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2014.04.13

『勝ち続ける』重責に打ち勝った久光製薬　田中夕子氏

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カテゴリ： V 【過去ログ　迫田さおり選手　その2】

田中夕子氏のコラムです
私は、まだ読んでいませんが
とりあえずアップ

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勝ち続ける』重責に打ち勝った久光製薬
連覇目指すチームを引っ張った新鍋理沙
田中夕子2014年4月12日 21:16

重責から解放された中田監督の目に涙

Ｖプレミア女子ファイナルを制した久光製薬（手前）。連覇を目指したチームは『勝ち続ける』重責の中で勝ち抜いての栄冠だった
Ｖプレミア女子ファイナルを制した久光製薬（手前）。連覇を目指したチームは『勝ち続ける』重責の中で勝ち抜いての栄冠だった【坂本清】
　勝利の瞬間、弾けた笑顔が涙に変わる。
　バレーボール女子のＶプレミアリーグ・ファイナル。岡山シーガルズにセットカウント３−１で勝利し、久光製薬スプリングスを連覇に導いた中田久美監督は、フーっと息を吐いた後、両手で顔を覆い、選手たちと抱き合った。
「決勝に向けて、たぶん、私が一番不安でした」

　２週間前のセミファイナル。決勝進出を懸け、捨て身で向かって来た岡山シーガルズにストレート負けを喫した。サーブレシーブからの攻撃が通らず、相手に先行される悪循環を招いたことが、思わぬ完敗につながったのだが、すでに決勝進出を決めていたこともあり、観客席から「やる気あんのか！」と、容赦ないヤジも聞こえた。

　どんな時にも勝ち続けなければならない。
「それがチャンピオンチームの宿命なんだ、と実感しました」

　連覇を達成した直後に指揮官の頬を伝ったのは、ただ、勝利を喜ぶものではない。１シーズン背負い続けた重責から、ようやく解放される。安堵の涙だった。
小さな慢心がチームにズレを生んでいた
優勝を決めた後、中田久美監督の目には光るものがあった
優勝を決めた後、中田久美監督の目には光るものがあった【坂本清】
　１月２５日以来、負けなしの１８連勝。

　圧倒的な強さでレギュラーラウンドを１位で終えたにも関わらず、ウイングスパイカーの新鍋理沙はどこかもどかしそうだった。
「スッキリしないんです。勝っても、モヤモヤするばかり。これでいい、と思うことは１つもない。もっともっと、って。でもそう感じるっていうことは、私も、みんなも、去年や今までよりも上を目指しているからなのかな、と思うんですけど、これでいいのか、すごく不安です」

　天皇杯・皇后杯、Ｖリーグ、黒鷲旗。国内主要タイトルをすべて制した昨シーズンを経て、中田監督は今シーズンの目標に『勝ち続けること』を掲げた。
「難しいですよ。どのチームだって、久光に負けない、絶対勝ってやると思って向かってくるわけですから。でもそれで負けるようじゃダメ。せっかくスタートラインに立ったんだから、ここから勝ち続けるチームにならないと。目標は日本一じゃない。世界で戦うために、日本では絶対に負けないチームになるための挑戦です」

　シーズン当初はセッターの狩野舞子、ウイングスパイカーの野本梨佳といった試合経験の少ない選手たちを積極的にスタメンで起用したが、なかなかチームとしての形が定まらず、連敗を二度喫した。時には負けることもあって当然で、それでもファイナルラウンドへ進出する上位４チームから外れることはない。そんな小さな慢心が蔓延っていたのを、中田監督は見逃さなかった。
「最後に勝てばいい。そんな小さな目標じゃないでしょう。自分たちが目指すバレーをして、レギュラーラウンドも、ファイナルラウンドも勝ち続ける。そういうチームになるんじゃないの？」

　レセプションの返球位置、トスの軌道。スパイカーの助走ルートや、ラリー時の攻撃パターン。昨年、数々のタイトルを制した時には守られていた約束ごとが、気づかぬうちにおろそかになっていた、とウイングスパイカーの石井優希は言う。
「サーブレシーブを返す人によって、タイミングや間が微妙に違っていたから、助走に入るのが遅くなっていたんです。でも攻撃のテンポは速いから、速く飛ばなきゃ、速く打たなきゃと思って無駄に振りかぶって、空中姿勢がすごく窮屈になっていた。連敗して、クミさんにピシっと言われたことで、私だけじゃなく、みんなが小さなズレに気づくきっかけになりました」

チームが苦しいときに支えたのが新鍋理沙（手前、♯3）。チームを引っ張る責任感が生まれた【坂本清】
　誰が出ても勝ち続ける。
　強い『個』が集結した、強い『チーム』になることを目指す。その中心にいたのは、新鍋だった。
「私が打つのは、崩れた時とか苦しい時。サーブレシーブが（崩れずセッターに）返った時は、自分にトスが上がってくることはないと思っています。だから、自分は絶対崩れちゃダメだ、私が崩れたら負ける。今シーズンは特にそう思い続けてきました」

　踏み切り位置を変えて、外から中に打ってみたり、反対に中から外へ開き、スパイクコースを瞬時に変える。得意な攻撃ばかりでなく、クロスに打ったら次はストレートへ打ったり、相手の守備の穴を見つけ、そのコースを的確に狙う。

　ラリー中の攻撃や、二段トス。「何とかしてほしい」という場面で、難なく『何とかしてくれる』存在であり、加えて、守備の面でも、新鍋はチームの中心だった。

　昨シーズン、コートの中の精神的支柱でもあったリベロの座安琴希が、ケガで今季は試合に出場することができず、３年目の筒井さやかがリベロとして１シーズンを戦い抜くこととなった。

　東九州龍谷高校でも１年時から全国優勝に貢献するなど、経験は豊富だが、Ｖリーグでこれほど多くの試合に出場することはなかった。
　まずは拾い、つなげることに精一杯になるのは当たり前。「コトキさんだったら、といつも比べてしまったし、連敗した時はどうしていいか分からなくなってしまった」と言うほど、追い込まれていた。
チームの戦いはアジアクラブ選手権へ
連覇を達成した久光製薬の次の目標は、アジアでも勝ち続けることだ！
連覇を達成した久光製薬の次の目標は、アジアでも勝ち続けることだ！【坂本清】
　不安を抱えていたのは筒井だけでない。中田監督から、ディフェンス面で石井や筒井をカバーすることを責務とされた新鍋も同様だった。
「コトキさんがコートにいないのは、すごく大きくて、苦しかった。今までどれだけ引っ張ってもらっていたのか、甘えていたのか思い知らされました」

　自分のプレーができればＯＫではなく、周囲に目を配り、声をかける。リーダーシップを発揮することは苦手だが、その分はプレーで見せることを意識した。たとえ攻撃が決まらなくても、ボールを追い、次へつなげるのも自分の役目。
「“責任”と言えるかは分からないですけど、少しずつ、自分のことだけじゃなく、チームのことを考えられるようになりました」

　もがき続けながらも壁を越え、新たな境地へ。
「もっともっと、上を目指したいです」

　逞しさが増したエースと、チームの戦いは世界へと続いて行く。苦しんで勝ち取った連覇という栄誉を携え、最強軍団は、１７日にタイで開幕するアジアクラブ選手権大会へ日本代表として出場する。

　目標は１つ。アジアでも、勝ち続けるだけだ。

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