ナツノナカノです。
前回、 「妖怪輪入道」のお話をご紹介いたしました。本日は前回のお話からの続編 「雨降小僧」です。老中、田沼意次からの密書を届ける役目を仰せつかった万古蘭と荷物持ちの波多利郎が京都での役目を終え、今度は江戸へと帰る途中でのお話となっております。
雨がしとしとと降る中、万古蘭と波多利郎は江戸への帰途についていました
途中、波多利郎はお地蔵様にお供えしてある饅頭を見つけ、万古蘭に隠れてこっそりとお供えに手を出します。ところが一瞬早く饅頭を手にしたものがいました。それは見知らぬ小さな子供でした。お供えものなのに「ぼくのマンジュウを横取りするな〜」と怒る波多利郎でしたが、子供もペロリと饅頭を平らげ「さぁとれるものならとってみろ」と波多利郎を手玉にとります
東へ向かって一人旅をしているという子供。波多利郎は情けをかけ一緒に連れて行ってやることにしたのですが、まだまだ万古蘭のストライクゾーンに入るには小さすぎる子供です。万古蘭はきっといい顔をしないだろうと、こっそりと連れていくことにしました。
万古蘭のストライクゾーンは15、6歳の美少年なのですが、波多利郎によるとその子供は内角低めに外れすぎているのだとか…(笑)
そして雨はしとしとと降り続けているのですが夕方、雨脚が強くなってきたところで万古蘭と波多利郎は早めに宿をとることにしました。宿でも波多利郎は子供を気にかけ、万古蘭から見えない位置で子供にこっそりご飯を与えますところが箸でつまもうとした里芋の煮っころがしがうっかり転がってしまい、それを急いで追いかけた子供の姿を万古蘭にばっちりと見られてしまいます慌てて言い訳をしようとした波多利郎でしたが、その時、宿の者が部屋の外から声をかけてきました。
雨がすごくて川が氾濫しかかっているというのです。江戸への帰途を急いでいる万古蘭は途方にくれます
その様子を見ていた波多利郎と子供ですが、子供が 「雨降小僧のしわざだ」と言い出しました。子供によると雨降小僧はもともと雨の神、雨師様の弟子だったのですが、修業をするうちに相当な降雨技術を身につけ、そのうち師匠よりも自分の方が技術が上だと思いこむようになり、遂には雨師様に破門されてしまった…ということらしいのです。
雨師様に破門されたのちはやりたい放題。雨を降らせることで人助けをする雨師様とは違って 雨降小僧は大雨を降らし人々を困らせて喜んでいるのです。
雨降小僧のしわざなのに一般ピープルは雨師様のしわざだと勘違いしてるんだ…と顔をくもらせる子供。そして波多利郎はそれなら雨降小僧を退治してやると安請け合いをするのですが…
ここで雨降小僧が出てくるのですが、小僧なんて可愛い感じでもなく「おっちゃん」に近いです(笑)前回もちょっとお話させていただいた 鳥山石燕の 「今昔画図続百鬼」にも出てきます。私たちが生活していて困るような大雨は、実はこの妖怪のしわざだったんですねぇ
もちろん雨降小僧は万古蘭と波多利郎によって無事に退治されます。
その後万古蘭と波多利郎は再び江戸への帰途へつくわけですが、波多利郎が途中でひろったあの子供はいつの間にかいなくなっていました
そして、二人はいつぞやの宿場町を通りかかります。そして前回子供を妖怪に殺されてしまった母親と再会するのです。
母親はすっかり元気な様子でした。それには理由がありました。
子供が殺されてから毎日泣き暮らしていたところ、息子が夢枕に立ったというのです。そして息子はこう話したのです。
死んでから閻魔の庁でお裁きを待っているときに、雨の神様に声をかけられ、お前は見どころがあるから二代目雨師として育ててやろうと言われたのだ…と。一生懸命修業して立派な神様になるからおっ母さんも達者で暮らしておくれ…
息子があの世でも元気でいることがわかったと、嬉し涙を流す母親のそばには子供の絵姿がありました。
そしてそれはもちろん、波多利郎とまんじゅうを取り合ったあの、子供だったのです。
子供を失った母親はそりゃもう、後悔しっぱなしでしょうし、子供の成長をそばで見守れないことに悲しみがあるでしょうが、それでもあの世で元気に神様として修業を積んでいると思えば母としては少しは心が軽くなるのかもしれません。魔夜先生らしい、お互いを思いやる親子の物語だと思います。
そろそろ梅雨に入りますね雨の日にはぜひ読んで頂きたいお話です。
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