アルタクセルクセスの王宮址遺跡

アルタクセルクセスの王宮址遺跡

2004年02月20日
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カテゴリ: 旅行
(2月22日記)
 この日はM氏の車で、僕を含めた4人でライン河方面に旅行に出た。M氏の車は一見普通のセダンのアウディで、アウトバーンで飛ばせば250kmは出る。もっとも、今回の旅行では田舎道を走ることが多かったが。
 この日は寒かったが比較的好天に恵まれた。

 マールブルクを出て、まず去年の1月に行ったことのあるラーン川(ライン河の支流)下流の渓谷地帯を目指す。なんとなく雰囲気が日本の信州っぽくて気に入っている地域である。これで温泉があれば最高だな、とか言っていたので、今回は温泉にも入ることにした。
 まず昨年泊まった事のあるBulduinsteinという村を目指す。ここには廃墟になった中世の城がある。ドイツの城は石造なので、こういう廃墟になった城はあちこちにある。城といっても塔が1つあってそれを一重の城壁で囲んだだけの簡単なものが多い。
(僕の住むマールブルクの旧市街のてっぺんにそびえる城も13世紀頃まではこういう実用一辺倒の城だったのだが、のちに宮殿として手が加えられ姿を大きく変え、また遺跡にならずによく残っている)

 とりあえずラーン川沿いにナッサウNassauに向かう。ドイツが1871年に統一される以前は、ラーン川下流地域はかつてこのナッサウ公国の支配下にあった。ナッサウ公国はドイツの諸侯の中では小さいほうだが(19世紀にプロイセンに併合された)、有力諸侯の選挙で選ばれていたドイツ皇帝を出したこともある。
 そのナッサウには町外れの山の上に城がある。ナッサウ公の居城だから立派な城だろうと思っていたが、行ってみると遺跡にこそなっていないが、意外に小城だった。それともナッサウ公は普段は違うところに住んでいたのだろうか。

 温泉に入りたいなあということで、かつてヨーロッパ貴族の温泉保養地として栄えていたバード・エムスBad Emsという町に向かう。「バード」という地名に表わされているように、ここには温泉がある。「温泉」といっても日本のようなお湯ではなく、ぬるま湯か水のようなものなのだが。現在の人口は1万人ちょっとである。初代統一ドイツ皇帝であるヴィルヘルム1世も毎年夏はここに保養に来ており、普仏戦争(1870年)のきっかけになった宰相ビスマルクの謀略である「エムス電報事件」も、ここが舞台になっている。
 さてエムスに着いてみると、盛名の割にしょぼい町だった。なるほど19世紀末の優雅な建物は町の一部に立ち並んでいる。しかしその地区を抜けるとドイツのほかの田舎町と変わらない。駅は人気(ひとけ)が全くない無人駅である。そして、なぜだかドイツ人ではない顔つきの人が多くたむろしている。
 実はこのエムスはどういうわけだかロシア貴族に人気の保養地で、葱坊主のようなロシア正教の教会があるのは、その名残りである。そして僕らが見かけた怪しげな人々も、どうやらロシアからの保養客のようだった。
 肝心の温泉は昼休みで入れなかった。

 温泉のほうはヴィーズバーデンで入ろうということになり、とりあえずワイン産地として有名なラインガウに向かう。この地域は見渡す限りのブドウ畑で、あちこちに醸造所がある。車を出してくれたM氏はワインに詳しいというかプロなので、ライン河沿いにあるエルトヴィレEltvilleという村にある彼のお勧めの醸造所の1つに行く。こうした醸造所では訪問客に試飲をさせてくれるし、直接ワインを売ってくれる。
 ドイツの小売店や日本で買うとおそろしく高くなるワインが、こういうところでは試飲して自分の好みのものをリーズナブルな値段で買えるらしい。日本のワイン輸入業者の中には、こういうところの一番安いものを輸入して、ラベル(銘柄)が同じだというのでその最高級品の値段をつけて売ったりする者もいるようだ。
 様々なワインを試飲させてもらう。中には一瓶(750ml)120ユーロ(一万五千円)もするようなワインもあるのだが(アイスヴァインという遅摘みブドウで作った濃厚・芳醇な極甘ワイン)、惜しげも無く試飲させてくれる(試飲なのでタダである)。普通は味だけ確かめて口から出すらしいのだが、もったいないので出されたワインやブランデーを全部飲んでしまったら、真っ赤になってすっかりいい気分になってしまった。
 こういうワイン醸造所の人は皆すごく真面目そうな顔をしているし、人当たりがものすごく良い。そういう人を選んで接客させているのか、ワイン職人にはそういう人が多いのか。もっとも、醸造所は玉石混交で、さらに自然のものだから年により出来の良し悪しがあったりもするらしい。「ラインガウ」という地名や醸造所のブランドだけで選べばよいものではないらしい。なかなか奥が深そうである。僕はビールのほうが好きだが。

 ほろ酔い加減で、次は温泉のあるヴィーズバーデンWiesbadenに向かう。人口26万人、ヘッセン州の州都でもあるこのライン河畔の町は、やはり「バーデン」という語尾が示すように温泉の町である。保養の町だけに、お金持ちの邸宅が郊外に並んでいる。
 僕らの目的地はカイザー・フリードリッヒ温泉というローマ式の温泉である。1913年に建てられたものだそうだ。入浴料は17.5ユーロ(約2000円)と、銭湯に入るような気軽さではとても行けない。この金額で4時間まで入浴できる。建物の内装はローマ時代をイメージしており華麗で重厚である。
 さてここで難事が持ちあがった。僕らは水着で入ろうと思ったのだが、ここはどうもすっぽんぽんで入るところらしい。しかも金曜は男女混浴の日である(曜日によっては性別制限をする)。フリチ○のおじさんとかが脱衣所に既に居た。
 しかも脱衣所から浴室までの間にはカクテル・バーのようなものがあり、さすがにそこを素っ裸で歩いている人はおらず、腰に長いタオルを巻いたり、バスローブのようなものを着て行き来している。僕はあいにく短いタオルしか持ってきておらず、そこをフリチ○で歩くのは気が引けたので、そこは水着を着て押し通った。
 浴室には数種類のサウナ(ローマ式、フィンランド式、アイルランド式)と大きな浴槽、そしてくつろぐための長いすなどが置いてある。サウナに入って汗を流し、お湯か水に浸かり、湯疲れしたら長椅子に寝そべってくつろぐ、ということの繰り返しである。古代のローマ時代の浴場もこんな感じだったのか、と感慨ひとしおである。
 ここでは男女問わずみんな完全にすっぽんぽんである。すっぽんぽんの男女が談笑している。最初は非常に気が引けたが、仕方なくタオルで前をさりげなく隠しながら素っ裸になった。客は裕福そうな中年男女がほとんどで、時々20代前半くらいの若い人も混じっている。トルコ人ぽい人はいたが、東洋人は僕らだけだった。
 若い女性の裸とかを目の前に見せられると困ってしまう、と事前に予想していたが、ああも堂々と裸になられると全然気にならなくなるから不思議である。というかむしろ「見られているのでは」という恥ずかしさのほうが先にたって、他人の裸はどうでもよくなる。
 風呂自体はまあまあでしたかね。僕は日本式のお湯に浸かりたかったので、ここの浴槽は水温も高くちょうど良かった(ちなみに、日本のお風呂でお湯に浸かるようになったのは江戸時代以降だと聞いたことがある。それ以前は蒸し風呂が主流だった)。料金が高いのでしょっちゅう来る訳にはいかないが、日本の温泉が恋しくなったり、身体を温めるにはいいかもしれない。次に来る日は曜日を選ぶか、バスローブもしくは長いタオルを忘れないようにしたい。

 この日はライン河沿いの村にあるホテルに投宿する。開業して数年の家族経営の田舎風のホテル兼ワイン醸造所だが、いかにも接客業が好きそうなお父さん母さんが経営しているだけに、あちこちに熱意が感じられるいいホテルだった。





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最終更新日  2004年08月05日 00時12分39秒
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