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2010年まで運航の「ガンメタのJAL機」
JALのボーイング767貨物機のイメージ(画像:JAL)。
JAL(日本航空)グループが2023年から、13年ぶりに自社保有の貨物専用機を運航することが発表されました。この「JALの貨物機」復活をうけ、一部航空ファンは、往年のJAL貨物機で実在した「ガンメタのJAL機」を連想し、その復活を期待する声がSNSを中心に見られます。これは、どのようなものなのでしょうか。
【写真】思った以上にビッカビカ!!「ガンメタのJAL機」の全貌
JALが新たに導入する貨物専用機は「ボーイング767-300ER」の改修機。奇しくも同社では、2007年から貨物専用機を売却する2010年まで、姉妹機の「ボーイング767-300F」を導入しており、航空貨物需要が旺盛だった東南アジア・中国線に導入していました。このかつての767-300Fが「ガンメタのJAL機」とも呼ばれる「ポリッシュド・スキン」のデザインを採用していたのです。
現在の旅客機はおおむね、航空会社それぞれのデザインで胴体の底の部分まで塗装されており、金属の「地」の部分はほぼ見えません。貨物機も同様で、なかにはデザインが施されていないものもありますが、そういったものでもボディは真っ白に塗られているのが多数です。これにより美観の維持を図るほか、機体を外部の環境から保護する役割があります。
「ガンメタのJAL機」にはどんな効果が?復活はあるのか?
JALのエアバスA350-900の初号機。同社がESG経営の軸に掲げている「新機材の導入推進」の象徴的な飛行機だ(2019年5月、伊藤真悟撮影)。
一方、「ポリッシュド・スキン」は胴体の金属部分がむき出しで、胴体に使用されているアルミ合金を研磨剤で磨きあげていました。これは表面に酸化皮膜を作り上げることで、塗装したのと同様に機体の腐食を防ぐほか、光沢の維持を図るというもの。
JALの貨物機では、767、「ジャンボ・ジェット」ことボーイング747でこの塗装を採用していたほか、現行塗装へ変更される以前のアメリカン航空機なども、この「ポリッシュド・スキン」を採用していました。
塗装がない「ポリッシュド・スキン」、その大きなメリットは、軽量化による燃費の向上です。
JALによると、ボーイング747の場合、胴体表面に使用される塗料の重さは約150kgといいます。「ポリッシュド・スキン」はそのぶん機体が軽くなり、これにより1年間で1機あたり4万リットル、ドラム缶だと約200缶分に相当する燃料の節約ができるとしています。
機体のサイズこそ767の方が小型ではあるものの、「塗装をしないことによる燃費向上」という効果は同じく期待ができたわけです。こうして「ガンメタのJAL機」が生まれました。
このたび復活する「JALの貨物機」は、宅配大手のヤマト運輸などと提携し、宅配貨物の輸送を主なミッションとします。「物流パートナーと強く提携することで新たなビジネスモデルを作る目的」(JAL斎藤祐二経営企画本部長)とのこと。また同社の赤坂祐二社長は「長期的なビジネスとして考えている」と話していることから、現在発表されている3機体制から貨物機を増やす可能性も捨てきれません。
同社では「ESG経営(※注:環境、社会、ガバナンスの頭文字を取って作られた言葉)」を今後の経営方針の軸として掲げており、その一環で環境に配慮した運航を推進しています。もちろん可能性こそ未知数ですが、今後こういった意味でも、「ガンメタのJAL機」が復活する確率が全くないとは言い切れなさそうです。
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