これまで考案されてきたダイエット法の中には低炭水化物ダイエットやケトジェニック・ダイエットなど、炭水化物の摂取を制限するものも多く考案されています。こうした炭水化物を避ける食事法の流行に対し、食べ物が代謝や腸内細菌に与える影響を20年以上にわたって研究してきたワシントン大学医学部のクリストファー・ダマン氏が、「良質な炭水化物」を選ぶことの重要性を呼びかけました。
Fiber is your body's natural guide to weight management – rather than cutting carbs out of your diet, eat them in their original fiber packaging instead
https://theconversation.com/fiber-is-your-bodys-natural-guide-to-weight-management-rather-than-cutting-carbs-out-of-your-diet-eat-them-in-their-original-fiber-packaging-instead-205159
加工されていない果物や野菜、全粒粉穀物の食品、豆類、ナッツ類など自然な食材を食べると、ほとんどの場合エネルギーと食物繊維を同時に摂取することになります。こうして体内に取り込まれた食物繊維には、腸内での糖分の吸収を遅らせる効果があるほか、腸の働きや腸内細菌のバランスを整えることで、血糖値や空腹感の調節にも役立ちます。
食物繊維の働きについて、ダマン氏は「その様子はあたかも、食べ物が適切な消化の方法が書かれた取扱説明書とともに食物繊維でパッケージングされているかのようです」と話しました。
しかし、多くの現代人は食べ物から食物繊維を取り除いて食べてしまっています。具体的には、白米や精製した小麦粉、砂糖入りの朝食シリアル、スナック菓子、ジュースなどです。
このような低食物繊維・高精製炭水化物の食事よる悪影響を避けるため、低炭水化物ダイエットやケトジェニック・ダイエット、旧石器時代の食生活を目指すパレオダイエット、アメリカの心臓病専門医のロバート・アトキンスが提唱したアトキンスダイエットなどが考案されており、それらの一部は有効性が科学的に裏付けられています。
例えば、2021年の研究では、炭水化物を制限すると飢餓状態や長時間の運動中に脂肪からエネルギーを取り出す生物学的プロセスであるケトーシスが誘発されることが示されました。また、低炭水化物ダイエットにより体重が減少し、血圧や炎症の問題も改善されるという研究結果もあります。
その一方で、ケトジェニック・ダイエットが腸の健康に悪影響を及ぼすという報告もあるほか、極端に炭水化物を避けるケトジェニック・ダイエットの継続は困難であるため、心臓病やがんへの長期的な効果は確認できなかったと結論づけた研究もあります。
さらに、食事と寿命の関係を調べた2021年の研究では、全粒粉のパンやパスタなどといった形で少なからず炭水化物を摂取する地中海食を食べている人は健康で長生きする傾向があることも示されました。
このように一見すると矛盾した研究結果が報告される理由は、「炭水化物の質」 にあるとダマン氏は考えています。食物繊維も炭水化物の一種ですが、胃や腸で消化されない食物繊維とは異なり、単糖類や高度に精製された炭水化物は消化吸収されやすいエネルギーです。そのため、糖質の制限により代謝異常や健康を改善できる可能性はありますが、前述の通り糖質を制限する食事は継続が困難で栄養の専門家による指導が欠かせません。
このことからダマン氏は、「より持続可能で効果的な健康増進法は、加工されておらずゆっくり吸収される炭水化物、つまり食物繊維を含む自然な炭水化物の割合を増やすことだと思います」と述べました。
ダマン氏は、自然な炭水化物として全粒粉穀物、豆類、ナッツ類、種子類、果物、野菜を挙げています。こうした食材では、総炭水化物と食物繊維の比率が10対1を超えることはほとんどなく、多くの場合は5対1となっています。
未加工の食材だけを食べて生活するのは困難ですが、ダマン氏によると炭水化物と食物繊維の比率が少なくとも10対1、できれば5対1に保たれていれば、加工食品でもOKとのこと。また、甘いものを食べる際は食事と一緒に食物繊維のサプリメントを摂取するのも効果的です。繊維をブレンドしたプレバイオティクスのサプリメントを用いた2022年の研究では、食物繊維入りのサプリメントを摂取すると食事後の血糖値スパイク、つまり血中のグルコース濃度が上昇しすぎて有害となる問題が約30%減少したことが報告されました。
ただし、食物繊維の摂取に注意が必要なケースもあります。例えば、フォドマップ(FODMAPS)と呼ばれている糖類は消化吸収がしにくいことから食物繊維として扱われることがありますが、フォドマップは腸で発酵しやすいため、摂取しすぎると腹部膨満感や下痢といった過敏性腸症候群の症状が出る可能性があります。ダマン氏によると、フォドマップが多い食品としてはガーリックパウダーやオニオンパウダーを含む加工食品、タマネギ科の野菜、乳糖を含む一部の乳製品、リンゴやナシ、モモなどの果物などがあるとのこと。
ダマン氏は末尾で、「私は甘いものばかりを食べることは推奨しませんが、3人の娘たちが私によく言うように、たまには甘いものを楽しむのも大切です。そして、たまに甘いものを楽しむときは、食物繊維のパッケージとともに炭水化物を食べることを考えたいものです」と述べました。
タグ: ダイエット
【このカテゴリーの最新記事】
- no image
- no image
- no image
- no image
- no image