ナツノナカノです。
暑くなってきましたね〜。5月も半ばでございます。
72巻の「妖怪輪入道」をご紹介いたします。
パタリロ! (第72巻) (花とゆめCOMICS (2242))
「妖怪輪入道」
江戸南町奉行の邪鬼遊稚児之丞万古蘭(じゃっくゆちごのじょうばんこらん)と呉服問屋越後屋の主人である波多利郎が京都に向かって旅をしているところから始まります。
老中、田沼意次からの密書を届けるという役目を仰せつかった万古蘭が、波多利郎に荷物持ちの役目を言いつけたのです。しかし二人で旅に出るなんてなかなかないシチュエーションですね。
そして二人は途中で道に迷ってしまうのですが、林の中で今から首をつろうとしている女性と出くわします。もちろん二人で自殺を止めるのですが、その女性は泣きながら「わたくしのせいでぼうやが殺されてしまったのです…」と泣き崩れるのでした
その女性の家はすぐ近くの宿場町のはずれにありました。
身分を明かした万古蘭と波多利郎に女性はぽつりぽつりと理由を語るのでした。
女性が住む小さな宿場町は近年、どんどんさびれていったそうです。それは妖怪が出没するようになったからだというのです。
その妖怪は夜になると荷車のような大きな音をさせて路上に現れ、外出したものや、夜にたどりついた旅人などを怪音とともに食い殺しているのでした
ある日の夜、子供を寝かしつけた女性の耳に怪音が聞こえてきたのです。女性は怖いと思いながらも好奇心に負け、戸を少しだけ開けて妖怪の姿を見ようと覗いてしまったのでした。
すると、燃えている大きな車輪に顔がついた恐ろしい妖怪が目の前に!しかも口には血のしたたる足を咥えていました。そして妖怪はこう言ったのです。
「おまえが覗いたから大切な人間が死んだのだ」と
驚いた女性が慌てて子供の様子を見に行くと、子供は妖怪に足を食いちぎられ亡くなっていたのです…。
「わたくしのせいで…わたくしが覗いたばっかりに…」と泣き叫ぶ半狂乱の女性。女性だってこうなる事がわかっていたら絶対に覗いたりしなかったでしょうに…本当にお気の毒です
しかし万古蘭は矛盾に気づきます。覗いた時にすでに足を咥えていたというのは理屈に合わないのです。女性が覗くことを前もって知ることは不可能…だからこれは 不可能犯罪だというのですよ。
波多利郎は知恵をしぼって意見を言います。その妖怪はテレパシーを使って、覗こうとした精神波をキャッチして先回りして殺したのでは…とか
しかし万古蘭に、もしどたんばでやめたらどうする?最後の瞬間まで本当に覗くかどうかは誰にもわからんのだ、いかに妖怪といえども「多分のぞくだろう」で人殺しはすまい…と言われてしまいます。万古蘭は結局、妖怪の持つ超自然的能力としか思えんな…と結論づけるのですが…。
この話の面白いところは、万古蘭ことバンコランが超自然的なものをあっさりと受け入れてしまっているところですね。通常のバンコランだとありえないことなんですよ。「パタリロ!」にも妖怪やら幽霊やら、悪魔から天使まで出てきますけど、バンコランがガチガチの現実主義者なので一切不可思議なものは信じないんです。昔可愛がった後輩が悪魔の姿で出てきたり、パタリロの首がちょん切れてまたズルズルとつながって再生したのを見ても!です。催眠術ですませちゃう。江戸が舞台だと万古蘭も妖怪に相対することが、ままあるんですが、普通に受け入れて退治しております。
さて、このあとは波多利郎が囮になり、妖怪のトリックを見破り事件は解決となるのですが、 妖怪は退治されても、殺されてしまったぼうやは帰ってこないのです。
「とりあえず子供の仇をうつことは出来たな…」と旅路を急ぐ二人の背中がなんとも寂しい終わり方になっております。
「妖怪輪入道」は江戸時代の絵師“ 鳥山石燕”が 『今昔画図続百鬼』で描いているくらいに昔からおなじみの妖怪らしいのですが、覗いた時点で足を咥えているというのはおかしいじゃないか!とそのトリックを見破り妖怪を退治して終わるというのはやはり魔夜先生ならではの、親心の解釈ではないかと思います
さて、このお話には続編があります。それはまた次回に!
【このカテゴリーの最新記事】
- no image