この回の主役は 叶刑事(夏夕介)。行きつけのラーメン店従業員が、子供を守ろうとして暴走バイクにはねられ即死。彼の家族に連絡しようと、履歴書を確認したらでたらめで、本当の身元は分からない・・・。
捜査の結果、彼が東北地方出身で、しかも出身地で起きた殺人と誘拐事件の容疑者だったことが判明。叶は現地へ飛び、彼の母親や、退職後も彼を追っていた元刑事の男性と出会うことになる、というストーリーです。
ドラマの見どころは 母親と元刑事の心情です。母親は、容疑者となってしまった息子を憎み、蒸発した息子を「死んだ」と割り切って位牌まで作っていました。叶から消息を聞かされても、無表情のままです。
元刑事は、従業員の男を逮捕するため、退職後も全国各地を飛び歩く執念の捜査を続けますが、ついに私財を使い果たしてしまいます。元刑事の娘は、そんな父親の姿を心配そうに見つめているのです。
やがて事件は、特命課の手によって真実が突き止められ、従業員の男は殺人も誘拐も起こしていなかったと分かります。元刑事は悔しがりますが、娘からは後日、父親がこの事件からようやく解放されたと感謝されます。
叶は母親にも事件の真実を知らせます。その時は冷淡に応対していた母親でしたが、叶の車を見送りながら、膝を崩して 「ありがとう」と涙しました。最後の最後に、息子を信じていた母親の本心が明かされたのです。
ドラマとしては、元刑事と娘だけ、あるいは母親だけにスポットを置いても、十分見ごたえのあるストーリーが作れたでしょう。しかし、元刑事と母親の両方の心情を描いたことで、さらに深みが増していったのです。
ここでは紹介しませんが、事件にかかわる他の登場人物の心情にも触れていますし、捜査する叶刑事の思いも丁寧に描かれており、特捜最前線の中でも 名作の一つに数えられるドラマに仕上がったのだと思います。
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