この「アイル・ビー・オーヴァー・ユー(I’ll Be Over You)」は、1986年発表のTOTOのアルバム『ファーレンハイト(Fahrenheit)』に収められた曲。同年にシングルカットされた。特大ヒットというわけではなかったものの、全米チャートでは 11位(アダルト・コンテンポラリーのチャートでは1位獲得)という結果を残した。同アルバムの前作にあたる『アイソレーション』では途中でボーカリストが交代するという変化がバンドにはあった。新ボーカリストはファーギー(本名:デニス・ハーディ)・フレデリクセンに代わるが、この人物の在籍もこの1作だけに終わり、結局、バンドはジョセフ・ウィリアムスという、さらに新たなボーカリストを迎え入れて上記『ファーレンハイト』の制作に臨むこととなっていた。
この「アイル・ビー・オーヴァー・ユー」は、スティーヴ・ルカサーが外部ライターのランディ・グッドラム(同時期のバラード系では、シカゴの「フェイスフルIf She Would Have Been Faithful」の作者としても知られる)と共作。ルカサーの言によると、どうやら“2~3分で”あっという間に書き上げたらしい。だからといって、即興のお手軽バラードかというと、まったくそんな感じがしない。それどころか、「アフリカ」で成功した、ある種淡々としたトーン、そして、「ロザーナ」で見られた、ギターを絡めた曲展開の妙がここでも発揮されている。少しきれいでコンパクトにまとまり過ぎている気もしないではないが、ここまでの3回の記事で取り上げた各曲(「99」、「ロザーナ」、「アフリカ」)に比することのできるTOTOのバラード代表曲の一つと言っていいように思う。