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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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2019年01月24日

『帯状疱疹』

『帯状疱疹』

小さい時にかかる 水疱瘡 、大人になって、 寝不足、ストレスなどで体力が落ちた時に帯状疱疹という形で再燃 します。
神経の根っこにウイルスが生き残る。人間の免疫力が落ちた時に勢力を復活させることによって起こります。
神経の走行に従った皮疹、水疱とチクチクした痛みが特徴です。
かかったことがない人が触ると水疱瘡を発症します。
高齢者になって帯状疱疹になると、神経痛が残る人が多いので、 帯状疱疹ワクチン を接種することが薦められ始めました。

帯状疱疹ワクチン:高齢社会での戦略
2018年12月11日 06:15

類を見ない速度で高齢化が進む わが国にとって加齢による疾患発症リスクを最小限にすることが医療には求められている。その意味で 高齢者に対するワクチン接種は有効な戦略 と位置付けられる。

高齢者向けのワクチンとしては 定期接種化された肺炎球菌ワクチン が注目されているが、近年新たに接種可能となったのが 帯状疱疹ワクチン
専門となる皮膚科だけでなく、内科など他科でも患者からの相談が今後増えることが予想されている。
そこで、帯状疱疹ワクチンについて愛知医科大学皮膚科学講座教授の渡辺大輔氏に解説してもらった。

帯状疱疹の患者は右肩上がりで増えている?

 患者3,224例の調査によると、「帯状疱疹」という疾患について「何も知らなかった」が20.7%、「名前だけ知っていた」が38.8%、「ある程度知っていた」が39.7%などとなっており、疾患としての知名度が高いとはいえない現状が明らかになっている(臨床皮膚科 2011; 65: 721-728)。
しかし、渡辺氏は 「年間60万人が発症するといわれ、80歳までに3人に1人がかかる、とても身近な疾患」 と強調する。

 宮崎県皮膚科医会所属の皮膚科46施設で1997年から行われている帯状疱疹の患者調査「宮崎スタディ」では、発症率が1997年には3.61/?1,000人・年だったが2017年には6.07/1,000人・年と68.1%も上昇した。
この20年間に宮崎県の人口は8.3%減少したにもかかわらず、発症数は54.5%も増加していた。

帯状疱疹は身近な疾患であるばかりでなく、患者数が増加し続けている 。また、宮崎スタディでは 帯状疱疹の発症率は70歳代だけでなく、20〜40歳代でも上昇傾向 にあった。

「壮年期に児をもうけるとその児が水痘を発症することで自身が水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に再感染しブースター効果(免疫増強効果)が得られていたが、そうしたライフイベントの減少や核家族化により高齢者が児と同居することが少なくなったなど社会構造の変化が影響している」 と同氏は帯状疱疹の増加理由を説明する。

 2014年に水痘ワクチンが定期接種化されたことの影響も見逃せない。
定期接種化により水痘を発症する小児が激減したためブースター効果が得られにくくなったと考えられる。

?ワクチン接種はなぜ必要か

 帯状疱疹には有効な抗ヘルペスウイルス薬が存在するが、 厄介なのは帯状疱疹後神経痛(PHN)を起こす可能性がある こと。
PHNを発症すると帯状疱疹の皮膚症状が治癒した後も痛みが残存し、患者のQOLを著しく低下させてしまう

香川県小豆郡在住の 50歳以上の住民1万2,522人が参加した前向き調査「小豆島スタディ」ではPHNへの移行率は19.7% だった。PHNへの移行を防ぐことは難しく、また確実に治療する手段も確立していない。高齢な人ほどPHNに移行しやすく、帯状疱疹が重症化しやすいことが分かっている。
PHN以外にも、顔面神経麻痺を主としたラムゼー・ハント症候群、髄膜炎、脳炎・血管炎による脳梗塞などの合併症を起こすリスクが帯状疱疹には潜んでいる。

 渡辺氏は「帯状疱疹ワクチンは発症リスクを低くできるし、発症したとしても重症化が防げる。
リスクが高まる 50歳以降はワクチン接種が望ましい 」と推奨している。
帯状疱疹の治療は皮疹出現後3日以内に抗ヘルペスウイルス薬の投与を開始することが原則 とされており、これが重症化・PHNへの移行を防ぐことにもなるが、患者が自己判断で受診を遅らせるなど実際には早期治療が開始できない場合もある。こうしたケースを防ぐためにもワクチン接種は有効と考えられる。

弱毒生ワクチンに続き?サブユニットワクチンが承認?

 帯状疱疹ワクチンとして現在接種可能なのは、乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」のみになる(表1)。 表1水筒・退場疱疹ワクチンの比較.jpg

「ビケン」は皮下注射の1回接種。「ビケン」と同じOka株から製造されている米国でのワクチン「zostavax」の臨床成績ではあるが、約3年間の追跡で帯状疱疹の発症を51.1%減らし、PHNへの移行を66.5%減らした(図)。 図ワクチン接種による帯状疱疹とPHNの抑制効果.jpg

「接種に当たって注意してほしいのは、弱毒ワクチンである関係からHIV感染者などの免疫不全状態の人に接種ができないこと。こうした不適当者のスクリーニングを確実に行ってほしい」としている。
発熱や妊婦など通常のワクチンでも接種不適当とされる者に加え、表2に示すような免疫が低下している人への接種を行ってはならないとされている。 表2ワクチン接種不適当者.jpg

 まだ臨床での接種はできないが、今年(2018年)承認を受けた帯状疱疹ワクチンに「シングリックス」がある。VZVの糖蛋白に免疫を増強するアジュバントを添加したサブユニットワクチンで、筋肉注射の2回接種。50歳以上の健常者で帯状疱疹の発症を97.2%減らし、PHNへの移行を91%減らした(N Engl J Med 2015; 372: 2087-2096)。
その一方で、第?V相臨床試験では局所性、全身性の副反応が60〜80%に発現しており、副反応が比較的多いことが指摘されている。ただ、重篤な副反応はプラセボと同等だった。

 この2剤の特徴について渡辺氏は「接種回数が異なる。また、ビケンは免疫不全患者などに接種できないが、シングリックスは接種できることが大きな違い。
一方、シングリックスは副反応が割と高い頻度で出現する可能性がある。
ビケンは水痘ワクチンとして30年以上使われており、安全性に関しては蓄積がある」とまとめている。

皮膚科以外の診療科への啓発も大切?

 実際の臨床での帯状疱疹ワクチンの接種率はまだ低い状況にあるという。
帯状疱疹ワクチンの接種対象は50歳以上となっているが、渡辺氏は「50歳は働き盛りなのでワクチンで帯状疱疹の発症リスクを減らしておく方が望ましい。
その年代でワクチンを接種しなかった人でも 70歳以上は重症化しやすくPHNへの移行率も高くなるので、接種を勧めたい
糖尿病など基礎疾患を持つ患者でも帯状疱疹発症リスクは上がるので、接種 しておく方がいい」と接種対象者は広いとしている。

 帯状疱疹に関しては診断と治療でも変化が見られている。簡単にVZV抗原が検出できるキット「デルマクイック」、腎機能低下例での投与量の減量が必要ない、1日1回投与の抗ヘルペスウイルス薬「アメナメビル」が登場し、診断も治療もより行いやすくなった。
こうした状況の中で「帯状疱疹は早期発見・早期治療が原則。かかりつけの内科医などでも典型例は診ることができるので、すぐに治療を開始してもらうことが望ましい。

鑑別に迷う例や重症例、症状が悪化する例、痛みが強い例などは迷わず皮膚科に紹介してほしい」と同氏は言う。
冒頭の帯状疱疹の患者調査では、皮膚科以外の他科受診状況も聞いており、内科、整形外科の受診が多かった。
帯状疱疹の診療では内科などの役割も大きいと考えられ、帯状疱疹ワクチンについても皮膚科以外にも啓発していきたいと同氏は強調している。
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