写真日経電子版・2020/10/06武田良太総務相は「固定電話の時代とは環境が違う」と語る
総務省「携帯値下げ、決断を」 ドコモ完全子会社化容認
ルポ迫真 経済 2020/10/5 23:00 (2020/10/6 5:12更新)日本経済新聞 電子版
9月29日、NTTがNTTドコモの完全子会社化を発表すると総務省内がざわついた。「何をやっているんだ」。幹部のもとにはOBから怒気をはらんだ電話がかかってきた。旧郵政省時代の伝統からすればNTTグループの再結集は反動に映る。
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1985年の旧日本電信電話公社の民営化以降、政府は固定電話市場で圧倒的なNTTの支配力を抑えることに心血を注いできた。92年のドコモ分割や99年の持ち株会社発足の際には、共同調達を禁じた経緯もある。
政府はNTT株の3分の1以上を保有し、総務相が取締役の選任を認可する。NTT法が定める国の権限はここまでだ。グループの再編に形式上、待ったをかけられる立場にはない。今回は口を挟んだ形跡さえない。
旧郵政省組のトップに立つ総務審議官の谷脇康彦は業界との対立をいとわない豪腕で鳴らしてきた。首相の菅義偉が総務相だった際は課長で、2007年には携帯料金と端末価格の分離プランの導入を打ち出した。菅の看板政策である携帯値下げの今に至る源流だ。当時は「谷脇不況」との言葉まで生まれた。
その谷脇が静観を貫いた。NTTは持ち株会社化の際に課長補佐として「ワープロで政府の再編方針をつくった」という因縁の相手。今回の動きも7月には報告を受けていた。
かつてとは環境が異なる。めざましい成長を遂げる海外のIT(情報技術)大手との差は開くばかり。「グループ内で人材や研究開発資源が重複してムダが多い」との不満も政府内でくすぶる。さらに「NTTが携帯値下げにつながる可能性を示唆したことが再結集の容認につながった」と関係者は証言する。
「固定電話が圧倒的に多かった時代と、ここまで携帯が普及した時代では環境が違う」。総務相の武田良太は29日の記者会見で完全子会社化をあっさり是認した。
菅は首相就任後、NTT側に「海外で戦うべきだ」と伝えている。国内の寡占環境に甘えていては先はないとみるからだ。流れは決していた。10月2日、武田が一段の値下げに向けて携帯大手や消費者の意見を聞く考えを説明すると、菅は「対応は任せます」と淡々と応じた。
再結集でグローバルな競争力を高め、消費者に利益を還元できるか。今、谷脇は周辺にこう語っている。「携帯の値下げは早くご決断を」(敬称略)
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