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2022年10月27日
私だけの特捜最前線→58「ストリップスキャンダル!〜特捜屈指の超激辛かつ後味の悪いストーリー」
※このコラムはネタバレがあります。
辛口で後味の悪いドラマが多い特捜最前線にあって、この回 「ストリップスキャンダル!」は、タイトルからは想像できないような超辛口ぶりと、あまりにも虚しい後味の悪さで、他に追随を許しません。
エリート警部補はなぜ転落したのか
ストリップ劇場で踊り子の相手をしていたとして現行犯逮捕されたのは、 エリート警部補(風間杜夫)でした。懲戒免職となってしまい、夜の街で飲んだくれる姿を おやっさん(船村刑事、大滝秀治)は目撃していました。
警部補の行状はストリップだけにとどまらず、風俗店にも通い詰めていた「いい加減な男」(叶刑事談)。さらに、自分の手柄のため、組織の店のホステスにスパイ活動をさせ、情報を得ていたことも発覚したのです。
船村は、エリート警部補のあまりの醜態ぶりに「何か裏があるのではないか」と疑い、調べ始めます。すると、警部補が逮捕される少し前に、失踪していた恋人(有吉ひとみ)が自殺していたことが分かりました。
やがて、警部補の周辺にいた女たち、つまり自殺した恋人、店のホステス、風俗店の風俗嬢が、同一人物だったことが判明。恋人は、若き日の警部補に法律の勉強を教えながら、励まし続けてきた女性だったのです。
恋人を失った警部補は、組織の組長への復讐を企てていました。「ハレンチ刑事になり、殺人犯になることで、彼女に償いをする」という、すさまじき警部補の執念と贖罪の思いの前に、船村は立ちはだかったのでした。
描写シーンを書けないほど激辛
このドラマが超激辛だとする理由は、 恋人の残酷な運命にあります。あまりにも酷すぎる描写は、最初に見た時にはショックが大きすぎました。文字にすることは、はばかられるので書くことができません。
警部補は「失うものは何もない」「後戻りはできない」と、鬼気迫る表情で恋人の復讐に燃えます。単身立ち向かった船村は、最初こそ諭すような口調でしたが、ついには腕づくでも止めようとするのです。
雨の中で、警部補と船村は格闘します。最初は「腕力ではかなわない」と言っていた船村ですが、復讐に向かおうとする警部補に必死に食い下がります。 互いの執念がぶつかり合った名場面といえます。
ついに船村を振り切った警部補は、潜入に成功した組織のオフィスに向かい、組長に拳銃を突きつけます。しかし、間一髪間に合った船村が組長の前に立ちはだかり、内偵捜査で踏み込んだ特命課によって阻止されます。
組長は特命課に逮捕されますが、復讐を遂げられなかった警部補は船村に向かって「きさま、正義の味方のつもりか!」と怒鳴り散らします。船村は、ただ黙ってその叫びを聞くだけ・・・後味の悪いドラマはここで終わりました。
風間杜夫さんの名演技
ドラマでは、なんといっても警部補役の 風間杜夫さんの演技が光ります。前半の堕落しきった男から、復讐への執念を見せる表情、そしてラストの鬼気迫る姿・・・見事にドラマを引き立ててくれました。
名優の大滝秀治さんとのシーンが多いドラマで、あの大滝さんを向こうに回した演技は、風間さんもまた、名優になり得ることを証明したような気がします。この翌年、映画「蒲田行進曲」が上映されるわけです。
そんな名作なのですが、令和の世のテレビでは絶対放送されない作品になっています。ひとつは、私が書くことすらはばかられた恋人の描写。これは、ノーマライゼーションや残酷表現の両面で問題になるでしょう。
もう一つは、風俗店の表記の問題です。あえてストレートには書きませんでしたが、この風俗店は昭和の時代に、某国と同じ表記がされていたのです。映像にも看板が何度も出てきますので、さすがに流せませんね(苦笑)
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2022年10月20日
私だけの特捜最前線→57「レスポンスタイム3分58秒!〜紅林刑事の鋭い推理はドラマを面白くしたのか?」
※このコラムはネタバレがあります。
タイトルの 「レスポンスタイム」とは何か? 答えは「警察が110番通報を受けてから、現場に駆け付けるまでの時間」のことです。この解説を冒頭で行ってから、ドラマが始まっていきます。
パトカーが女性と接触事故を起こし、女性側と警察側との言い分が食い違ったことから、真相究明のため特命課に捜査が命じられます。パトカーを運転していたのは、 紅林刑事(横光克彦)の高校の同級生だったのです。
実況見分のあと、謹慎を命じられたはずの同級生がパトカー勤務についていることが、所轄署の無線交信で判明。パトカーは、女性が2人組の男に連れ去られた事件の現場へと急行していたのです。
紅林らも現場へ急ぎますが、現場では同級生ら警察官2人が射殺されているのが発見されます。ただ、連れ去った男は2人だったはずなのに、現場からは別の第三者の靴跡が見つかり、謎が深まるのです。
捜査の結果、同級生はパトカーの巡回警ら中に、何者かをパトカーに乗せていた疑いが浮上。現場で何らかのアクシデントがあり、何者かが警察官の所持する拳銃で2人を撃ったと判明しました。
紅林は、所轄署からの事件通報をパトカーが受信した時間から逆算し、同級生がどのようなルートで巡回警らをしていたか探ります。そして、犯人をどこで、いつごろ乗せたのかが徐々に絞り込まれていったのです。
この事件では、紅林の推理がさえまくり、結果として推理通りの展開でドラマが進んでいくのです。ただ、そのことが 「謎解き」の部分では物足りなかったうえ、予定調和っぽく感じられてしまいました。
例えば、第三者の存在について、紅林は早い段階からパトカーに同乗していた人物が怪しいと推理します。ここは一捻りして、あらゆる可能性を示唆させ、視聴者を惑わす展開も狙ったらよかったと思いました。
逆に言うと、捻ったところが少ない分、犯人逮捕までのストーリーは一本道で進み、見ている側からすると分かりやすいドラマだったようです。同級生が死ぬ直前に聞いた無線の通信内容にも泣かされます。
ちなみに、同級生役を演じたのは 北條清嗣さんで、特捜最前線では何度もゲスト出演しています。
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2022年10月13日
私だけの特捜最前線→56「殺人メロディーを聴く犬!〜ワンコの名演技とギターの名演奏が光る」
※このコラムはネタバレがあります。
叶刑事(夏夕介)は犬好きという設定になっていたようですが、その代表的なドラマの一つが「殺人メロディーを聴く犬!」です。この回に登場するワンコの「演技」は素晴らしく、陰の主役だろうと思っています。
叶刑事の犬への愛情
前半は、犬を執拗に狙っている正体不明の男のサスペンスと、瀕死の状態だった犬を看病し、愛情を注ぐ叶の姿という好対照なシーンが交互に登場します。犬がギターの音に反応したことからドラマが進展していきます。
犬は、ギター弾きの青年が飼っていました。しかし、トラブルから男に殺されてしまいます。犬は何日もかけて犯人の後を追い続けていました。まるで、青年の敵討ちを取るかのような執念を見せていたのです。
叶がなぜ、この犬に愛情を注いでいたのかが分かるシーンがあります。この犬の賢さを説く叶に対し、懐疑的な特命課員たち。神代課長(二谷英明)は犬の忠誠心について、外国での事例を説明しました。
すると吉野刑事(誠直也)は「それは血統書付きの犬の話だ」として、「雑種はしょせん雑種。名犬にはなれんよ」と叶に言います。その言葉に叶は、絞り出すかのように 「俺も雑種ですよ」とつぶやくのです。
叶は、雨の公園にたたずみ、男にひどい目に遭わされた犬に、自分の生まれ育ってきた境遇を重ね合わせていたのです。犬はラストで息絶えてしまいます。叶は悲しみをこらえながら、亡骸を車に乗せたのでした。
音楽担当のルナ憲一さんが出演
このドラマでは、犬とともにキーワードになっているのがギターです。飼い主の青年役として出演していたのが、 ギタリストのルナ憲一さん。現在もコンサートを開催するなど音楽活動を続けていらっしゃいます。
公式サイトによると、ルナ憲一さんは作曲家の古賀政男さんに見いだされてアントニオ古賀さんの内弟子となります。特捜最前線には担当プロデューサーから声が掛かって、音楽と演奏を担当していたそうです。
このドラマでは、ルナ憲一さんのギター演奏が随所にBGMとして挿入されています。場面に合わせて、時には情熱的な響きであったり、時には哀愁漂うメロディーであったりと、ドラマを盛り上げていました。
劇中では、ほとんどセリフがありませんでしたが、ギターテクニックを披露するシーンが挿入されており、ちょっとした見どころでもあります。
ルナ憲一さんの公式サイト です
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2022年10月09日
特捜最前線のサントラ盤を入手
「特捜最前線」のBGMを集めたサントラ盤CDを先日購入しました。 木下忠司さんが手がけた音楽は、ドラマの名場面で流れる曲ばかりで、聴いていると情景が思い浮かぶようです。
サントラ盤のトップを飾るのは 初期のオープニング曲で、エンディング曲である「私だけの十字架」をアレンジしたテンポのいいメロディー。CDにはありませんが、そこに森山周一郎さんのナレーションが重なります。
9年以上にわたって オープニングを飾っていたテーマ曲も、もちろん収録されています。そもそもマイブームになったのも、この曲を改めて聴いたときからでした。今でも、この曲を聴くと、ドラマが始まるのだとワクワクします。
CD収録曲で印象的なのは、そのテーマ曲をピアノアレンジしたバージョン。ワイヤーブラシを使ったドラムとベースに乗って、ゆったりと演奏されるメロディーは、どこかもの哀しさを感じさせてくれます。
同じピアノアレンジですが、「私だけの十字架」アレンジ版をギター伴奏で奏でるピアノのメロディーは、クラシックの名曲のような美しい曲調で、聴いているだけで胸を打たれます。
BGMにはピアノソロあり、ギターソロあり、そしてアップテンポのサウンドありと、聴きどころ満載。CDのラストを飾るのは、もちろん チリアーノさんが歌う「私だけの十字架」、テレビのショートバージョンです。
それにしても、昔の刑事ドラマのテーマ曲って、いい曲ばかりですね。「太陽にほえろ」のテーマもカッコいいし、「西部警察」や「大都会」のテーマもセンス抜群で好きでしたよ!
CDを聴きたいという方はこちらで (リンク先は無効となっていますので、クリックしないでください)
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2022年10月06日
私だけの特捜最前線→55「バラの花殺人事件!〜映画のワンシーンを演出した見事なラスト」
※このコラムはネタバレがあります。
この回の主役は、おやっさんこと 船村刑事(大滝秀治)ですが、事件の主役となるのは、元俳優の老人(岩城力也)です。元俳優は、船村が若いころ感銘した映画の主人公だったという設定でした。
胸にバラの花を捧げられた被害者
チンピラが殺され、胸にバラの花が一輪置かれていたというシーンから始まります。チンピラから子供を助けた女性が、執拗に付きまとわれた挙句、乱暴されそうになったため、とっさに殺してしまったと疑われます。
ドラマの前半は、女性を疑う所轄署と、女性の身の潔白を証明しようという船村という構図で進んでいきます。やがて第2の事件が発生。この被害者も胸にバラの花が置かれていたのを見て、船村はふと思い出します。
それは 「薔薇の復讐」という映画で、船村は刑事になりたての頃に見たといいます。映画のストーリーに似た展開を見せる二つの事件。主人公を演じた元俳優の姿を目撃した船村は、元俳優の消息を探し当てます。
そして第3の事件が発生し、元俳優の動機を特命課が解明します。映画のラストから居所を推理した他の刑事たちとは別に、船村は一人撮影所へと向かいます。そこに元俳優が姿を現したのでした。
船村は「バカなことをしたものだ」と、映画の刑事と同じセリフを吐きます。すると元俳優は「俺がやらなかったら、誰がやるんです?」と返します。船村は映画のラストシーンを自ら演じ、元俳優を逮捕したのでした。
奥が深い長坂秀佳脚本
このドラマが 秀逸だと思うのは、事件現場や女性が子供を助けたシーンに、元俳優が姿を現してのにもかかわらず、まるでエキストラの一人であるかのように何気なく映しているところです。
船村が映画のことを思い出してから、徐々に元俳優の存在を目立たせていき、事件の核心へと向かっていく演出は見事の一言。しかも、女性の勇気ある行動が、彼の動機につながっていくよう仕立てているのです。
さらに、 元俳優役に岩城力也さんを起用したアイデアも素晴らしいです。岩城さんは、端役で何度も特捜最前線に出演しているので、前半部で画面に映し出されたとしても、視聴者は先入観を持って見ることはありません。
船村と元俳優のラストシーンのセリフも、その前に元俳優の部屋で、船村がセリフを回想している場面で聞かせておくことで、「バカなことをしたものだ」という言葉が、唐突な印象を与えないようにしています。
さすがは長坂秀佳脚本と言わしめるような、 奥が深いドラマだと思います。もちろん、大滝秀治さん、岩城力也さんの名演技が、脚本と演出の見事さを支えていることは言うまでもありません。
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