「性行為中に死亡するリスクとは?」
呼吸器科医 倉原 優 氏が、ケアネット会員のために真面目なのに面白い、そんな医学論文を紹介します。
さて今回は、ちょっぴりオトナな感じの“おどろき”論文を紹介しましょう。
Lange L, et al.
Love Death-A Retrospective and Prospective Follow-Up Mortality Study Over 45 Years.
J Sex Med. 2017;14:1226-1231.
腹上死は男性の憧れ、なんて人もいるかもしれませんが、女性と愛し合っている最中に死ぬなんて残された人間からしてみれば、たまったもんじゃありません。
この論文は、膨大な剖検例のうち、性行為中に死亡した症例を抽出して解析した珍しい研究です。
——— 一体ベッドの上で何が起こったのか。
これはドイツのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学の法医学教室で行われた研究です。
1972年からの45年間におよそ3万8,000例の剖検が行われました。
さて、そのうち性行為中に亡くなった人数はどのくらいだと思いますか?
答えは、99人(0.26%)です。
ちなみに、この中には自慰(マスターベーション)中に死亡した30人も含まれていますのでご注意を。
自慰を性行為と表記していいのか迷うところですが…。
まぁ、それでも残りの人は間違いなく性行為によって死亡しているので、参考にはできそうですね。
同時期に発表された別の研究1)では、心停止4,557人中34人という報告があります。これだと、頻度は0.75%ということになりますね。
全体の1%はいないけれど、思ったよりも結構いるもんだなというのが正直な感想です。
さて、上記99人のうち、8人が女性で91人が男性でした。
ほぼほぼ男性に起こる現象と考えてよさそうですね。
女性の平均年齢は45歳で、男性の平均年齢は57.2歳でした。
死因は、28人が冠動脈疾患、21人が心筋梗塞、17人が再梗塞、12人が脳出血、8人が動脈瘤破裂、8人が心筋症、2人が急性心不全、1人が突然死(原因不明)、1人が心筋炎、1人が心筋梗塞+コカイン中毒でした。
ほとんどの剖検例では、心重量が増加しており、BMIも標準より高かったそうです。
つまり、メタボリックシンドロームを背景にした心臓血管系による死亡が多い、ということです。
性行為中の死亡が多かったのは、主に春夏の暖かい季節で、場所は故人の家であることが多かったそうです。
性行為のパートナーが同定できたケースを見てみると、34人の男性が売春婦との性行為により死亡しており、9人が妻、7人が愛人、4人がライフパートナーという結果でした。
自慰例も含めたデータではありますが、性行為による死亡は、基礎疾患として心血管系に問題がある男性に多いと著者は結論づけています。
それがリスク因子なのかどうかは別の解析をしないと何とも言えないのですが、おそらくリスク因子になるのだろうと私は考えます。
先ほど紹介した同時期の別の研究1)では、性行為関連心停止は、心室細動や心室頻拍が有意に多くみられ、これが死につながった可能性があると考えられています。
参考文献
1)Aro AL, et al. J Am Coll Cardiol. 2017 Oct 30. [Epub ahead of print]
倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏
近畿中央胸部疾患センター
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2018年08月21日
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