2017/10/7 23:00日本経済新聞 電子版
10日公示—22日投開票の衆院選について日本経済新聞社が調べたところ、7日昼時点で約210の小選挙区で「自民、公明両党の与党」「希望の党と日本維新の会」「共産、立憲民主、社民3党」の3つの勢力の候補者が競合する。289の小選挙区の7割にのぼる。野党再編により3極が争う構図が鮮明になっている。
自民・公明両党は合わせて286選挙区で公認候補を擁立する。希望・維新は東京・大阪などですみ分け、両党が競合するのは22選挙区になる。
共産、立憲民主、社民の3党は230超の選挙区で候補者を一本化した。共産は7日までに小選挙区で擁立していた候補者のうち、立憲民主の枝野幸男代表(埼玉5区)らが出馬する選挙区などで64人を取り下げた。安倍政権に批判的な市民団体「市民連合」を介して連携を強める。市民連合は7日、3党の幹部に選挙協力を求めた。
3極の競合になる約210選挙区のうち、自民・公明、希望・維新、立憲民主が争うのは46選挙区。リベラル勢力が共産候補のみのケースは155選挙区だ。
野党はこれ以上の競合は避けたい考え。希望と立憲民主は40選挙区で競合する。希望は枝野氏らに対抗馬を擁立したが、民進党の前原誠司代表は7日の読売テレビ番組で立憲民主と「協力したい」と述べ、今後は立憲民主の候補者がいる選挙区への擁立は見送る考えを示した
安倍VS小池 不信と打算の二重奏
2017/10/7 23:00日本経済新聞 電子版
「小解説⇒ 阿部=不信 VS 小池=打算」
安倍晋三自民党総裁と、希望の党の代表を務める小池百合子東京都知事。10日公示—22日投開票の衆院選で、強い発信力を持つ2人が激突する。政権選択となる衆院選に向けて互いの批判のトーンは強まる一方、どこかで保険をかけあう姿は変わらない。これまで不信と打算の二重奏を奏でてきた2人。見据えるのは、選挙後の政界図だ。
小池氏は7日、東京・銀座で松井一郎大阪府知事、河村たかし名古屋市長と街頭演説に立った。「消費税の増収分の使い道を衆院選で聞くのはテーマ設定としてどうか」と安倍氏の解散決断を批判。6日にまとめた公約では「アベノミクスで一般国民の好景気の実感はない」と断じた。
小池氏が新党結成を宣言してから繰り返すのは「しがらみ政治からの脱却」。ただ、批判するのは自民党政治であって、安倍氏個人への攻撃は控えているようにみえる。「将来へあらゆる選択肢を残すのが小池氏の手法」と周辺は解説する。
安倍氏はどうか。解散表明時の記者会見では「(小池氏と)安全保障の基本理念は同じ」と指摘。希望の党という党名については「いい響き」だと持ち上げたが、最近は対決色を強めだした。7日の千葉県市川市の街頭演説では「ブームからは未来は生まれない」と語った。
「小池氏への個人攻撃は避ける」「小池氏が国政進出しなければ、党代表なのに首相指名できない無責任な体制を攻める」——。首相周辺は対小池戦略の一端を明かす。
安倍氏と小池氏。保守派であることや、改革への前向き姿勢という意味では共通点が多い。政治家になるまでの経歴は違う。祖父に首相をもつ政治家一家である安倍氏と、元キャスターとしての知名度を生かして政治基盤を築いた小池氏。小池氏が衆院選へのスタンスとして最近よく使う「チャレンジャー」という言葉は、サラブレッドたる首相への対抗心も漂う。
1993年。日本新党の衆院議員だった小池氏は同年8月に発足した非自民の細川内閣のキーマンの一人だった。野党自民党の新人議員だった安倍氏とは対照的だった。
2006年。首相に就いた安倍氏は小池氏を首相補佐官として起用した。「女性政治家で他に適当な人がいなかったため」と周囲は解説する。
昨年の都知事選で、自民党は人選に苦労していた。安倍氏は「まあ、小池さんでもいいじゃないか」と語っていた。だが女房役の菅義偉官房長官らが反対し、小池氏とは別の人を擁立した。「あのとき、官邸がうまく振る舞っていたら、今のようにはならなかった」と安倍氏周辺は悔やむ。
都議選後の7月21日、都内で山口県下関市議らと会食した際に、安倍氏は「小池さんは風を吹かせるのがうまい。敵に回してはいけない」と漏らした。「いやらしさを感じつつも、小池さんの持つひらめき力は評価している」。側近は安倍氏の心境を解説する。
小池氏は5日、都内で記者団に昔話を披露した。「自民党は羽田政権の後、(社会党と)村山政権を担いだことがあった。水と油で手を結ばれたことも思い出した」。22日の投開票後は様々な合従連衡が起こりうる。選挙後について聞かれた安倍氏と小池氏はともに同じ言葉を繰り返す。「選挙結果がどうなるかだ」
(島田学、黒沼晋)
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