5月4日(巡礼34日目) Samos サモス 〜 Sarria サリア (12.5km)
いやはや美しい景色と蚊の襲来はこのガリシア州ではセットらしく、ただでさえ生理で体力がないのに虫との戦いは私を疲弊させ、今日もたったの12.5キロ歩いたサリヤで止まってしまった。
途中、両足で立ち上がったら私と同じくらいデカいんじゃないかと思える白いモコモコ犬が現れ、押し倒さんばかりにじゃれついてきて、なんと私の右腕をガブリ。パニックでわーきゃー騒いでいると、羊飼いのようなおじさんが現れて「こいつ、噛みついて遊ぶのが好きなんだよ。大丈夫、ほんとに噛みついたりしないから」とでも言っているのか自分の腕を差し出して噛みつかせると、笑いながら離れていった。
笑いごとじゃない 野犬に襲われたと思った私は涙目だったし、ベージュの私のウィンドブレーカーは犬のヨダレで汚れるし、何よりガブリとされた時は、牙こそ刺さっていないものの、本当に痛かったのだ。ふりほどこうと必死にもがく私の腕を、おじさんが来るまでは離さなかったのだから。
蚊だけではなく犬にも襲われた、生理痛で苦しむ哀れな私は、目にも鮮やかな緑を楽しむ余裕などもはやなく「もうやだー、あんなバカ犬が野放しにされているところなんかもう歩きたくないっ。人間味がなかろうと、無機質だろうと、私は清潔で虫のいない都会が好きだー!」と心中叫びながら涙を拭いて足早に、一刻も早く次の村へ着こうと休憩を取ることなく、先を急いだのだった。
一心不乱に歩いてきて汗ばんでいたため、バックパックを下ろし白馬を写真に収めていると、何だか騒がしいオジサンの一団がやってきた。
4人同時に喋りまくっていた明らかにスペイン人らしきオジサンたちは私を見ると「なんだ、写真なら俺が撮ってやるよ」とばかりに私からカメラを奪い取り、白馬を背に私を立たせた。
やたらと嬉しそうなオジサンに言われるまま写真に収まり、なぜかそこからサリアの入り口まで陽気なオジサンたちと一緒に歩くことになった。
4人とも英語ができないらしく、会話らしい会話は成立していないのだが、とにかく喋ったり歌ったりする陽気なオジサンたちは親切で、サリアの町の入り口にあったバルに休憩のため入った時は、ピーチジュースをご馳走になってしまった
その後オジサンたちに隣りのアルベルゲに泊まるが一緒に来るか、と訊かれたのだが、明らかに鼾がものすごそうな4人組だったので丁重に遠慮申し上げて、私はひとりサリアの旧市街へと歩を進めたのだった。
人生は楽しいのが一番、歩き続けて疲れても渇いた喉に一杯のビールを流し込めばホラ、たちまち勇気が湧いてくる。
オジサンたちからそんなポジティブでファンキーな人生訓を教わったような気がした。ありがとう、4人の猛者たち
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