文明を構築した人間が他の動物と比較して優れていると思うのは幻想にすぎない。彼らは「いま、ここを生きて」いるのである。だから生存の苦しみはあっても数々の苦悩がない。僕たちは夢ばかり見ているから”One of them”であることを嫌い成功を願う。成功を求め周囲に認められようとして他人の価値観に引きずられ、自分の生きる道を見失う。自分で勝手にハードルを高くして失望し他人を恨む。動物たちはそのようなことにはお構いなしに自らの運命を成就して死ぬ。野生動物の一生はすべて身の丈に合ったものだ。けがや病気をして死ぬのは人間も同じだし、どんな偉人でも歴史の流れが変わっていく中で忘れられていく。なおかつ動物たちは持続可能な生き方をしている。動物のように生きるべきとまでは言わないが、結果論として僕たちが長い歴史の間に、彼らとは比較にならないほど多くの問題を抱え込んでしまったことは事実だ。問題を一つ解決すると、別の問題が生じてしまう。抽象的な表現になるが、結局すべてはプラマイゼロになるようにできている気がする。