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2016年03月06日

希望が丘の梅の花(2010/3/14)(7)「スライドショーにつかうベートーベンのピアノ協奏曲」

b.スライドショーにつかう音楽ってことですけど、

a.締め切りに追われるわけでもないから、6回分をしめくくるスライドショーにつかう音楽について、すこしやり取りしてみよう、

b.で、今回つかうのは、

a.3番の第2楽章、5つのピアノ協奏曲だけでなく、彼が書いたすべての緩徐(かんじょ=テンポのゆったりした)楽章の中でも、トップクラスの深みに達してる、そして、クレンペラーが残したスタジオ録音のなかでもこの3番は最高ランクの名演、この演奏によって初めて3番の値打ちが分かるといっても過言じゃない、

b.ピアノニストは現在、指揮者として活躍中のバレンボイムですが、

a.当時まだ20代の若手ピアニストで、たしか、子供のころにフルトヴェングラーから、その才能を認められてデビューしたんとちがうかなあ、

b.いや、ちょっとちがいますね・・・デビューは8才で、12才のとき両親に連れられてフルトヴェングラーに会って、その才能を認められてます、ところで、フルトヴェングラーってどういう人なんすか、

a.クレンペラーと同じように作曲もする天才指揮者のひとりで、クレンペラー以上に根強いファンがたくさんいてる、「クレンペラーとの対話」からすこし引用してみよう、

「第一次世界大戦前には、ミュンヘンでよくフルトヴェングラーに会ったものです。彼は休暇のときにはいつでもミュンヘンに行き、わたしたちはいっしょに散歩したものです。ある日彼はベートーベンのある交響曲のための彼自身のテンポを、わたしにひいてくれました。それがとてもよかったので、これこそ生まれながらの音楽家だと思ったほどでした。のち(1922年)に彼はライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とベルリン・フィルハーモニーの指揮者として、最高の地位をきわめました。」(212ページより)

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b.しかし、話が古いなあ、それにフルトヴェングラーっていうと、ステレオ録音以前のモノーラルばかり・・・

a.その音質を差し引いても、いまだこの世界から必要とされてる文化遺産ってことや、




b.ところで、ピアノ協奏曲第3番の素晴らしさについて具体的にもうちょっと、

a.その前に、交響曲第2番と第3番「英雄」のあいだには、同じ作曲家とは思えないほど、中身の深さに圧倒的な開きがある、

b.ええ、それは有名な話ですよね、最初はピアニストとして華やかにデビューしたけど、とつぜん聴力が失われていって遺書を書くところまで追い詰められてく、その危機を乗り越えて飛躍的に中身の濃い第3番「英雄」が生まれたと、

a.ピアノ協奏曲第3番は交響曲第2番のつぎに書かれてて、クレンペラー以外の演奏はほとんどすべてが交響曲第2番寄り、クレンペラーだけがこの作品を交響曲第3番寄りに演奏してる、

b.2番寄りってことは、つまりピアニスト寄りの演奏ってこと?

a.そうや、協奏曲の場合は独奏者をメインに立てて、オーケストラはその伴奏って形が多いけど、それだと、作曲家じゃなくピアノ演奏家としてのベートーベンが表立って、初期の作品のような軽めの演奏になってしまう、特に重々しく始まるハ短調の第一楽章にその傾向がハッキリ現れる、その点、クレンペラーの演奏は完全にオーケストラが中心になっていて交響曲のように響くから、この作品を交響曲第3番と同じように聴くことができる、いやもっと踏み込んで言えば、同じハ短調ではじまる交響曲第5番よりも内容が深いとまで思ったりしてる、

b.どういうことすか、一般的な常識では交響曲第5番はクラシック音楽全体の中でも横綱クラスの傑作とされてますが、それより深いとは・・・

a.この頃になると作曲家としてのベートーベンが確立して、曲作りがうまくなると同時に、どことなく芝居じみた深刻さがチラチラしてくる、その点、ピアノ協奏曲第3番は、とくにクレンペラーが残した第1楽章に限ってやけど、人生の危機とマジで格闘するベートーベンが感じられて、音がストレートに心の底までしみこんでくる、

b.ところで、バレンボイムはフルトヴェングラーに私淑(ししゅく=師弟関係はないけど個人的に模範と)してたそうやけど、

a.たぶん、それがあるからこそクレンペラーの遅いテンポにも違和感なく合わせられたんやと思う、20代の若者の演奏と思えないほど、どっしり腰がすわってる、

b.なるほど、じゃ、そういうわけで、ベートーベン作曲ピアノ協奏曲第3番の第2楽章にあわせてスライドショーをお楽しみ下さい、



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