長はまさしく自分の人生を博打にしてしまったギャンブラーだったのかもしれませんね。しかも底抜けのアホなばくち打ち。
今更ながらその節は色々とお世話になりました。
相変わらず馬鹿は直っておりませんが、お蔭様で人並みな親爺には成ることができました。
あらためて御礼申し上げます。





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最終更新日  2005年09月25日 09時48分21秒
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