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2005年12月07日
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いよいよ時代のリングサイドに追い詰められた委員長のまわりも、次第に逃げ場を失ってジタバタする戦友達が一人ずつ姿を消していきました。

赤坂のゲームセンターも会社の思惑とは裏腹にさほどの収益を生むことができず、残りの契約期間をなんとか消化するだけのようなことになっていました。
そんなある日のこと、閉店間際にオオイケさんの兄貴Hさんが店に飛び込んできました。

「今夜オレとつき合ってくんねぇか」

「どうしたんですか」

「いや、今日明日にも取られちゃうからよ、どうにも寒くて誰か一緒に居て欲しくてな」

取られると言うのは逮捕されるということですが、来るのが解っていて待つというのは辛いものです。その最後の時を一人で居るのは尚更辛いということで、何故か委員長の元を訪れたHさんでした。
舎弟のオオイケさんも収監中ですし、こういうときは業界の人間より楽しいだけの遊びのお付き合いでいた馴染みの元に身を寄せてくるのが常で、こういうときこそ道楽者としてはできるだけ長い時間を居てあげたいと思うのが人情です。


この頃の委員長はもうディスコとは随分と縁遠くなっていましたので、店内に入って久しぶりに賑やかな世界に触れたものの、もう自分はこの業界の人間ではないことを実感しました。
ユウジも委員長の突然の訪問に驚いた様子でしたが、Hさんの姿を見てなんとなく事情を察したようでした。
Hさんはもうひとり昔馴染みの女性を呼び出して三人で久しぶりにディスコで遊びました。

昔馴染みの女性はHさんと同年代で委員長よりは5~6歳年上で、身なりから見ても商売人というよりは遊び人OBというような感じでした。
偶然フロアで踊っていた若い娘がHさんの新宿時代の知り合いだったようで、テーブルにやってきて昔話に花が咲きました。
彼女は委員長のトゥモローUSA時代のことも知っていて大変懐かしがってくれました。
彼女が席を離れた後、Hさんが委員長に耳打ちしました。

「残念だったなぁ、昔はおめぇに惚れてたらしいぜ」

隣の姉さんが口を挟みます。
「Hちゃんとはどうゆう関係だったのよ?」

「結構イイ声出してたぜ、あははは」


空騒ぎにも似た馬鹿話が続きましたが、時折厳しい表情をするHさんは何とか嫌なことを見ないように、忘れるようにしているようで、それはましく委員長の今の姿でもあり、時代の終焉に差し掛かってジタバタしている自分を見せられているようでした。

「ありゃ、麻取りか同業者だな」

Hさんが顎で反対側のテーブルに座っている玄人っぽい人を指して言いました。

「まさかこんなところで捕り物が始まるんじゃないでしょうね」

「まあ、マトはオレじゃないことは確かだけどな、はは」



「ありがとな」

別れ際Hさんがポツリと言った一言が印象的でした。
これでHさんとも縁が切れました。

この数週間後、ユウジが店のフロントと揉めてギゼを辞めました。
ユウジもすでにディスコ業界に醒め始めていて、初心に戻って音楽をやることを決意したようでした。
そうなれば手っ取り早く金を稼いで音楽活動に専念したい、そう思い立ったユウジは新宿のビニ本屋で働くことになりました。
ユウジの田舎(大分県)の先輩が裏業界で活躍していたことから、誘われるままに移っていったのでした。
さすがに数週間で金回りこそよくなりましたが、人相は悪くなり、始終刺々しい態度で生活するようになっていくユウジを見てさすがの委員長も声をかけずにはいられませんでした。

「おまえそんな生活続けてたら戻れなくなるぞ」

「ロニーさん、オレも解ってはいるんですけど、この先何をすれば良いのか自分でもよくわからないんですよ」

やはり人間は弱いものですから、目先で大きな金が動けば次第につまらない欲も出てきて心が傷みはじめてきます。
特に、音楽をやろうというような人間があまり生臭い世界に身を置いてしまうと、精神的なバランスを崩して見えるものも見えなくなってしまいます。
委員長はユウジに田舎に帰ることを強く勧めました。
まだまだ出直すチャンスはあるし、一度原点に戻ってよく考えるように諭すと、本人もきっかけを待っていたようなところもあり、すんなりと受け入れてくれました。

ドタバタ劇はまだまだ続きます。
シンジのいる立川のエモンも閉店となりました。
かろうじて吉祥寺の「城」がリニューワル・オープンするということで、うまく入りこめたシンジでしたが、先行きの不安は皆同じです。

そしてヒロシが独立して広告代理店を立ち上げました。
後日談ですが、結局は資金繰りに行き詰まってホテトル業などに手を出してしまい、数年後追い込みをかけられて委員長のウチに逃げてきましたが、ここまできたら自分でケジメをつける以外にはないというような末期的症状でした。
もちろん当時の委員長はすでに業界からも、その筋の付き合いからも遠ざかっていましたので、何の力にもなってやれませんでした。
せめてメシを食わせて小金を握らせてやるのが精一杯でした。
後年「竜二」という映画を見たとき、この時の状況に良く似たシーンが出てきて涙が出たのを覚えています。

やはり同じ時代を生きた仲間が落ち込んでいく姿を見るのは辛いものです。
辛うじて委員長はなんとかケジメをつけてこうしてフツー(でもないか?)の生活を送っておりますが、あの頃の仲間にはどんな形でもフツーの暮らしをしていて欲しいと祈るばかりです。





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最終更新日  2005年12月07日 07時46分17秒
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