中秋でひっそりとしていた街ではやることもなく、
早々に宿に舞い戻った。
コーヒーを淹れながら、宿のスタッフを捕まえ、
韓国の習慣、風習を根掘り葉掘り尋ねた。
「中国では『月餅』を食べるけど、韓国でもなにか特別なものを食べるの?」
「ソンビョンかなあ。ギョーザのような、ティアドロップ型のお餅ですよ。
あんまりおいしいものじゃないから、最近は食べないなあ」
「なるほど。日本じゃ、まん丸のお団子を食べますよ、甘いやつね」
「へえ。そうだ、食べ物じゃないけど、恒例は『あいさつまわり』がありますね。
お世話になっている人のところへお菓子やお供物を持って、挨拶に行きます」
「へえ、それは日本ではないなあ」
「今日もコレから行くんですよ。買い物したあと持って行くんです」
「それって、一緒に行って問題ある?」
「問題ないですよ。あ、以前行ったゲストハウスにも行きますよ。
あそこのオーナーにもお世話になっているので」
「また会いたいなあ、連れて行ってよ。荷物ぐらい運ぶよ」
「じゃあ、一緒に行きましょう。あとで声かけますよ」
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スタッフの仕事終わりにクルマに乗って、恵化(ヘファ)へ向かった。
「買い物、って言ってたけど、店開いてないんじゃない?」
「それが問題です。たぶんスーパーは開いているでしょう」
「進物は買っておいてないの? 当日買うのかよ!」
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ヘファに到着し、開いていたスーパーに飛び込んだ。
大きなダンボールにスナック菓子をアレコレ詰め込み、
即席の「お菓子詰め合わせセット」を2つ作った。
それとは別に箱で缶ビールを買い求める。
「こんなアバウトな感じなの?」
「プレゼントの中身よりも、アイサツに出向くことが重要なんですよ」
「ああ! それで行列ができていたのか!」
数日前から街なかで気になる風景を重ねて見かけていた。
普通の店はモチロン、スーパーの店先でも、
専門のスタッフがつきっきりで次から次に並んでいる客の品物を包装していた。
店先にはお中元やお歳暮ながらの化粧箱入りの品物が並んでいる。
日本と違うのはシャンプーや洗剤など日用品がヤケに多いところか。
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そう、あれはチュソクのあいさつまわりのための「包装サービス」だったのだ。
スーパーで見かけたその光景を説明すると、彼はあっさり答えた。
「毎年恒例の光景ですよ。プレゼントは包んでもらうことが重要なのです」
韓国らしいワンシーンを見かけたことに気づき、こうして今は体験している。
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