NTTテクノクロス株式会社は、ブロックチェーン技術の開発およびソリューション開発に力を注ぐ方針を明らかにした。
ブロックチェーンの開発環境を支援する「ContractGateシリーズ」を製品化しており、その第1弾として、ブロックチェーンの生成状況などを可視化する「ContractGate/Monitor」を、2018年1月に発売した。
同社では今後、ブロックチェーンネットワーク全体の運用監視ツールや、既存アプリケーションからブロックチェーンネットワークに接続するためのインターフェイス群などを提供予定。
また、開発者などを対象にしたブロックチェーンに関する教育プログラムを実施する予定であり、2023年度には、ブロックチェーン関連ビジネスで、年間10億円の売上高を目指す。
■NTT研究所の研究開発成果を顧客のビジネスへ役立てる
NTTテクノクロスは2017年4月、NTTソフトウェアとNTTアイティが合併し、NTTアドバンステクノロジが持っていたメディア処理技術を移管して発足した企業だ。
NTT研究所が研究・開発したAIなどの最先端技術を活用して、ソリューション化。NTTグループのチャネルを活用して販売する仕組みとなっている。
NTTテクノクロスの串間和彦社長は、「グループ各社が持っていた音声や映像などのメディア系技術と、それらを活用したAI技術を1社に結集し、これをお客さまが利用できるソリューションにするのが当社の役割。
また、セキュリティ分野においても実績を持ち、コミュニケーションにおける課題解決や働き方改革といった点でも、当社の各種ソリューションが貢献できる。NTT研究所に最も近い会社であるとともに、技術者集団の会社であり、NTT研究所の研究開発成果をお客さまのビジネス向上に役立てる役割を担う」と語る。
■ContractGate/Monitorを製品化
その同社がブロックチェーン関連製品に取り組んだ背景には、メガバンクや地方銀行、カード会社などの金融分野において、多くのソリューション導入実績を持っており、Fintechへの取り組みを避けて通れなかったことが挙げられる。
また、NTT研究所においてもブロックチェーン技術の研究を進めており、これらの技術を活用できる素地もあった。
「金融分野に限らず、データをセキュアにやり取りする手段がますます重要視されている。そこに最適なのがブロックチェーン技術。金融分野にとらわれずに、さまざまな企業の開発者や管理者、経営層を支援するためのソリューションとして、ContractGateシリーズを製品化した」と語る。
ContractGateの名称には、ブロックチェーンネットワークによって「契約」(Contract)された世界と、アプリケーションを主とする従来の世界をつなぐ「門」(Gate)の役割を果たすソリューションであるという意味を込めたという。
ContractGateシリーズの第1弾として発売した「ContractGate/Monitor」は、ブロッチクチェーンに刻々と取り込まれていくブロックの情報や、ブロック情報に含まれるトランザクションの情報などを、グラフィカルに表示できるソリューション。ブロックチェーン技術に関する知識を持たない人でも、その状況を確認できるのが特徴だ。
具体的には、以下の情報をひとつの画面で表示可能となっている。
・ブロック番号やブロック作成時刻など、最新のブロックに関する情報を表示する「最新ブロック情報」
・ブロックチェーン接続先参加者の状態などを表示する「接続先ノード情報」
・ブロックチェーンに取り込み、確定したブロックをフロー図で表示し、ブロックごとの詳細なブロック情報やブロックに含まれるトランザクション情報のリストを見ることができる「チェーンフロー図」
・ブロック確定時間とトランザクション数、実行されたトランザクションの種別の比率を表す「ブロック確定時間とトランザクション数のチャート図」および「実行されたトランザクションの種別の比率を表す円グラフ」
・接続先参加者にトランザクションが到着した順にトランザクション情報をリストとして表示する「到着トランザクション」
NTTテクノクロス エンタープライズ事業部第一ビジネスユニットの唐澤光彦マネージャーは、「ブロックに書き込まれるのは、16進数のアドレスであったり、取引状況も数値情報などで示されたりというのが一般的であり、開発者や運用者が理解しにくいという課題があった」と、これまでの課題を指摘。
「だがContractGate/Monitorでは、ブロックが生成される様子をリアルタイムにチェーンフロー図に表示し、ブロックがつながっていく様子を可視化できる。また、スマートコントラクトを可視化することも可能であり、どんな機能がいつ実行されたかも可視化できる。スマートコントラクトの関数に対しても、名称を登録しておくことで、その名称を用いてリスト表示可能だ。開発者や運用者だけでなく、経営層に対してもブロックチェーンを理解してもらうためのツールとして活用してもらえる」と、そのメリットを説明する。
ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨で利用される技術として認知されているが、データの改ざんが極めて困難であることに加えて、比較的安価にシステムを構築、運用できるという特性があり、企業活動の基盤として、あるいは社会基盤としての応用にも注目が集まっている。
そのため、一部企業においては、トップダウンでブロックチェーン技術の活用を指示したり、PoC(Proof Of Concept)を開始したりといった動きがみられている。ContractGate/Monitorは、こうした市場の動きを捉えたツールともいえるだろう。
さらには、「実用段階や商用サービスを開始する時点では、これを運用監視ツールとして活用することもできる。現時点では、開発支援や経営層の理解を高めたり、PoCの際に効果を発揮したりできるツールとして提案しているが、次のステップでは運用監視ツールとしての提案も進めていくことになる」とのことで、活用の広がりも期待できるとした。
ContractGate/Monitorの価格は、1端末1ライセンスで50万円から。EthereumおよびHyperledger Fabricに対応している。
■トレーニングなども含めソリューションを強化
同社では、ContractGate/Monitorを第1弾製品として、ContractGateシリーズの製品ラインアップを拡充していく。現時点では、具体的なロードマップは明らかにしていないが、「ブロックチェーン技術に対する課題やユーザーニーズをとらえて製品化を進めていく。2020年にはブロックチェーンがさまざまな業種において本格的に業務導入されることになると予測しており、それに向けて、ラインアップを広げたい」とした。
ContractGateシリーズにおいては、スマートコントラクトの開発を支援する製品の投入に関して、前向きに検討していくことを示した。
また同社では、2017年度から、ブロックチェーンに関するハンズオントレーニングを実施しており、NTTグループを中心にすでに5社が受講した実績がある。1回ありた5人程度を対象に、半日をかけて実施する集中型セミナーで、ブロックチェーンの基礎知識を習得したり、スマートコントラクションの開発を体験したりといったことができる。
「積極的な告知はしていないにも関わらず、NTTグループ以外からも受講希望があったのは想定外。セミナーを開催するためのリソースの問題もあるが、ブロックチェーン技術の導入を検討している企業を対象に展開していきたい」と述べた。
なお、NTTテクノクロスでは、2020年度を最終年度とした中期経営計画に取り組んでおり、同年度の売上高は500億円、営業利益は22億円を目標にしている。「現在、40%強であるNTTグループ以外の売上構成比を、50%に高めたい。先端技術を生かし、高付加価値サービスを社会に提供するとともに、市場競争力を高めることで、さらに強い会社を目指す」(NTTテクノクロスの串間社長)としている。
引用元:Impress Watch
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180510-00000005-impress-sci