特捜最前線が他の刑事ドラマと一線を画す特徴として、「刑事を殉職させない」との方向性があったと言われています。500回余の作品で殉職したのは二人だけ。その一人が 津上刑事(荒木しげる)だったのです。
人気刑事ドラマだった「太陽にほえろ!」は、若手刑事の殉職をドラマチックに描いていました。殉職回のクライマックスは、事件解決よりも殉職シーンに重点が置かれていたように思われます。
津上刑事殉職編は「殉職I・津上刑事よ永遠に!」「殉職II・帰らざる笑顔!」の前後編で、前編こそ殉職へ向かうカウントダウンのように描かれていますが、後編のストーリーはちょっと違っているのです。
津上刑事は後編の冒頭で殉職してしまいます。しかし、事件は解決したわけではなく、さらに恐るべき事態へと進展していき、津上を失った特命課の刑事たちは焦りからか、冷静な捜査が出来なくなってしまうのです。
そんな刑事たちにヒントを与えてくれたのが、 津上の「言葉」でした。前編の様々なシーンで何気なく口走った津上の「言葉」がキーワードとなり、事件解決へと導いていったのです。
殉職をドラマのクライマックスに据えるのではなく、一つの「過程」にとどめ、あくまでも捜査と事件解決を軸にしているところに、特捜最前線らしさを感じます。むろん、津上殉職をドラマチックに描きつつです。
殉職後、たった一人残された津上の妹が、神代課長(二谷英明)に 「兄さんを返して!」と泣き叫ぶシーンには胸が痛みました。肉親の悲痛な思いをストレートに表現している演出にも特捜らしさがうかがえます。
神代も以前、娘が事件に巻き込まれて殺されるという経験をしています。その時、「娘さんを殺したのはあんただ!」と糾弾したのが津上でした。妹を見る神代の辛そうな表情が印象的なシーンでもあります。
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