新型リーフの航続距離400kmは、果して必要十分か?
実際の販売もいよいよ10月からということで、待ちわびた方もいらっしゃるかと思います。
新型リーフは、 航続距離が従来の電池容量30kw仕様での280kmから容量40kwで400kwへとアップしましたが、これで本当に実用的になったのか、いくつかの視点から考えて見ました。
私の愛車は、三菱のアウトランダーPHEVで、半分EV、半分エンジン車と言えますが、日々乗っている上での実際は、9割方はEVとして走っていて、エンジンはたまに補助的に動く程度です。そうしたほぼEV的経験から、純EVについても色々と「思想」を育んでおり、というよりも自然に色々と考えさせられており、素人ユーザー目線ではありますが、 航続距離というテーマで少し書きたいと思いました。
日産リーフ初期型は、かつて私も試乗車をディーラーから一週間も借りたことがあります。
世評に違わず、乗り心地は最高!で、 至ってサイレント、かつパワフル、加速もスムーズそのものでした。
正直、こんなに運転していて楽な車はかつてありませんでした。
この時は、片道30キロ程度の山道往復までしか試してませんが、1充電でも意外に乗り出があるものだなあ、という印象でした。もっとも、冷暖房の必要ない秋でしたが。
初期型リーフの航続距離200km(MC後は228km)でも、 近中距離の使用では必要十分だったと思います。
これから述べることは、実は不思議とあまり見かけない意見の様な気がします。
しかし、EVにとっては一番重要ではないかと思うコトです。
EV充電方法の理想形・・・リチウムイオン蓄電池の特性から
初期型リーフは発売からすでに7年も経つそうです。このごろ世評では、このリーフの駆動用リチウムイオン電池の劣化が深刻との話を非常によく目にいたします。
しかし、これは6〜7年も経ったリーフの場合では、考えてみれば至極当然のことです。
充電頻度から耐用年数を考えてみるとわかります。
例えば、一週間に 3〜4回(平均3.5回します) の充電をします。
すると、 一年間では、3.5回 × 52週間 = 185回 にもなります。
フル充電条件での充電回数限度は一般的に、 500〜700回 程度と言われます。
もしこれを700回としても、 700回 ÷ 185回 = 3.78年 ! にしかなりません。
(* リチウムイオン電池の容量低下が70%までの間の回数という設定において)
この 3.78年 という数字は、衝撃的です。EVの場合、車の寿命イコールリチウムイオン電池の寿命となってきますから、もしも交換を前提としないなら、 EVは四年も持たない車 になってしまいます。
日産の場合、電池交換プログラム自体が無い様ですから、リーフの寿命は、この計算通りなら、4年程度ということになってしまいます。
ですから電池劣化の世評は、かなりの部分本当なのかもしれません。
ここで、充電回数についてもう一言。
普通、充電回数は、充電器で充電した回数だけを考えがちです。しかし、実は別途加えなくてはならないはずの要素があるのです。
回生充電 です。EVは、減速エネルギーや下り坂での位置エネルギーを電力として回収することで、航続距離をかなり伸ばしているのです。ですからこの分の充電電力量は、結構大きいのです。これは乗っていると実感してわかってきます。これを考慮すれば、EVの充電回数は、実際はもっと少なくなるのが道理であり、 実際は4年を待たずして劣化が顕著になってくる恐れが十分ある、ということになってしまうのではないでしょうか?
私は、何もEVや日産をバッシングしたいわけでは毛頭ありません。
むしろ、車の一定割合のEV化は好ましく、普及を願っており、だからこそ愛車もPHEVなのです。
ただ、 正しいEV車の普及 こそを願っている訳であって、車の性能の根幹的部分で顧客を失望させる様な販売手法は、EVをむしろ一過性の代物として近いうちに消費者のトレンドから外してしまう恐れがあると、それこそ真面目に危惧している理由からなのです。
パソコンやスマホのリチウムイオン電池も3〜4年もすれば劣化したと感じる場合が多いのですが、しかしEV専用に開発したリチウムイオン電池なら寿命はもう少し長い可能性もあり得ます。でも、それが2倍、いや1.5倍になどとはならないと思います。車体価格は比較にならない高額品なのですが。
現状の駆動用リチウムイオン電池の性能では、劣化時点での電池交換プログラム等の導入は、メーカーとしての最低限のモラル、社会的責任だと簡単に断言できます。このアフターケアを設けないままに販売する事は、半ば売りっぱなし商法に同じです。確信犯とも言えましょう(将来の購入者の困惑を予め知っているという点で)。
車は使い捨てカメラでは無いんです!!!
これは長い目で見て、メーカーへの信頼度を大きく下げるばかりでなく、社会全体のEVへの評価を落としめ、購買層を減らすといった社会的文化的な損失を招く恐れがあり、決して看過できない事柄です。
現状のEVを購入して長く乗るつもりでしたら、遅くとも6年後、7年後に電池交換できるのか、できるならその費用はいくらなのかを、必ず確認の上でないと買って後悔することになるのではないでしょうか。
もしも購入時に、仮に車体価格が50〜100万円高くても、将来可能な自己負担額で電池交換できた方が、結果的にはるかに経済的メリットや安心感は高い、ということになります。
電池に優しい充電方法を・・・EVをできるだけ長〜く乗るために。
今EVやPHEVに乗っている方なら、これから述べることは常識でなくてはなりませんので、これはこれから買うという方に向けたアドバイスです。少しでも長持ちさせましょう。
充電方法は、言ってしまえば簡単なことです。
満充電・完全放電は避ける。
という一言に尽きます。これが一番大事です。
理想的には電池容量が、 の間で使うのが最も優しい。
その次に来るのが、
急速充電器を頻繁に使わない。
です。基本は、家庭での200V普通充電にして、出先で必要があったら急速充電器のお世話になる程度が良いと思います。
その他では、
高温時の充電は避ける。・・・充電するにしても少しに止める。
もしも100%フル充電してしまったら、なるべく早く使う。・・・フル状態下では常に電極が劣化し続けます。
また、 完全放電状態も、すぐに解消する(充電する)。
日産自動車の場合、月々2000円で急速充電器が使い放題とか、購入後二年間無料で使い放題などの、大盤振る舞いのサービスがあり(新型リーフで継続されるのでしょうか?)、ものすごくお得感があります。正直、これに魅力を感じないわけには参りません。
しかし、敢えてここでも言わせてもらいますと、電池劣化を早める急速充電を奨励するわけですから、私個人の意見としては、あまり感心できません、はい。
なるべくなら自宅で充電しましょう。
結論? EVの理想的な航続距離は?
前置きが長くなりましたが、、、
上記で、20%〜80% の間で使うのが、リチウムイオン電池の劣化を最小限に抑える事 と書きました。
EVを長く乗るためには、必要欠くべからざる充電方法だと考えます。
そうだとすれば、
現実的な航続距離は、この20〜80%の間の60%分だけ、ということになりませんか?
つまり、 電池容量全体ではなく、その60%しか使えない!
自動的にそういうことになってしまいます。
新型リーフ の航続距離は公称400km。これは100%全て使い切った場合なのですから、これに60%かけるべきです。 つまりは、240kmなのです。
但し、これはあくまでメーカーのカタログ値から出したもの。
実際は、 400kmから、少なくとも20〜30%は割り引いた数値が現実の航続距離でしょうから、
仮に25%引きとすると、分母は 300kmになり、さらに 60%を掛けますとなんと、 180km 程となります。
実際には、 夏場はエアコンを使いますし、特に冬場の暖房は著しく航続距離を縮めます。
冬季では、実質 150km を下回ってしまう恐れもあるのではないでしょうか。
400kmから一気に150kmへ、というのは信じられないショックですが、
この150km という値であれば、よく考えてみれば、私なら日常の9割迄でお釣りがくる航続距離です。
そして、たまの遠出程度の頻度なら、100%充電も急速充電もまあまあ問題ないでしょうし(100普通充電も時にはした方が良いと言います)。
また、仮に5年経って電池能力が70%に落ちたとしても、100km位は安心して走れそうです。
私なら実用的範囲内です。
(しかし、電池交換プログラムが明確に存在しない限りは、怖くって買えませんけどね、実際のところ。)
この150kmで日常使用では不安という方は、購入は慎重に検討された方が良いかもしれません。割合としては、そういう方はそんなに多くないと思いますが。
仕事で高速道路を頻繁に利用するなどのケースでないと、少ないでしょう。電気自動車を高速で多用すると、どうしても急速充電器の使用が多くなり、かつまた、急速放電も多くなり、電池劣化ペースは一層早まりそうです。
また、普通充電器が家になく、または設置できずに、専ら急速充電器で充電しようという方も同様に要注意と思います。
* 新型リーフの実際の走行距離を150~180kmとみた時の充電頻度は、おおかた週二回ほどにまで減少するかもしれません。その分だけ、確実に電池劣化ペースは遅くなるはずです。また、電池の抗劣化性能も多少は改善されているかもという希望もあります。ただ、旧型のは日本製でしたが、新型ではこれがどうなったのか、ここも重要ですよね。何しろコスト優先傾向が顕著でありますから。
終わりに・・・
それにしても、EVの場合、電池交換プログラムは絶対必要だと繰り返します。
因みに三菱自動車の場合は、その辺のところは公式サイトに明記してあり、一定劣化条件で無償交換という規定もあります。
さて、電気自動車は所詮、はっきり言ってまだまだ発展途上のアイテムです。
とりわけ電池性能の未熟さゆえに、利用者をかなり選ぶのです。
これは、普通車がガソリン主体、大型車がディーゼル主体、という従来からのエンジン長所を生かした住み分けをしてきましたが、これと同様に、ただ単に新しいカテゴリーが誕生して一つ選択肢が増えたのだ、と捉えるべきかと考えます。
EVの長所に合致した人が、選択すべき車だということです。それ以上のものではありません、現状は。
ガソリンスタンド難民というのも、地方では急増中なのですし、そうでなくとも、GSに行かなくても大丈夫というのは、これはこれで案外楽ちんなものです。
要は、EVの航続距離がライフスタイルに適合する方こそが、真に楽しむことができるニューカテゴリーなのでしょう。
今回はかなり背伸びして、EVを航続距離という視点から偉そうに論じてみました。
ご愛読いただき感謝申し上げます。
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