ベトナムでのサイゴン日記
復刻シリーズを続けている
これが私のブログ記事では
一番、希少価値のあるものかも知れない
【復刻日記】
「おれとヘロインの間にさあ、何かがあってもいいような気がしたんだ」
村上 龍著 『限りなく透明に近いブルー』
私のリンク先、FLURさんの6日の日記のタイトルだ。
『限りなく透明に近いブルー』は私も読んだはずなのだけれど、あまり印象に残らなかった。
そうか、ヘロインなどについても語っていたのか?
ヘロインには縁がない私だが、大昔、海外で、「ひょっとしたらあれは麻薬の一種だったのではないか?」と思う様な経験はした。
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私は入社早々、当時、ヴィエトナム戦争の戦火の中の南ヴィエトナムの首都サイゴン(今のホー・チ・ミン)に赴任した。
赴任してしばらくして、サイゴンの繁華街に飲みに行くようになった。
飲みに行く・・・と書くと簡単だが、実際はかなりの危険をかいくぐる事になる。
まず、宿舎の前で乗り物を拾う。
乗り物としてのシクロ(自転車の前に座席をつけた人力車)には長距離は無理。
まあ、長距離も行けないことは無いだろうけれど、針金のように痩せているシクロの運転手を見ると不憫で長距離は頼めなくなる。
シクロマイ(バイクの前に座席をつけたような乗り物)。
これはけたたましい爆音をたてて爆走するので、暑いサイゴンの夜には快適な乗り物。
タクシー。
これはなぜか、みな決まって超小型ルノー4CV。
フォルクスワーゲン・ビートルと似た小型車。
それもそのはず、この4CVは、ドイツの国民車、フォルクスワーゲンを設計したあのポルシェ博士が、第二次大戦終了後、戦犯としてフランスに抑留されている間に設計した名車。
日本でも日野がライセンス生産して、タクシーなどに活躍した。
でもそれがすでに年代物になっていてボロボロ。
床に大きな穴が開いていて、地面が見えている車もある。
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ま、とにかくこのシクロマイか、ルノー・タクシーに乗ってサイゴンの、ピチピチ・ミニスカート・愛嬌度最大のサイゴン・ガールの待つ繁華街に向かうのだが、途中が危険一杯なのだ。
治安が悪いわけではない。
何しろ街中に兵隊・憲兵・警官が溢れているから犯罪者もそうそう自由に歩き回れない。
しかしその兵隊・憲兵・警官が随所に検問所を作っていて、これが「怖い」場所なのだ。
アト・ランダムに通行者を留めて、「怪しい者」をチェックする。
私たち外国人だとIDとしてはパスポートを見せる事になる。
ビザはちゃんとしているし、何も不備はないはずなのだが、彼らは決まって文句をつける。
ヴィトナム語を少し話す私も、彼等の「ニャオニャオ」と聞こえるヴィエトナム語は、よく聴き取れない。
ま、彼等も私たちに聴き取れるように話しているわけでは無くて、要はお金が欲しいのだ。
小遣い稼ぎなのだ。
それはこちらもわかっているから、パスポートを見せる時に、パスポートに紙幣をはさんで手渡す。
目の前で堂々とはさむのだ。
それをじっと見ている彼らは「ニャオニャオ」言うのを止めて、パスポートを誠実にながめて紙幣をスッと引き抜くと「行け!」とアゴをしゃくる。
このように私は海外ながら贈賄の罪を数え切れないほど犯してきた罪人である。 (威張る事もないか?)
この検問所の前を通過する時にチェック対象にされると「ピ~~ッ !!!」と、笛を吹かれる。
運転手がパッと車を止めると、彼らが車に寄って来て、われわれの寄付行為をせっつく。
普段はこれでいいのだが、中には自分の車が笛を吹かれていると言う事に気がつかない運転手がいる。
結果的に検問拒否 → 逃走 と見られてもしょうがない。
「ピ~~ッ !!!」「ピ~~ッ !!!」と激しく連呼?されてもまだ他の車だと思っているバカ運転手がいる。たまにいる。
そうなると兵隊・憲兵・警官のピストルや自動ライフルが火を噴く。
まあ、警告ではあるのだが、なにしろサイゴンの街は、戦場でもあるのだから、いつ本気に撃って来るとも限らない。
少なくとも停車しなければ、撃たれるだろう。
乗客の私は必死に運転手の方を揺すって「止めろ!止めろ!止めろ!」と連呼しながら、弾丸を避けてかがみ込む。
実際に弾丸は私の肉体にめり込まなかったので、今こうして書いているのだが、こんな検問所が一・二カ所はあるのだ。
兵隊検問所を通過しても、次は憲兵検問所、更に次は警官。
こういう経験を通じて、今の冷静沈着でワイロ体質の私がいる。
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話がまた回り道だが。
ようするにそーゆー危険をくぐり抜けて、美女ぞろいのサイゴン・バーで歓楽の限りを尽くして(おおげさか?)、帰路につくことになる。
障害物競走のような検問所をくぐり抜けて宿舎でタクシーを降りる。 男の酒の後は、ラーメンと決まっている。
サイゴンにも街にはソバ屋があって美味しいソバがたべられるのだが、宿舎は住宅地だからソバ屋は無い。
しかし、「屋台」という強い味方があるのだ。
宿舎の近くの路地で夜泣きソバが屋台を出す。
そこで私はアルコールの酔いをさましながら、米からできたフォーというヴィエトナムうどんをすする。
だいたいは肉うどんだ。
トッピングとして、香草が必ずひとつかみ入っている。
毎晩通っているとなじみの客と話す機会もある。
私はその当時つたないヴィエトナム語を少し話したから(語彙は少ないが発音は正確・・・に近いと言う私の特技)、会話もなりたったのだが。
一番仲がよくなったのはあるお爺さんだ。 この人は、私とちがって、酒を飲んでいる様子もないのにソバを毎晩食べに来る。
「美人で若い女の子、いるでしょう? 紹介してよ」
ある晩、私の一番得意な会話に入っていった。
「うん、その内にな・・・」
お爺さんの確約をとりつけて私はうれしかった。
次回からは会う度に「いつ?いつ紹介してくれるの?」
そう迫り続ける私に、そのお爺さんは、ついにこう言い出した。
「そんなに美人と会いたければ、私の家に来い」
「行く 行く」
私はしっぽを振りながらお爺さんの後について行った。
まもなく一軒家に着いた。
暗闇の中ではあるが、なかなか大きな家と見えた。
豪邸とまでは行かないが、お爺さん、資産家だね。
部屋に通されたら、お爺さんと同年配のお爺さんが(ややこしいかな?)、二・三人テレビを見ている。 挨拶をしてテレビを一緒に見た。
ただ、どうも若い美女がいるという雰囲気ではない。
これでは老人倶楽部ではないか?
「お爺さん、約束の美女は?」
こう切りだそうと思った私の心を見透かしたように、屋台ソバ友人のお爺さんが手招きをする。
黒いビロードで囲まれた小部屋に案内された。
これは立派に妖しい雰囲気といえる。
清純な美少女と言うより、妖麗な女王系の肉体派が登場しそうだ。
(肉体派、好きです)
(清純な美少女を食前酒に、妖麗女王肉体派をメインというのもいいな~)
(スケスケの黒のレースのドレスなんかで、美脚が足の付け根まで見えて・・・。)
(いかんな、私は想像力がありすぎる)
そういうふうにウキウキしている私の目の前にお爺さんテレビ同好会の連中が入って来た。
おいおい、せっかく妖麗肉体派女王(形容詞の順番がちがっているかな?)が出てくるのにお爺さんの目の前では、することもできないではないか!!!
激怒?する私の前に、アルコールランプと木の枕と象牙の大きなパイプが配られて。
なにやらアスファルトの様な小さな黒いかたまりを針の先に刺して、アルコールランプであぶり出した。
その溶けたものをパイプの先につけて吸って見せてくれる。
「うまいのかい?」
うまいと保証してくれる。
木の枕に頭を載せて寝そべって象牙のパイプを吹かす。
味はなんだかチョコレートのようなものだった。
「爺さんテレビ視聴・喫煙同好会(笑)を去る時に、お爺さんが「今晩は眠れないかも 吐く事もあるかも」と言う。
しかし、その夜はぐっすり眠れたし吐き気もなかった。
あのお爺さんには数度自宅に招待を受けて、喫煙のおつきあいもした。
妖麗美女はやはり出てこなかった。
妖麗肉体派美女のお肌の代わりに、象牙のパイプをなでるだけだった。
いまいましい。
考えてみるとあれは阿片(オピオム)だったかもしれない。
でも習慣にはならなかった。
ならなかったから、いまの生真面目な私があるわけだが。
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中東のサウジアラビアで、水煙草を吸った。
あの長いホースのついたやつだ。
屋外にカフェテリアのような水煙草喫煙屋があって、料金を払うと水パイプを貸してくれるのだ。
やはりチョコレートのような味がする。
一回でかなり長期間吸う事ができる。
吸い終わって宿舎に帰ろうとすると、ちょっとフラフラする。
しばらくは食欲が無くなる。
一度、この店で店員が水パイプの本体部分(アラジンのランプみたいな形だが)を開いて、煙草の素?を入れている所を見つけた。
インド産と書いてある小さな缶詰の中から、いつかどこかで見たようなコールタール上のものを取りだしてパイプに詰めている。
それをカメラで撮影しようとしたら店員が大あわてで制止した。
ひょっとして、あれも阿片なのかな?
アラブでは一般の男性はみな吸っていたけれど。
それが彼らの楽しみで,水タバコ屋は社交の場でもあったけれど。
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