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2023年07月20日

私だけの特捜最前線→90「掌紋300202!〜叶刑事の出生の秘密と父子の物語」

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今回は「掌紋300202!」を紹介します。このドラマは、500回を超える特捜最前線のなかでも屈指の名作と言われ、 脚本の長坂秀佳氏による直球勝負のストーリーがとても印象的なドラマです。

主演は 叶刑事(夏夕介)で、父も母も知らない孤児という設定だった叶の出生の秘密が明らかになり、それに伴った代議士の父親(山内明)との愛憎劇が繰り広げられていきます。

代議士が持つノートをめぐって

政界の贈収賄を記録したノートが代議士の手に渡り、代議士は特殊な金庫に保管していました。特命課はノートの提出を求めますが、代議士は頑としてはねつけます。

代議士は4年前から密かに「手形の主」を探していました。その手形は昭和30年2月2日に生まれた我が子のものでした。そして、手形の主が叶刑事であることが判明したのです。

代議士が父親だとわかり、動揺する叶。父親への敬慕の裏返しからか、強引な捜査に出ます。代議士がノートを使って、政界工作を働くのではないかとみたのです。

その様子を見ていた秘書(東啓子)は、叶を呼び出し、代議士が私利私欲ではなく、政界浄化のために必死に取り組んでいることを告げ、息子として父親に相対してほしいと懇願します。

代議士の事務所を訪れた叶と秘書でしたが、何者かに雇われた殺し屋(天本英世)が潜入し、代議士を脅していました。叶が撃たれる寸前、代議士が急な動きをしたため、殺し屋は代議士を射殺したのです。

殺し屋は叶ともみあいになって窓から転落死しますが、叶たちが訪れる前に時限爆弾を金庫の中に放り込んでいました。駆け付けた神代課長(二谷英明)らは、金庫を開けなければならなくなったのでした。

金庫の暗証番号の秘密

ここからがドラマのハイライトになります。金庫は 6ケタの暗証番号を入力し、午前と午後の8時ちょうどに、その番号が合っていれば開くというダブルセキュリティーの構造になっていました。

暗証番号を知っているのは代議士だけ。時限爆弾は8時2分にセットしてあり、金庫を開きさえすれば、爆弾を止めることができます。神代課長は叶、橘刑事(本郷功次郎)、桜井刑事(藤岡弘、)に推理するよう命じます。

叶は「自己中心的な男なので、自分の生年月日を使っている」と断言し、桜井は「最後は金しか信じないので、メインバンクの口座番号ではないか」と推理します。

一方、代議士が撃たれる瞬間の隠しカメラの映像を何度も見ていた橘は「一番大事に思っている日を番号にした。すなわち300202」と言って、叶の顔を見ます。つまり 息子の誕生日だと考えたのです。

その根拠を求められた橘は「人の親としての私の直感だ」と答え、さらに代議士には父としての情愛があったとし、その証拠がビデオに写っていた「叶を助けるために自分が撃たれた」という行動だったと言い切ります。

桜井も「考えを撤回し、橘さんを支持する」と言い、神代課長も「(私の意見も)橘と同じだ」と断言します。激しく動揺する叶。ですが、その番号を入力すると、金庫は解錠したのでした。

最初から最後まで「父と子」が基軸

ストーリーは非常に単純で分かりやすく、最初から最後まで一本道で突き進んでいきます。そんなドラマの基軸になっていたのが 「父と子」。つまり息子である叶と父親である代議士の関係だったのです。

政治家という極めて権限の強い立場にある代議士が、一介の刑事の任意同行に応じ、弁護士もつけずに一人で聴取を受けた・・・橘が「叶の誕生日」だと推理した根拠となるできごとでした。

伏線となるセリフを神代課長が叶に告げています。それは「父親は腹を痛めていない分、いつまでも父親になろうと努力する」。代議士も、探していた息子が叶だと分かり、父親になろうとしたのでしょう。

解錠した金庫にはノートだけでなく、 「息子の手形」が大事にしまわれていました。それを手にし、父親の真意が理解できた叶は「これで、自分の過去を切ることができます」とつぶやきます。

すると橘は「そんなお芝居のようなセリフしか吐けんのか」と戒め、「死んだオヤジに腹を割ってやれ」と言葉をかけます。橘自身、自分の息子との確執を抱えているので、代議士の思いが痛いほどわかっていたのでしょう。

天才肌の桜井が探り当てるようなトリックではなく、「父と子」という基軸に沿った金庫の番号のカラクリは、余計にこのドラマを印象深いものにしてくれました。長坂脚本おそるべしです!


このドラマのゲストは、山内明さん、東啓子さん、天本英世さんの3人だけしかキャスティングされていません。特命課もカンコが出番なし、船村、紅林、吉野も出演場面わずかと徹底しています。

殺し屋役の天本英世さんは、まさにはまり役という感じでした。「太陽にほえろ」でもクールな殺し屋を演じていたほか、仮面ライダーの死神博士としてもおなじみですね。

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マイケルオズ@フリーランスライター
「特捜最前線」がマイブームになっているオヤジです。リアルタイムの頃は津上刑事より若かったのに、今はおやっさんよりも年長者になりました(苦笑)
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