私がリアルタイムで見ていた頃は、すでに 西田敏行氏扮する高杉刑事が去った後で、特命課は「エリート刑事の集まり」というイメージが植え付けられていました。高杉は明らかにその枠からは外れています。
高杉は東北出身で、子だくさんの家庭で育った苦労人。いわゆる、たたき上げの刑事として特命課に赴任しました。初期の同僚で典型的なエリートだった桜井刑事(藤岡弘)らとは真逆の存在だったのです。
西田氏の持ち味であるコミカルとシリアスの使い分けは、高杉刑事の個性を特命課の中で一層際立たせていました。しかし、スケジュールの都合から徐々に登場する機会が減り、ついに降板を余儀なくされました。
第105話「さようなら、高杉刑事」では、母親殺しを自白した少女(森下愛子)の無実を証明するため、高杉は孤軍奮闘します。自分の出世を棒に振りかねない行動に、特命課の刑事たちもやきもきするのです。
西田氏らしいシーンといえば、自分の顔を化粧品で塗りたくりながら、化粧嫌いの少女がなぜ化粧をして路上にいたのかという「心の内」を、少女に語り聞かせます。 コミカルとシリアスを融合させた名場面と言えます。
事件解決後、高杉刑事は所轄署の係長として栄転したのです。その荷物整理の場面で、玉井婦警(日夏紗斗子)にエロ本が見つかってしまうシーンがあり、最後まで高杉らしさを見せてくれた降板劇となりました。
あのまま西田氏が特捜に出演し続けていたら、特命課の雰囲気も違ったものになっていたでしょう。たった一人の存在でイメージを変えてしまうほど、 西田氏の存在感は大きかったのだと思います。
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