携帯電話料金 少しの間目が離せません。楽天の追い上げ、以下です。日経電子版。
携帯料金「データ小容量、ゼロでいい」 踏み込んだ楽天
携帯値下げ攻防戦(1)菅内閣 携帯料金見直し 5G ルポ迫真 Think! ネット・IT サービス・食品 2021/2/22 0:00日本経済新聞 電子版
「料金はゼロでいい。自分が責任をとる」。1月下旬、楽天本社で携帯電話の新料金の議論が過熱していた。NTTドコモなどが打ち出したデータ容量20ギガ(ギガは10億)バイトで月2980円の新プランにどう対抗するのか。会長兼社長の三木谷浩史は値下げに慎重な意見を一蹴。1ギガバイトまで無料という業界の常識を破るプランが生まれた。
1月29日の新プラン発表会。三木谷は「全ての人に最適にした」と強調した。データ使用量に応じて料金が決まり、20ギガバイトまでならドコモより1000円安い。大手が手をつけなかった、10ギガバイト未満の小容量の値下げにも踏み込んだ。「どの携帯会社を選ぶか」というネットアンケート(19日時点)で首位ドコモに迫り、値下げ発表の最後尾から一気に追い上げた。
携帯料金引き下げを目標に掲げたのは当時内閣官房長官の菅義偉だ。楽天はその方針に呼応するように2020年4月、価格破壊者として携帯電話に参入した。料金をデータ無制限で月2980円に設定。テレビCMで「日本のスマホ代は高すぎる」と訴え、開始から3カ月後の申し込み件数は100万件を超えた。
流れを変えたのは菅自身だった。新政権が発足すると、政府は大手に直接値下げを迫る方針に転換した。大手を攻め立てていた楽天は一転して大手の攻勢を受ける立場に追い込まれた。
「官製値下げ」の攻防戦で主導権を握ったのは、格安携帯への顧客流出でこれまで守勢に回っていたドコモだ。親会社のNTTによる完全子会社化の手続きで身動きの取れないドコモを横目に、KDDIとソフトバンクが20年10月に先行してサブブランドでの値下げを発表した。総務相の武田良太は当初評価したが、11月に「主力ブランドでの値下げがない」と批判に転じた。「総理が『サブだけの値下げかよ』と不満を示したからだ」(総務省幹部)
ドコモは楽天が参入した20年4月ごろから水面下で割安なサブブランドの設計を進めていたが、急きょ主力での値下げに転換。12月の社長就任が決まっていた井伊基之は「安さが売りの楽天をかすませろ。価格破壊でこれまで流出した顧客を取り戻せ」と檄(げき)を飛ばした。12月3日に発表した「アハモ」は先行2社より約1500円安く、最安値をアピールする楽天をけん制した。
ドコモは楽天と因縁がある。ネット通販などサービス拡大のため楽天に連携を呼びかけたが、条件が合わず合意寸前で破談となった過去がある。「楽天の好きにはさせない」(ドコモ幹部)との思いを料金に反映した。
ドコモの動きに応じてソフトバンクとKDDIは主力ブランドで同水準の値下げを発表。海外と比べて割高とされていた20ギガバイトの料金は5000円以下の合格ラインを達成した。総務省幹部は「劇的な変化だ。政権の意向とスピード感が相まって大きなパワーになった」と一定の評価をする。
通信各社はこぞって「これ以上の値下げは会社の体力が低下する。(高速通信規格の)5Gの基地局整備など成長投資の余力がなくなる」と話すが、なお値下げの余地はありそうだ。
値下げをリードしたドコモの井伊にはさらなる価格競争の腹案があった。楽天のようにデータ利用量に応じて料金が決まり、5Gを4Gより安くするサプライズを用意していた。今後の可能性として、データ容量の追加や小容量の値下げも選択肢として残る。
基地局の先行投資で20年12月期に1141億円の最終赤字だった楽天。値下げで利用者1人当たりの収入が低下するが、三木谷は「料金で差をつけ、契約数を想定より増やせば良い」と意に介さない。2100万人を抱える楽天カードの会員に対して、ポイント付与で携帯の利用を促し、「グループの総力戦で勝つ」(楽天幹部)とのシナリオを描く。
ドコモが仕掛けた値下げ攻防戦は楽天まで波及した。だが6割の消費者が使う小容量プランは大手3社とも主力ブランドで手つかずのままだ。各社の新プランがそろう3月以降も消費者の動向次第では再び値下げ競争が動き出す可能性がある。(敬称略)
菅政権発足からわずか半年で実現した携帯料金の大幅値下げ。その内幕に迫る。
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