内閣府の「29年版高齢社会白書」によると、介護分野の有効求人倍率は22年の1.31倍以来、毎年増加を続け、28年には3.02倍に達した。おおむね全職業の有効求人倍率の2倍以上の水準で推移しており、介護分野の担い手不足の現状が浮き彫りとなった。
担い手不足の理由の一つが、介護業界の賃金の低さだ。厚生労働省の28年の調査によると、介護職員の平均給与は月額約26万2000円で、全産業平均の約36万2000円を10万円下回った。
政府は待遇改善のため、30年度は介護サービスの公定価格となる介護報酬を0.54%引き上げた。介護事業者の経営を改善し、職員の賃上げにつなげるのが狙いだ。31年10月からは1000億円を投じ、勤続10年以上の介護福祉士について、月額平均8万円の待遇改善を行うとしている。
一方、AI(人工知能)などの最新技術導入による職員の負担軽減も進める方向だ。30年度の介護報酬改定では、ベッド上の高齢者の動きをセンサーで感知して知らせる「見守りロボット」を設置する事業所に関し、報酬加算のための要件を緩和することにした。
このほか、政府は2月の経済財政諮問会議での安倍晋三首相の指示も踏まえ、介護分野などへの外国人労働者受け入れ拡大の検討を始めた。入管難民法の改正も視野に新たな在留資格を創設する。
ただ、若者の雇用機会を奪うといった懸念から自民党内で外国人労働者の受け入れには慎重論も根強い。入管難民法の改正に向けては、調整が難航する可能性もありそうだ。(山口暢彦)
2018.5.8 05:00
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180508/mca1805080500011-n1.htm
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