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2017.03.12
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カテゴリ: 探訪 [再録]

                                     [探訪時期:2014年4月]
前回、 蝉丸神社 と記しています。しかし、正確に言えば 「関蝉丸神社・下社」の探訪ご紹介 ということになります。
単に「蝉丸神社」だと実は場所を特定できないのです 。というのは、3ヵ所の境内が想起されるからだそうです。 (資料1,2)
関蝉丸神社(下社) 今回探訪で訪れ、ここにご紹介する神社です。
   西近江路(国道161号線)沿いに位置し、逢坂山の麓になります。
   京阪電車京津線上栄町下車で、京都方面に徒歩10分のところです。
関蝉丸神社(上社)
   国道1号線沿いに位置し、逢坂山の山上になります。
   この上社・下社を合わせて「関蝉丸神社」一社とされています。
   祭神は上社が猿田彦命、下社が豊玉姫命で、配祭神が上下社蝉丸霊なのです。
蝉丸神社
   大谷町に所在します。京阪電車京津線の大谷駅が最寄り駅です。
   祭神は蝉丸大神猿田彦命です。
   こちらは関蝉丸神社の分社になるようです。蝉丸大神が主体に転換するのです。
神社の位置はこちらの地図(Mapion)をご覧ください。

私はかつてウォーキングの例会その他で数回、大谷町の蝉丸神社を訪れたことがあり、関蝉丸神社があるということを知りませんでした。今回の探訪で認識を新たにした次第です。

それでは、関蝉丸神社(下社)をご紹介致しましょう。

西近江路沿いに神社の所在を示すこの石標が建てられています。

石標の傍に遮断機があります。石鳥居のすぐ前を西近江路と平行する形で 京阪電車京津線 の線路が横切っているのです。ちょっとビックリの神社へのアプローチです。

 踏切を渡り、境内で最初に目に止まった歌碑です。

 これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関  蝉丸

「百人一首」の10番目の歌。誰もが一度は見聞した和歌ではないかと思います。
『後撰集』(雑1、1090)に所載される歌で、詞書として「逢坂の関に庵室を作りて住みはべりけるに、行きかふ人を見て」とあります。これが後世の蝉丸伝説の原点となっていると言います。

 研究者による百人一首の解説書諸本を見ますと、いずれも 蝉丸の生没年ならびに経歴は未詳 とされ、9世紀後半頃、あるいは10世紀の人かと記しています。「『今昔物語』によれば、宇多天皇の皇子敦実親王の雑色(雑役に服した無位の職)といい、『平家物語』および中世以降の語り物では、醍醐天皇の第四皇子としているが、いずれも確かでない」としています。 (資料3)

白州正子氏は『今昔物語』の雑色としての蝉丸について、おもしろい解釈をしています。
「敦実親王の雑色(下男)で、賤しい身分にも拘わらず、親王から琵琶の秘曲を授けられていた。そこへ源博雅が教えを乞いに行くという美談になっている。敦実親王は、近江に君臨した宇多源氏、佐々木一族の祖であったから、近江の住人は蝉丸に親しみを持ち、湖水と縁のある楽器の名手を誇りにもしたであろう」と。 (資料4)


前面に神楽殿があり、その奥に本殿が見えます。
 神楽殿には彩色された狛犬が置かれています。
神楽殿の屋根の内側。額の上にある鳥の彫刻が目にとまりました。


本殿前の唐破風屋根の傷みにわびしさを感じます。 本殿 自体はしっかりした建物です。
弘仁13年(822)小野岑守が逢坂山越えの守護として山上・山下二社を創祀したとされています。 (資料4)
「古くより国堺神・坂神・手向の神(道祖神)又逢坂越の関の守護神として」祀られてきたものが、時代を経て、「関明神」として崇敬され、それが「後撰集の歌人で琵琶の名手である蝉丸だとする信仰」に結びついていったようです。「蝉丸が当社に合祀されたのは天慶九年とも平安時代末とも云われ詳でない。けれども蝉丸伝承は時代と共にたかまり、次第に歌舞音曲その他諸芸にかかわる人々の信仰があつくなって、江戸時代には諸国の説教者(雑芸人)を統轄し、免許をうける人々が全国的規模で増加した」という展開となるのです。 (資料1)

唐破風屋根の鬼板と蟇股。この蟇股の彫刻に関心をそそられます。3人に囲まれた中央の葛籠の中身は何なのでしょう?

本殿の左側に小祠、句碑、石燈篭があります。
この探訪でのもう一つの着目点がこの石灯籠でした。







「時雨燈篭」 の名称で知られており、 鎌倉時代の建立 と考えられる特色をもっているとされています。石燈篭の変遷を知るうえで貴重な燈篭だとか。

火袋は正面に四角の開口部(火口)がありますが、背面は小さな丸窓が穿たれているだけの形です。
六角形の火袋の左右二面ずつは簡素なもので、上部に連子が彫刻されているだけです。
「基礎や中台の単弁の蓮弁、竿中央の蓮華と珠文帯が地域的特徴となる」そうです。 (資料5)


本殿の近くにこの駒札が建てられています。
今昔物語を出典として 世阿弥が謡曲「蝉丸」を創作し、能を通じても一層「蝉丸伝説」が世の中に親炙して行った のです。


境内の一隅に「真葛」が植えられています。




石造鳥居をくぐり神楽殿を見たとき、右手斜め前にこの 「せきの志みず」(関の清水) がありますが、今は涸れています。
この「関の清水」について、「これは後に作られたもので、本物は清水町の人家の中にあったという」説があります。 (資料4)
また、この傍にも歌碑があります。

  逢坂の関の清水に影みえて今やひくらん望月の駒    紀 貫之 

かつては、八月十五夜の日には、信州の牧場から来た馬を、この逢坂山の地で朝廷に引き渡す行事があったそうです。満月にちなんで「望月の駒」と詠んだのでしょう。

この 「逢坂駒込」 の図が、『近江名所図会』に描かれています。引用してご紹介します。 (資料6)
                                                                                 見開きの2ページで描かれています。
謡曲「蝉丸」には、この貫之の歌がそのまま組み入れられています。


石造鳥居の右手には手水舎がありますが、訪れる人が少ない雰囲気をここにも感じます。

境内社として、 貴舩神社 が祀られています。

境内で小祠を眺めていますが、祭神などの確認はできませんでした。調べて見ると、境内社として、 中臣稲荷神社 大神宮神 関清水神社 天満宮 が祀られているのです。 (資料1)


事後に知ったことは、 本殿の裏に細い山道があり、その入口に「小野小町塚」があるそうです。 今度機会があれば再訪し、その塚を拝見したいと思っています。

江戸時代の『近江名所図会』から再び引用させていただきます。3枚の絵が載っています。 (資料6)

一つは、関寺長安寺の本堂と関清水蝉丸宮の絵です。 


          そして、蝉丸について本文で説明すると共に、 蝉丸 を描いています。


さらに、関蝉丸大明神として蝉丸宮を載せています。

    この後、安養寺に向かいます。


つづく

参照資料
1) 関蝉丸神社  :「滋賀県神社庁」 
蝉丸神社   :「滋賀県神社庁」 
2) 関蝉丸神社  :「滋賀県観光情報」 
3) 『百人一首の世界』 久保田正文著・文春文庫 p36-37
4) 『近江山河抄』 白州正子著 講談社文芸文庫 「逢坂越」p23,p30
5) 「近江の歴史散策33~大津を歩く~」龍谷大学RECコミュニティ・カレッジ
   2014.4.12 (龍谷大学非常勤講師 松波宏隆氏作成レジュメ)
6) 近江名所図会 巻一の江州志賀郡 :「DIGITALISIERTE SAMMUNGEN」
逢坂駒込の絵 左ページ
逢坂駒込の絵 右ページ
長安寺と蝉丸宮
蝉丸
関大明神蝉丸宮

【 付記 】 
「遊心六中記」としてブログを開設した「イオ ブログ(eo blog)」の閉鎖告知を受けました。探訪記録を中心に折々に作成当時の内容でこちらに再録していきたいと思います。ある日、ある場所を訪れたときの記録です。私の記憶の引き出しを兼ねてのご紹介です。少しはお役に立つかも・・・・・。ご関心があれば、ご一読いただけるとうれしいです。

補遺
関蝉丸神社上社   :「神社ふり~く」
演目事典 蝉丸 :「the能.com」
蝉丸  :「のうのう便りバックナンバー」

      ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


探訪 [再録] 滋賀・大津を歩く その1 大津点描(山吹地蔵・車石・琵琶湖風景・明智佐馬之助)へ
探訪 [再録] 滋賀・大津を歩く その2 -1 天孫神社、大津事件跡、大津城跡、九品寺、大津宿本陣跡 へ
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Last updated  2017.03.12 15:39:51
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