リニア中央新幹線の建設工事をめぐり、東京地検特捜部と公正取引委員会が大手ゼネコンの強制捜査に乗り出した。きのう、鹿島と清水建設を家宅捜索したのに続き、近く大成建設と大林組も捜索する。
JR東海などがこれまでに発注した22件の工事のうち、これら4社は15件を受注しており、3〜4件ずつを分け合う形になっている。名古屋市の非常口工事に端を発したリニア疑惑は、日本を代表するスーパーゼネコンが関わった談合事件に発展する様相になってきた。
いま工事が進んでいる東京—名古屋間は、その9割が地下やトンネルだ。都市の地下40メートルという深さに駅をつくり、南アルプスを25キロものトンネルでくりぬく。難工事が多く、請け負える技術力のあるゼネコンは限られるとされる。
そうした事情に乗じて、業界内で出来レースが行われていたとしたら、許しがたい。正当な競争が回避され、工費が高止まりすれば、そのツケは将来、運賃を通じて利用者にはね返る。
4社は05年に談合との決別を宣言したが、その後も名古屋市の地下鉄延伸工事や東京外環道の工事など、談合での摘発や疑惑の指摘が続いている。
今回も、工事の情報を漏らさないとする誓約書をJR東海に出していたが、それをほごにして、受注への協力を他社に働きかけていた疑いがある。業界に自浄能力はあるのか、厳しく問われねばならない。
発注者であるJR東海にも注文がある。
リニアは、公共事業として進む整備新幹線と同じく、全国新幹線鉄道整備法に基づいて建設される。さらに、リニアを成長戦略の一つと位置づける安倍政権の後押しもあり、国債発行で資金をまかなう財政投融資を使って3兆円が投入される。JR東海は総事業費の3分の1を民間より低金利で調達でき、負担が5千億円ほど減るという。
リニア建設は単なる民間事業ではなく、政府が深くかかわる国家的なプロジェクトだ。それだけに、入札には公共事業並みの透明性が求められる。
JR東海は、4社と契約した工事の価格やどの業者が応募したのかといった詳細について、「今後の発注に影響する」と伏せたままだ。
これでは企業としての社会への説明責任を果たしているとは言えない。改善を求める。
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