記者団の取材に応じる安倍首相(C)共同通信社
安倍内閣支持率微減 この暴政でまだ支持者がいる奇々怪々
公開日:2018/12/18 17:00 更新日:2018/12/18 18:00
日刊ゲンダイDIGITAL
さすがに安倍内閣の支持率が下落している。
共同通信の世論調査では、支持率は4.9ポイント減の42.4%、不支持は4.6ポイント増の44.1%だった。
読売、日経、毎日も傾向は同じだ。いずれも「支持」が減り、「不支持」が急増している。共同と毎日は、支持と不支持が逆転した。
しかし、この内閣にまだ40%も支持があるとは仰天である。トランプ大統領が支持率40%をキープしていることに驚きの声が上がっているが、安倍内閣が4割の支持を得ていることこそ奇々怪々なのではないか。
12月10日に閉会した臨時国会でもやりたい放題だった。「改正入管法」や「改正水道法」を、民意を無視して強行成立させている。外国人労働者の受け入れを拡大する「改正入管法」は、日本社会を大きく変えるのに、「移民政策ではない」とごまかし、データを捏造し、わずか38時間の審議で成立させている。しかも、重要事項の多くは、法成立後に省令で決めるというデタラメぶりだ。
消費税増税の対策も、カネ持ちを優遇しようとしているのだから、どうかしている。逆進性が強い消費税は、低所得者ほど優遇する必要があるのに、高額商品である「住宅」と「自動車」の減税に力を入れているのだから信じられない。ポイント還元5%にしたって、たくさん買い物をする富裕層ほど還元額が大きくなる。そもそもカードを作れない貧困層は恩恵ゼロだ。
かと思えば、護衛艦「いずも」を改修し、「空母」に造りかえることまで決めてしまった。専守防衛を完全に逸脱している。
どうして、これで40%も支持率があるのか、摩訶不思議である。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「最近の安倍首相は、民意を無視することに遠慮がなくなっています。辺野古もあっさり埋め立ててしまった。国民の声に耳を傾け、国民のための政治をやろうという気がない。“改正水道法”だって、狙いは外国の“水メジャー”を儲けさせるためでしょう。それでも4割も支持があるのは、本当の意味で国民が安倍内閣の実態を分かっていないからではないか。そうとしか思えません」
そもそも、国民の暮らしは、少しも良くなっていないはずだ。
読売の調査でも、景気回復を「実感していない」が70%に達している。圧倒的多数が苦しい生活を送っているのに、4割も支持しているのは、どう考えてもおかしい。
しかも、どこまで国民が理解しているのか分からないが、来年、日本が大変な不況に突入することは確実である。
来年「米中貿易戦争」が本格化するのは間違いない。年明けには「日米FTA交渉」がスタートし、日本は円安の是正を迫られる可能性が高い。
日本銀行でさえ、12月の「日銀短観」で来年の景気悪化を警告している。3カ月先の見通しを示す「先行き指数」が、大企業、中小企業とも、大幅な悪化を示しているのだ。
ここまで悪政がつづいたら、支持率下落どころか、普通はフランスのように大規模デモが起こるのが当たり前なのではないか。
実際、フランスのマクロン大統領と安倍首相は、やっていることがまったく同じだ。
マクロン大統領は、就任以来、企業が労働者を解雇しやすくする労働法改正、富裕税廃止、法人税減税……と、大企業と富裕層だけを優遇してきた。その一方、来年1月から庶民を直撃する「燃料税」を増税しようとした。さすがに、怒った庶民が立ち上がったのが、今回の「黄色いベスト」運動である。すでにデモは5週連続で行われ、フランス全土で14万人が参加している。
国民の強い怒りを知ったマクロン大統領は、「燃料税」の引き上げを撤回し、最低賃金のアップや、残業代の非課税など、慌てて譲歩策を発表している。それでもフランス国民は「カネ持ちのための大統領、マクロンは辞めろ」とデモをつづけている。
ところが、日本では大規模デモの予兆さえないのだから大違いもいいところだ。
「日本国民とフランス国民は、置かれた状況がよく似ています。マクロン大統領も、安倍首相と同じように企業活動を最優先してきた。マクロン本人も自覚があるのでしょう。『国民の皆さんのことを最優先してこなかった印象を与えたかもしれない』と謝罪しています」(五十嵐仁氏=前出)
国民を軽視してきたマクロン大統領は、庶民の怒りを買い、どんどん追い込まれている。
■強権政治をヨイショし真相を隠す大新聞
どうして、フランスでは庶民が立ち上がり、5週間もデモがつづいているのに、日本では大規模デモが起きないのか。
日米FTA、改正水道法、辺野古埋め立て、カネ持ち優遇……と、安倍内閣のやっていることは、確実に庶民の暮らしを破壊している。
もはや、右も左も、男も女も、若者も老人も関係ないはずだ。実際、フランスでは、右翼勢力も左翼勢力も「黄色いベスト」運動に参加している。庶民の暮らしが破壊されているのだから当たり前だ。
なのに、日本ではいまだに4割が安倍内閣を支持しているのだから、どうにもならない。それもこれも、すべて大マスコミの責任だ。安倍政権がどんなに悪政をつづけても、NHKを筆頭にヨイショ報道に明け暮れているのだから話にならない。
世論調査の結果を伝えた日経新聞の大見出しは、「支持率下落」ではなく、「中国製品排除<評価>61%」だったのだから信じられない。いくらなんでもヨイショが過ぎる。大手メディアは、消費税増税の対策がいかに不公平なものかも伝えようとしない。
これでは、国民が安倍政治の実態に目がいかないのも当然である。普通の国民は、自分の生活に精いっぱいで、メディアが伝えなければ、真相を分かるはずがない。
政治評論家の森田実氏が言う。
「フランスの“黄色いベスト”運動は、約60年前、岸政権を退陣に追い込んだ“学生運動”を彷彿させます。あの時の成果は、岸政権を倒したことと、政府の政策を百八十度変えさせたことです。後任の池田内閣は、所得倍増を掲げ、庶民に向き合う態度を示さざるを得なかった。マクロン大統領も方針を変えています。学生運動が大きなうねりとなったのは、やはりメディアの後押しがあったからです。あの頃までは、大新聞テレビの記者も、岸内閣のような国民を無視する政府には批判的でした。強権政治と対峙する気概があった。ところが、いまや大手メディアは、政権の手先になっている。安倍政権の実態を分かっているくせに報じようとしない。これでは国民に火はつきませんよ」
大手メディアの世論調査をみると、国民は安倍内閣の政策にことごとく「反対」している。「改正入管法」「水道事業の民営化」「ポイント還元」「いずもの空母化」……と、すべて「反対」が上回っている。
それでも4割が安倍内閣を支持しているのは、誰が考えたっておかしい。
このまま大新聞テレビは、メディアの役割を放棄するつもりなのか。どうして安倍内閣の実態を伝えないのか。大手メディアの真相隠蔽は目に余る。
タグ: 阿部暴政
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