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2008.12.04

ビッグ・スリーはもう死んでいる　その２

(7)

テーマ：考えたこと　想い出したこと　読んだ本(431)

カテゴリ： 🔴 【ニュース・時事・政治・経済・社会】

「ビッグ・スリーはもう死んでいる」という記事を先日書いた

今日はその続きである
というか、その記事の「中心」がまちがっていたと言うことを書く

　　　　　　　――――　◇　――――

その先日の記事の中で私は、研究開発費は膨大な資金が必要で、ビッグ・スリーにはもうその資金の余裕が無いから、蘇生は不可能であると書いた

しかし、私がこの記事で引用した情報の中で、下記の記述があるのである
～～～～～～～～～
　一方、民主党のレビン上院議員（ミシガン州）ら、米自動車産業の拠点が集結する中西部各州選出の超党派議員団は同日、低燃費車増産を目的に議会ですでに承認された２５０億ドルの低利融資制度を転用してビッグスリーに緊急融資する妥協案をまとめた
～～～～～～～～～

私は、この部分を引用しながら見逃してしまったのだが、このようにビッグ・スリーは「省エネ・カー開発支援」という名目で250億ドルの緊急融資を受けることが決まり、すでにブッシュ大統領も法案にサイン済みである

250億ドルと言えば、換算レートにもよるが、邦貨2兆5千万円前後だろうか？
これは大金である
これなら、ビッグ・スリー救済に充分な資金ではないか？と思う向きもあるだろう
しかし、そんなに簡単な問題ではないと言うのが私の意見である

　　　　　　　――――　◇　――――

この法案の内容を英語のネットまで検索して探してみたのだが、何しろ英語のインターネットの情報量はとてつもなく多くて、とても目標の情報にたどり着かなかった
と言うことで、この融資の詳細な内容の解明はあきらめて話を進める

この融資を受ける資格があるのは、ビッグ・スリーをはじめとする自動車メーカーと、その周辺製造産業全てである
となると、それほど潤沢な資金とも言えない

それに、この融資を使って省エネカー開発にいそしんでも、その効果が出るのは相当先の話である
R&D、つまり研究開発というものは、たんなる金の集積ではなく、営々と築き上げた研究成果である
さらに人材が育っているか否かの問題でもある

自動車業界としては、燃費の改良だけでなく、環境にも優しいと言うポイントも克服しなければいけない
ガソリンエンジンの燃費を改良すればいいと言う簡単なものではない
本来は電気自動車、水素自動車、その他のハイブリットカーも研究しなければいけない
環境問題に関する充分な情報をも必要とする、裾野が非常に広い分野なのである
それに医薬品も似たようなものだが、研究開発で新薬候補が出来上がっても、その試用とさらなる改良に時間がかかる
金が借りれたからすぐさま、日本車に勝てるような優秀なエコカーが生産できるわけではない
長いリードタイムが必要となる

さて、エコカー開発は事件をかければある程度可能としても、その長い開発期間の間、メーカー本体は安泰なのか？
大不況の影響で、金融収縮(銀行の貸し渋り)の影響で、米国民が車を買う常套手段、自動車ローンが組めないから車の販売量は半減しているのである
新しい住宅や新車は、言ってみれば『不要・不急』のものである
古いものでがまんすれば、買わなくてもいいのである
失業者もこれから増えるからますます販売は不振となる

GMは、本年末にも運転資金にショートが発生する
クライスラーも似たようなものだろう
これで、このエコカー支援融資を本来のエコカー研究開発専用につぎ込むことができるだろうか？
現在申請中の緊急救済融資が可決されなければ、背に腹はかえられなくて、運転資金に流用せざるを得ないだろう
それに、これらの金はギフトではない
あくまで借金である
利子を付けて返済しなければいけない金である
しかも、巨額である
その金は販売利益から捻出しなければいけないが、ビッグ・スリーの車が好調に売れ出すのはいつのことになるだろう？
借金やローンというものは、収入が少なくなるとてきめんにつらくなる
この返済金の重荷は、車の価格にも上積みされて、ビッグ・スリーに大きな重しとしてながくのしかかるだろう

それに、米国はすでに「物作り」をギブアップした国である
生産技術の国では無い
基幹産業とはいえ、自動車業界だけが国際的な生産技術競争に勝ち残れるか？

ビッグ・スリーの将来は限りなく暗い