日刊ゲンダイDIGITAL 2017/7/6
本当に自殺や心中? 見逃される「他殺体」 は 年間100人も
先月初旬、妻と2人の子供を殺害したとして逮捕された福岡県警の警察官は、犯行を否認する一方、「妻と不仲だった」と供述している。子供たちの殺害についてはいまだ謎のままだが、県警は事件の発覚当初、「無理心中の可能性がある」と発表していた。司法解剖の結果、妻も殺害されていたことが判明したが、 他殺の可能性がありながら「自殺」や「無理心中」として処理されることは珍しくないという。
警察庁の統計(2013年度)によると、警察に届け出された死体16万9047体(事故や震災死除く)のうち、犯罪死体は514体で、犯罪に巻き込まれた可能性がある変死体は2万339体だった。しかし、司法解剖された死体は8356体にとどまる。 怪しくても、すべて解剖できないのが現実だ 。
「日本では毎年120万人くらい亡くなっていますが、 少なくとも100人程度の他殺は事故や自殺として処理されていると考えられます。 変死体の場合は検視官の立ち会いで事件性の有無を確認しますが、解剖医の数が足りなくて手が回らない。司法解剖の予算の面でも厳しい状態です。また、検視官は事件のあった所轄警察からの要請で出動するのですが、第1次捜査を行う警察署員が無理心中と判断すれば、出動することもなく犯罪を見逃してしまうのです」(中国・長沙民政職業技術学院教授の伊藤茂氏=遺体管理学)
第1次捜査で、高齢者が風呂場で死んだら「病死」と判断されるのは珍しくない。空き家の白骨死体などは「変死体」と判断されても死因特定が難しいという。
「検視も早過ぎると真実を見逃すことがあります。絞殺の症状は遅延性で、圧迫痕やうっ血は1日以上置いてから出てくることがある。早い段階で火葬されたらそこで終わり。死亡推定時刻の偽装も簡単で、米国は肝臓の温度から判定しますが、日本では肛門で測ります。肛門に冷たい鉄の棒でも入れたら時間は調節できるし、毒物注射を足の親指と第2指の間や髪の毛の間にしたら見逃される可能性が高い」(伊藤茂氏)
連続不審死の容疑で、死刑判決が確定した木嶋佳苗被告や上田美由紀被告も、犯行が明るみに出るまで、何人もの男性が“自殺”や“事故死”で処理されてきた。遺族にはやりきれない話だ。
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