神奈川 90
秋田 90
堂本は、怒鳴った。
堂本「何をしている。インターハイの悔しさを忘れたのかっ!!」
これが堂本の持ち味だった。
常勝山王工業を率いているため落ち着いた名将ととらえられているが、実際は、選手たちに年齢も近く、熱血漢である。
堂本の心は熱く煮えたぎっていた。山王の歴史の中でも最強と考えているこのチームで2回も敗北などは許されないのだ。
選手たちもそんな堂本を尊敬していた。堂本の期待に応えるべく、何をすべきかを考えていた。
松本「三井の奴が調子に乗ってやがる。アイツを調子の乗せすぎると夏の二の舞になってしまうぞ。」
一ノ倉「・・・。必ず止めてやる。ここまできて、ひっくり返されてたまるか。」
深津「落ち着くピョン。まだ同点だピョン。」
河田「面白れぇ試合になってきた。ここまで楽しい試合は、インターハイ以来だな。」
次の瞬間、堂本は落ち着いていた。この切り替えの早さが堂本のすごいところだ。
堂本「残り時間1分。同点に追いついたから、マンツーマンで来ないと思うか?
アイツらは攻めてくる。もう一度マンツーマンを仕掛けてくるぞ。
そこでだ・・・。」
堂本は、声を潜めて、メンバーに作戦を伝えた。
一方、神奈川ベンチは、盛り上がっていた。
三井「行ける。行けるぞ。」
清田「さすが、牧さんっス。あそこで深津を止めて流れを呼び込んだー。」
彦一「さすがやー。仙道さん、イカすわー。あのパスカットは天才やわー。」
仙道「ふぅーー。さすがにしんどい。」
三井「ナイスパスカットだ。もうひと踏ん張りしてくれよ。
そして最後にオレを輝かせてくれ。」
牧「最後に三井が輝くかどうかは置いといて、ここまで来たら負けるわけにはいかないな。」
高頭「当たり前だ。ここからは一つのミスも許されんぞ。(しかし、この状況でヒーローになろうとしているのは無神経なのか頼もしいのかわからんな。)。」
桜木も声をからしていた。
桜木「ゴリーーー!勝つんだろう!ヤマオウに勝つんだろうっ!」
赤木「ふっ!アイツめ。」
流川もこぶしを握り締めていた。自分がでれないことが何より悔しかったが、それ以上に勝ってほしい気持ちが強かった。
バラバラだった神奈川のチームが今やっと一丸になっていた。
高頭は一つの作戦を選手に伝えた。
弥生「そろそろ時間ね。」
中村「どっちが勝ちますかね?」
弥生「決まっているわ。気持ちが強い方よ。勝ちたい気持ちが。」
中村「(だからそれがどっちかって聞いているのに・・・。)」
弥生「なにっ!心の声が聞こえたわよ。しかし、ここからは作戦も重要ね。」
試合が再開された。
神奈川がマンツーマンを仕掛けようとしたが、ボールを入れるのがなんと野辺。
野辺「いくぞーーーーー。」
その声を聴いて自コート手前にいた河田が一気に神奈川ゴールに向けて凄まじいスピードで走り出した。
虚を突かれて、赤木のスタートが遅れた。
花形も一瞬、野辺のマークが遅れた。
その隙をついて、野辺がロングスローを河田に入れた。
河田のスタミナ・スピードいずれも限界知らずだった。
試合終盤のセンターのスピードではなかった。
懸命に走る赤木を尻目に無情にもボールはものすごいスピードで河田へ渡った。
河田「悪いな。走りっこなら負けねぇ。」
そういいながらシュート体制に入った。そこへ懸命に仙道が戻ってきた。
しかし、それでも、松本のマークをしていた仙道が追いつくには無理があった。
マンツーマンは破られるともろいのだ。
あっという間に秋田がゴールを決めた。
堂本は、赤木の瞬発力より河田の瞬発力の方が優れていると考えたのだ。
マンツーマンは局地戦。勝てるところで確実に勝つという堂本の作戦勝ちだった。
神奈川 90
秋田 92
(続く)
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