今回紹介するのは「列車大爆破0秒前!」です。この作品は放送110回、 二谷英明さんの復帰記念作として放送され、特捜最前線のなかでも傑作の一つに挙げてもいいようなドラマです。
二谷さんの復帰については後ほど書くとして、まずはストーリーから紹介していきましょう。ちなみにドラマは一般公募の原案をもとに、メインライターの長坂秀佳氏が脚本を担当しています。
恋人を殺された犯人の復讐
滝刑事(桜木健一)の先輩刑事が、何者かに爆殺されます。現場にいた犯人の車を追う滝刑事ですが、犯人が仕掛けた警察無線妨害装置によって混乱させられ、犯人を取り逃がしてしまうのです。
メンバーが特命課に戻ると、長期出張中だった神代課長(二谷英明)の姿がありました。神代は事件について推理しながら、捜査のヒントを与え、的確な指示を出します。カミソリの名は健在でした。
やがて犯人像が浮かび上がります。5年前に先輩刑事たちとやくざ(辻萬長)との銃撃戦で、通りかかった女性がやくざの弾に当たって殺された事件があり、犯人は女性の恋人だったのです。
刑事2人を殺した犯人は、特命課に「やくざを列車に乗せろ」と指示します。犯人は列車爆破を企み、乗客もろともやくざを殺す気と思わせ、実はライフルで射殺しようと計画していたのです。
桜井刑事(藤岡弘、)が犯人の狙いに気づき、神代課長の機転で犯人はやくざの射殺に失敗します。その直後、駆け付けた特命課員によって犯人は逮捕され、事件は無事解決したのでした。
二谷さんの復帰と長坂脚本の醍醐味
このドラマは1時間番組ではもったいないくらい、さまざまなエッセンスが詰まっています。その最大のものは、何と言っても長期不在だった神代こと 二谷英明さんの復帰作ということです。
ドラマでは、神代課長はICPOに長期出張しているとの設定になっていましたが、実はスキー場でのロケで大けがをし、番組から離脱していたのです。その間、桜井刑事の復帰や滝刑事の加入などがありました。
二谷さんの登場場面は、特命課のオフィスだけでしたが、切れ味鋭い推理や的確な指示ぶりを発揮。とくに、ラストのやくざを救った起死回生の策は見事の一言に尽きます。
それから、ドラマの中で次から次へと繰り出されるトリックとどんでん返し。これは 長坂脚本の醍醐味でもありますし、特捜最前線ならではの面白さといっても過言ではありません。
冒頭、逃走に使った無線妨害装置の設置場所に「殺された女性へのメッセージ」を込めている点。地名から紅林が名前を読み解き、さらに番地から神代が殺害年月日を言い当てる場面は見事です。
逆探知されることを計算し、アマチュア無線を使って電話を中継させるというトリックを使い、列車爆破と見せかけて、実はライフルを使うという手段の選び方・・・まさに、スリリングな展開を演出しています。
滝刑事の未熟さも見どころ
もう一つ注目したいのは、加入間もない 滝刑事が未熟ぶりと人間性を見せるドラマであることです。初対面の神代への挨拶もろくにさせてもらえず、切れ者ぞろいの特命課にあって、滝の要領の悪さはひときわ目立ちます。
滝は、この2回前の作品「午前0時に降った死体!」で特命課に配属されますが、刑事になる動機が「出世をしたいから」で、爆殺された先輩刑事も同じタイプだったことから、影響を受けたものと思われます。
女性が殺された現場で橘刑事(本郷功次郎)と語り合う場面では、先輩刑事を爆殺した犯人への憎しみ、そして「自分が犯人を逮捕する」という思いを橘にぶつけます。
しかし橘から「デカは憎しみで動いちゃだめだぞ」とたしなめられます。神代不在の中で滝を特命課に迎え入れた橘としては、何とか一人前の刑事になってほしいとの思いだったのでしょう。
ところが滝は、やくざを列車に乗せようとした時、やくざの妻と子供を反対ホームに呼び寄せてしまうのです。そして、船村刑事(大滝秀治)に「自分が身代わりになります」とまで申し出る始末。
人間味あふれるシーンではありますが、あまりにも刑事としては未熟で思慮不足と言え、それが自身のラスト出演となる「地下鉄・連続殺人事件!」での大チョンボにつながってしまうのですね(苦笑)
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