【不眠症カフェ】 Insomnia Cafe

【不眠症カフェ】 Insomnia Cafe

2008.08.07
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私は最近、ベトナムを再訪した
数十年のインターバルをおいての再訪である

回想の中の街と再訪した現在のリアルな街は同じではない
昨年、久しぶりに東京へ行って、二週間ほど滞在した
その間に早稲田を訪問してみた
卒業以来、二度目の訪問である
ちょうど入試が行われていた日で、キャンパスの中に入れなかった
私の学部や図書館に入ってみたかったが叶わなかった
吉永小百合を見かけた教育学部にも入ってみたかったが叶わなかった(冗談である)
大隈老侯の銅像も小雨の中、遠望したに過ぎない
それも残念だったが、それにもまして失望したのが、大学周辺である

JR高田馬場駅を下車したら、早大正門前までのバスの乗り場がどこなのかわからない
駅前に高層ビルが林立していて、風景が全く変わってしまっている
やっと乗ったバスの料金が高い
昔は往復で15円だったのに・・・(これは私が強欲である)
大学までの途上、バスの窓から見る沿道の風景が全く変わっている
見覚えのある風景が全く無いのである
いや、一カ所だけあった
インド大使館である
街というものは変貌するものだな~とつくづく思った

キャンパスに入れないので、裏門周辺を散策してみた
ここも大変貌である
よく入った定食屋も無くなっている
それに他の店も入試で大学生が来ないから店を閉めている
やっと韓国食堂!を見つけた
学生相手の定食屋にも韓流が入り込んでいるのだ
入ってみると店員は中国人、出た料理は韓国料理とは言えないような代物である
結局見覚えのある店は裏門脇の制帽を売っている店だけである
私はここであの特徴のある角帽を買ったのだが、あの角帽の行方など、今となってはまったくわからない(笑)
人間というものは一生をかけて実に様々なものを買うもので、その総量たるや、ものすごいはずだ
が、ふと気がつくと、まだ身近に、手元にあるものなど、ほんのわずかなのである
長い人生のどこかで、捨てたり、整理したり、置き忘れたりしてきたのだろうとは思う
人間が環境破壊の生物であるところが、こういうところにも・・・
いや、都市変貌の話であった
まあ、こういう話はいいか

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サイゴンは昔、フランスの植民地だった
フランス人が作った街である
街全体にフランスの旧植民地の街に共通した、独特の、瀟洒な、垢抜けた風情が残っていた
ひらたく言えば、おしゃれでハイカラな雰囲気である
私のいた頃は、通りには背が高い大きな、緑が深い街路樹がうっそうと繁っていた
火炎樹、タマリンドという名の街路樹だと思う
タマリンドの緑に映える路をアオザイの裾をひるがえした佳人が、薫風にそよぐように行く
大げさでなく、そういう街だったのである
シクロのおっちゃんが陰のように行き過ぎても優雅に思う
そういう街だったのである

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話が少しズレるが、大学で仏文を専攻した仏文出身の日本人作家というグループがある
仏文作家・・・とでも仮称してみようか?
仏文作家は、仏文、フランス文学を専攻して作家活動をする
そうすると、どうしても自分の専攻したフランス文学の色合いが描写としてにじみ出る

私からするとフランスは正に印象派の世界である
フランスの陽光は明るいだけではない
明るいだけなら、スペインのギラギラした陽光もある
闘牛の血をすぐに吸いつくすような乾いた大地に濃い影をくっきりと刻む
T・S・エリオットが「四月は残酷な月である」と書いたが、スペインの光は残酷な光である
色彩は重く暗い

それに対してフランスの光はきらめきながらも明るくやさしい
それに色がすごい
色彩を100%色彩として生かす
ちょっと古いが、映画で言えば総天然色である
色彩の魔術である

ルノアール、マネ、モネ・・・
印象派に見るフランスの色彩と光は、ディファクト・スタンダードと言っていい
鮮やかすぎないが、もちろん、くすんではいない

まあ、いろんなことを言ったが、こういう風土に育まれたフランス人は視覚に優れていると思う
美術に秀でた民族である
そのフランス人の書く小説も色彩感が鋭い
特にカミュなどは・・・
カミュは対岸のアフリカのマグレブの一角、アルジェリア出身だから、ちょっとスペイン的な強い光かもしれないが
・・・他はよく知らないのである
サルトルには、それほど色彩感を感じない
サルトルはちょっと目が悪いからな~
あ いけない いけない

本場フランスの作家達の色彩感に関して書こうと思ったが、気がついたら私はそれほど理論武装していなかった
しかし、日本の仏文作家に関してはかなり言えるぞ
開高健である
福永武彦である
・・・ ううっ!
他が出て来ない

では詩人である
堀口大学である
・・・ ううっ!
他が出て来ない

堀口大学は平気ですごくエロティックな詩を書いているな~
これは本題ではない
堀口大学と画家のマリー・ローランサンは恋人同士だった
これを知っている人はどれだけいるだろう?

話が回り道をしているが
仏文作家に共通するのはその文体の洗練と色彩感である
特に色彩感である
あるとき、友人のひとりが私に福永武彦の本(おそらく「廃市」かな?)をチラッと見せて、「この作家、だれかわかるか?」と聞いてきた
その友人は、読書会などに出ている【不健康】な人間だったが、私に文学に強いところを見せつけようとしたのだ
「だれかはわからないけれど、これは仏文出身の作家だね」と私は答えた
文体の色彩感が「仏文」だったからである
その友人は驚いたらしくて、それ以降、私を少しは認めるようになった
ここでちょっとした自慢をはさんでおく

要するに「フランス文化」の洗練と色彩感は、植民地にも反映している
それは英国のボンベイやシンガポールとも、
ドイツの青島とも、
ポルトガルのマカオとも、
スペインのマニラとも、
ロシアの大連とも、
オランダのジャカルタとも、
ちがっている
「フランス」の旧植民地そのものである
フランスの女は、例えしろうとでも、何でも・・・しそうな・・・色気がある
パリでそう感じた
清純な(に見える)少女でも、かんたんに男と寝る
映画を見て、そう感じた

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今回、そのサイゴンを数十年ぶりに「再訪」した
そうして、サイゴンの変貌ぶりに失望した

深夜到着したホーチミン(サイゴン)
空港から市内のホテルまでの途上
全く街並みに見覚えがない
現在どこを走っているのかもわからないのである
この空港から街への変貌ぶりは、サイゴンを再訪した誰かが書いて居たとおりである

しかし・・・、あれほどおしゃれな、フランス風の瀟洒な風情の街並みだったのに、今のサイゴンはせかせかした、薄汚いだけの街になってしまっていた
火炎樹の、タマリンドのうっそうとした街路樹もかなり切り倒されてしまっていて、街の見通しはよくなったが、その街路を軍隊アリの大群のような、洪水のようなバイクの群れがブンブンとうなりながら流れ続けている

なんだか、昔日の面影はないが落ちぶれたりとはいえ一応色香を残したマダム・・・の様な風情だったサイゴンが変わってしまった
生活力はあるが、ガサガサした、生活にやつれた、パートの仕事で走り回る「おかみさん」に変貌してしまったような感じである
(パートに出てるみなさん 失礼いたしました _| ̄|○ )

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ベトナムの人々は、見かけによらず強靱な精神力を持っている
原点が原点だからダメモトで、あきらめがいい
私たちにとってはひどく痛いことでも、あきらめる
1000年の中国、100年のフランス、それに続く日本、英国の占領、さらにベトナム戦争
そういう苦難の歴史を通して意のままにならない人生を悟っているのかもしれない
あきらめた後は前向きに働く
それに第一、明るい
どんな状況においてもその明るさを失わない
だから、客観的に見て閉塞状態のサイゴンの街が退廃的ではあっても極めて活気のある街に見えたのだと思う

気候も少しは暑いが、長距離を歩くのでなければ、街歩き程度なら、快適で素晴らしいと言える
中東のような人間の生存を許さないようなサディスティックな気候風土ではない
おだやかな亜熱帯と言うところだろう
台湾あたりの気候と似ているのではないだろうか?
ハノイには一応、四季のようなものがあるという
私が住んだ南のサイゴンでも、日本のような寒い冬は無い
しかし、旧正月の頃には、背広を着てもちょうどいいぐらいの温度にはなる
それに、何にもまして、食べ物がおいしい

ヴィエトナム料理はこの頃日本でもよく食されるようになった(らしい)
近隣のタイの辛い料理に比べると日本人好みのあっさりした薄味である
といいながら、私はそのタイ料理を食べたことがないの
悪質である

それに多民族国家で、よかれ悪しかれ隣国諸国といろんな!関係があったおかげで、ヴァラエティーに富んだ料理になっている
中国の広東料理を土俗的にエスニックにしたようなものと言えばいいだろうか
ただ、正直に言うと、「ベトナム料理がおいしい、すきだ」というわりには、私はこのサイゴン駐在中にそれほどベトナム料理を食べたわけではない
これも悪質である

宿舎での食事はベトナム人のおばさんがコックとして作ってくれた
ただ、そのおばさんが作ってくれるのは今から思えば、純粋のベトナム料理ではない
よく思い出さないのだが、なんだか各国混合の料理のようだった
旦那さんが元日本軍人で戦後ベトナムに残留した人だから日本料理の要素もあった
それにわれわれの希望もあって日本風でもあった

ただ、このおばさんの作る料理をへたにほめてはいけない
ある料理を「おいしい」とほめると、翌日からずっと連続してその料理が出てくるのである
日本人は、毎日メニューが変わるのが当たり前と思っているが、世界各国、必ずしもそうではない

たとえば、ドイツとか東欧では(たぶん北欧諸国でもそうだろうと思うのだが)夕食は簡素である
サラミとチーズにパン、それにちょっとの野菜
そんなものである
簡素な上にメニューがほぼ決まっているのである
パーティーや来客などのハレの場でなければ、夕食はこんなものである
朝食も同じように簡素で、同じメニューである
それでもこの頃は少し変わってきているらしいが、基本的には日本のように夕食が量が多いメインの食事で豪華版という事がない
メインはむしろ昼食なのだが、会社勤めの人は、会社の食堂で食べるから、それほど豪華版は望めない
欧州のゲルマン系の人たちというのは、ふだんは私達が思い込んでいるほどの大食漢ではない
こんな食事でどうしてあの巨体が保てるのか?不思議に思う
(ただしパーティーなどに出席した時などは、日頃の貧食?小食ぶりとは正反対に、腹一杯に詰め込む
やはりその時の食事量はハンパでなくて、とても日本人はかなわない

ただし、同じ欧州の白人でもラテン系はちがう
何しろ、食事とセックスが生きがいという人たちだから・・・
どうちがうって、あまりよく知らないのだが・・・
昼飯なども時間をやたらにかけてワインなどを飲んで、まったく・・・
まあ、よく知らないのだが・・・

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ベトナムではベトナム料理以外の外国料理がすばらしかった
ベトナムを1000年もの間、奴隷のように締め上げた中国の中華料理
それにベトナムを100年もの間、虐げたフランスのフランス料理
それぞれ本場物より上ではないかといううまさである

サイゴンのフレンチレストランについては昨日書いたから省略しよう
ただ、昔は、フランス料理を食べ終わったら、チーズの盛り合わせとチョコレートとクァントローを楽しんだ
パリでそれを頼んだらヘンな顔をされて、ヘンなものが出てきた
田舎ものめ!
いや、逆なのかな?
それとも、もうオールドファッションな風習なのかもしれない





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最終更新日  2008.08.07 09:17:39
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