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2005年11月06日
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カテゴリ: 雑感
今年の秋は雨が多い。晴天の日が多い「特異日」とされる10月10日も、今年は雨だった。やはり特異日にあたる11月3日の朝も雨がぱらついていたが、それでも昼近くなると青空がひろがり、どうにか久しぶりの秋晴れという感じになってきた。ガラスをふんだんに使った病院の新館の建物は陽光をいっぱいに反射して、遠くからでもその存在を誇示している。バスの窓からそれが見え始めると、いつも憂鬱になる。

日一日と悪化していく父の病状といつか来るその日。いつものように病棟の玄関から入り病室に向う。祝日のせいか看護婦の数は少ないようだ。もちろん患者には平日も祝日もなく、たえまなく鳴るナースコールに看護婦さん達は休むまもなくかけまわっている。あのナースコールの中には父のものはない。4日前に病状が悪化して以来、父は、自力でナースコールを圧すこともできなくなっている。病室に入った時、父はよく眠っていた。でも、本当に眠っていたのだろうか。脳に転移した腫瘍についての放射線治療を休止したため、脳も次第に冒されている。寝ているというよりも、意識不明といった方がよいのかもしれない。看護婦さんが痰をとりに来てくれても、父の反応はない。おととい病院に泊まったときにも、夜中に何度も看護婦さんが痰をとりにきてくれたが、その時には「絶対にいやだ」「だめだ」という父の声が聞こえたのに。枕もとに置かれたいくつもの機械や酸素吸入や点滴のチューブをみると、顔の前に近づくことも出来ず、ただ背中にふれるしかないが、反応はなく、たぶん私が来たこともわからないのだろう。
※ 
仕方なく隅の椅子に腰掛け、窓の外を眺める。穏やかな秋の休日。ほとんどの人にとっては、なんてこともない一日なのだが、私にとっては違う。これが生きている父といられる最後の機会になるかもしれない。話すことも出来ず、意識もなくなっていても、父はまだ「生きて」いる。生きているというだけで、やはり違う。呼吸をするたびに、父の背中は大きく波打っている。もともと父は背の高い方だったが、病気になってからは、すっかり小さくなり、全身の老化も急速に進んだようだ。入院してから残っていた歯も全部抜け、目も耳も急速に悪くなっている。空はすっかり透明な秋晴れの空。もし、魂が抜けたら、あの空一杯に吸い込まれていくのだろうか。人は、着古した服を着替えるように、老いた肉体を棄て、やがてまた新しく生まれ変わっていく…そんなことも、もしかしたらあるのかもしれない。いや、あったらよいと、今は心からそう思う。
(父はなくなりました。これからときどき父の話なども書いてみたいと思います。)





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最終更新日  2005年11月06日 08時28分06秒
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